グループウェア環境の切り替えでクラウド移行を実現

長崎県雲仙市は島原半島の北部から西部にかけて広がる市だ。北は有明海、西は東シナ海へとつながる橘湾に面し、東部には雲仙岳がそびえる。その美しい海岸線と、雲仙・普賢岳、大地から高温の湯と噴気が休みなく噴き出す観光名所・雲仙地獄といった雄大な自然に恵まれ、日本最初の国立公園である雲仙天草国立公園にも指定されている。

市の産業は、豊かな自然を活かした農水産業と観光業が中心である。ジャガイモやイチゴといった農産物、カキやブリなどの水産物は、県内外で高い評価を受けている。

また温泉地としても知られ、雲仙地獄から湧き出す硫黄泉の雲仙温泉、海沿いに広がる無色透明の塩化物泉・小浜温泉と、泉質の異なる温泉を楽しむことができ、山と海の双方で温泉を楽しめる夢のような土地だ。

  • 雲仙市の写真

雲仙市では、従来利用していたグループウェアが2025年度でサポート終了を迎えることから、新たな基盤への更新が必要となっていた。ITシステムやネットワーク全般を担う総務部 行革推進課 行革推進班の朝永健司氏は、当時の状況について次のように語る。

「これを機に、グループウェアをクラウドで構築することを検討しました。クラウド化によって、災害時や非常時にも庁舎に出向くことなく自宅から業務を行える環境を整備できるほか、職員の業務効率化にもつながると考えたためです」(朝永氏)

クラウド移行を前提に検討を進め、複数の製品を比較した結果、最終的にGoogle Workspaceの導入が決定した。同じ行革推進班の森﨑信悟氏は「Google Workspaceであれば、自治体業務で利用するさまざまなツールを集約・最適化できるほか、将来的な拡張性にも期待できます。また、AIを活用しやすい点も魅力でした。さらに、コスト面でも他製品と比較して優位性がありました」とその理由を説明する。

なお、旧グループウェアについては、行政実務に即した堅牢な設計がなされていた反面、標準のメール保存容量に限りがあり、容量を拡張するには追加コストが発生する点が運用の課題となっていた。

「メールボックスの容量上限に達して送信できないケースが頻発し、その都度不要なメールを削除する必要がありました。こうした非効率な作業は職員の大きな負担となっていました。その点、Google Workspaceでは追加コストなしに大容量ストレージを利用できるため、こうした課題の解消にもつながると期待しました」(森﨑氏)

α’ダッシュモデル採用でLGWAN接続系に先駆的導入

Google Workspaceと併せて、サテライトオフィスのアドオンツールも導入した。この経緯について、森﨑氏は次のように説明する。

「Google Workspaceには十分な機能が備わっていますが、旧グループウェアでは実現できていた一部機能が、標準機能だけでは対応が難しい点がありました。そこでサテライトオフィスに相談したところ、アドオンツールである『掲示板/回覧板』(以下、掲示板)と『組織&グループカレンダー』(以下、組織カレンダー)を紹介されました。いずれも求めていた機能に合致していたため、導入を決定しました」(森﨑氏)

  • 雲仙市 総務部 行革推進課 行革推進班 主査 森﨑信悟氏

    雲仙市 総務部 行革推進課 行革推進班 主査 森﨑信悟氏

同市では、庁内連絡などを掲示板で行う文化が定着していたことから、掲示板機能は不可欠だった。そのため、まず掲示板アドオンの導入を決定。加えて、Google Workspaceにもカレンダー機能は備わっているものの、旧グループウェアと近い操作感で利用したいというニーズがあった。このため、組織メンバーやリソースの予定を一覧表示でき、会議室や公用車の予約機能も備えた「組織&グループカレンダー」が適していると判断された。

Google Workspaceおよびサテライトオフィスのアドオン導入は、2025年7月に決定した。

地方自治体のネットワークは、セキュリティ確保の観点から「三層分離」が広く採用されている。これは、庁内で完結するマイナンバー利用事務系、自治体間の行政専用ネットワークに接続するLGWAN接続系、インターネットを介して外部と接続するインターネット接続系の3層から構成されるものだ。一方で、この構成ではクラウドなど外部サービスの活用に制約が生じるという課題もある。

こうしたなか、LGWAN接続系からローカルブレイクアウトによりクラウドへ接続可能とする「α’(アルファダッシュ)モデル」が注目されている。雲仙市では、このα’ダッシュモデルを採用したLGWAN系に接続する形で、Google Workspaceを導入した。

度重なる説明機会を設けてスムーズな本格運用へ

本格運用が始まったのは、年明けの2026年3月。導入決定から約8カ月という限られた期間の中で、行政手続きや事業者への見積もり依頼などの導入準備に加え、実際に利用する職員への説明も並行して進める必要があった。とくに契約手続きには約5カ月を要し、スケジュールは非常にタイトだったという。

導入自体は、まず庁内でα’ダッシュモデルへの切り替えを行ったうえで進められた。「大きなトラブルもなく導入できました」と朝永氏は振り返る。一方で、ローカルブレイクアウトの設定では、当初、通信条件を厳格に設定した影響で一部機能が制限される課題が発生。その後、個別に検証と調整を重ねながら、最適な設定を模索していった。

「むしろ苦労したのは庁内への説明でした。なぜGoogle Workspaceを採用するのか、まずは庁内のコンセンサス形成に時間を要しました」(朝永氏)

  • 雲仙市 総務部 行革推進課 行革推進班 参事補 朝永健司氏

    雲仙市 総務部 行革推進課 行革推進班 参事補 朝永健司氏

選定理由についてはこれまでに挙げたポイントを丁寧に説明し、理解を醸成。そのうえで次の課題となったのが、実際に利用する職員への周知・教育である。

「旧グループウェアに慣れている職員も多く、『できれば変えないでほしい』という声もありました。そこで、利便性の向上やメール容量の制約解消、オンラインストレージやAIの活用といったメリットを、複数回にわたって説明しました」(森﨑氏)

具体的には、2月に庁内全体向けの説明会を本庁舎および支所で計4回開催。現地参加が難しい職員向けにオンライン参加の仕組みを用意し、後日視聴できるよう動画も共有した。さらに3月には、本庁および6つの支所で個別説明会を実施し、合計で約300件の相談が寄せられた。

並行して行革推進班では、Google Workspaceで実現できる業務の洗い出しや、人事異動に伴うアカウント管理の検証、旧グループウェアからのメール移行時に発生したトラブル対応など、多岐にわたる作業を推進。その過程では、サテライトオフィスから設定やアドオン活用に関するきめ細かな支援が提供され、大きな助けとなったという。

こうした取り組みを経て、2026年3月、Google Workspaceの本格運用がスタートした。

日々の業務に深く浸透し、生成AI活用もスピーディに広がる

現在、Google Workspaceおよび各種アドオンは、雲仙市役所の日常業務を支える基盤として定着している。

「朝、出勤すると、まずGoogle サイトで構築した職員向けポータルサイトを開きます。基本的に、すべての業務はここから開始する運用にしています。ポータルにはアドオンの掲示板が表示され、連絡事項や未読情報を確認します。会議室や公用車の予約も、ポータル内の組織カレンダーのリンクから行います。Chatの利用も定着してきました。メールについても、Gmailで容量を気にすることなくスムーズに利用できるため、業務時間の削減につながっています」(朝永氏)

導入後、最大の変化は生成AIだと森﨑氏が言う。

「Geminiは業務効率化を力強く後押ししています。例えば掲示板に載せる文章。以前は職員がすべて自分で考えたわけですが、いまは『こういう内容を掲示板に載せたいので、文章を作って』とGeminiに依頼すると、たたき台を作ってくれて、あとは簡単に手直しするだけで投稿できます。従来は文章を書くだけで10分20分かかっていたものが、5分程度でチェックまで終わり投稿できるようになりました。メールや広報資料についても掲示板と同様に文章をGeminiが考えてくれますし、NotebookLMに規則や市役所独自のマニュアルを読み込ませて作ったチャットボットのおかげで、検索や資料探しが格段に楽になりました。ほかにも、規則との整合性チェックや企画のアイデア出しなど多彩に使われています」(森﨑氏)

効果が大きいのが、国や県から毎日のように届く文書の要約だと朝永氏。「とくに国からの文書は、法律名や注意事項が細かく記され、届くとまずは読み解く作業が必要です。その作業に30分以上かかり、さらに文書が求めている対応を考えるのにも時間がかかっていました。いまはNotebookLMに渡して『雲仙市としては何をすればいいですか?』と問いかけるとわかりやすくまとめてくれるので、本当に助かっています」と、Gemini及びNotebookLMの有用性を強調する。職員からの反応も、とりわけ生成AIについては評価が高いとのことだ。

  • おふたりの写真

職員のリクエストを反映して新たなアドオンの実装を計画

運用開始当初こそ「どのように使えばよいのか」という問い合わせも多かったが、「すぐに操作に慣れてくれたようです」と朝永氏。NotebookLMによるチャットボットも有効に機能し始め、「今後は問い合わせ件数も着実に減少していく見込みです」とする。

実際、操作に関する問い合わせは運用開始から1カ月ほどで減少傾向に転じた。一方で、「こうした機能はないか」「このような使い方は可能か」といった、活用の幅を広げる前向きな質問が増えているという。

「私たちも想定していなかった活用方法を提案してくれる職員も多くいます。例えば水道課の職員からは、外出先でGoogle フォームに必要事項を入力しておけば、帰庁後の報告書作成を効率化できるのではないか、という提案があり、現在検討を進めています。もちろん、すべてを許可したい思いはあるものの、セキュリティ上譲れないルールもあるため、利便性とのバランスを慎重に見極めながら対応しています」(森﨑氏)

こうした要望の一つとして多く寄せられているのが、組織図から連絡先を検索し、そのままメールの宛先に指定したいというニーズである。これについては「組織アドレス帳」のアドオン導入を決定しており、すでに実装に向けた準備が進められている。

管理部門としても、問い合わせ件数の減少に加え、さまざまな導入効果を実感しているという。例えば、管理コンソールの設定についてGeminiに質問することで、手順を迅速に把握でき、対応時間の短縮につながっていると両氏は口をそろえる。今後はGoogle ドライブの全庁的な活用も検討しており、実現すれば、資料の保存や検索の効率化を通じて、職員・管理部門双方の業務改善がさらに進むと期待されている。

最後に、Google Workspaceやサテライトオフィスのアドオン導入を今後検討する自治体に向けて、両氏は次のようなメッセージを送ってくれた。

「自治体は多くの業務を抱えているため、導入に向けた説明や運用整理、移行準備、実際の移行作業には相応の時間と労力がかかります。特に現行システムを庁内サーバーやLGWAN-ASPで運用している場合は、α’ダッシュモデルへの切り替えなど検討・検証事項が多くなるため、十分な準備期間を確保することをおすすめします」(森﨑氏)

「定着を図るためには、デジタルツールに不慣れな職員にも配慮した丁寧な説明が欠かせません。説明会の実施に加え、資料や研修動画を充実させることも重要です。また、導入後も便利な使い方を継続的に発信するなど、伴走的なサポートを意識することが求められます」(朝永氏)

  • 集合写真

サテライトオフィス

■AI関連/クラウド関連に特化したインターネットソリューションベンダー■

さまざまなビジネスモデルに最適なソリューションパッケージを開発し、ユーザー目線に立った戦略の企画・提案を行っています。業界トップクラスの導入実績を持つGoogle WorkspaceやMicrosoft 365、LINE WORKS、ChatGPT など、AI関連ならびにクラウドコンピューティングに関わるビジネスの可能性を追求しています。

●●無料活用セミナー 随時開催中!!●●

提供:サテライトオフィス

[PR]提供:サテライトオフィス