埼玉県八潮市に本社を置き、シュークリーム、ロールケーキ、エクレアといった洋菓子のチルドデザートを製造・販売するモンテール。その日に入った注文をその日のうちに製造・出荷する「日配」のビジネスを展開する同社では、長年使い続けてきたオフコンの基幹システムをこのほど刷新。その際に採用したのがローコード開発プラットフォームの「GeneXus」(ジェネクサス)である。本記事では同社が基幹システム刷新に至った経緯や課題、GeneXusの選定理由、構築プロセス、そして現在の利用状況と成果を紹介する。
オフコンの旧基幹システムが抱えていたさまざまな課題
受注・製造した商品が翌日にはスーパーマーケットやコンビニエンスストアの店頭に並ぶという、リードタイムの短いタイトなビジネスモデルを実践する同社。EDI受注によるオンライン取引がメインで、それを支えているのが基幹システムだ。基幹システムの構築・運用を行う情報システム部の責任者として、システム開発及びインフラ周りのサポートを担うのが大山英治氏である。同氏が、フルスクラッチで開発したオフコン時代の基幹システムにおいて浮上していた課題を次のように語る。
「受注から製造、お客様配送センターへの出荷まで一連の流れを基幹システムで運用していたのですが、旧基幹システムはオフコンで構築していたため、時代の流れでメーカーサポートが停止していく懸念がありました」
実際、当時はすでにオフコンはハードウェア提供が終了するという話が出ており、メーカーのサポートも徐々に縮小していた。こうした状況に加え、同社では将来を見据えたオープン系システムへの移行について検討を始めていたという。
「当社の要件とうまくマッチするものがなかなか見つからず、検討に時間を要しているうち、実際にオフコンの撤退という話を受けたため、そこからスピード感を上げてオープン系の新基幹システム移行を進めることになりました」
オフコンのサポート停止に加えて、COBOL技術者が枯渇し、システムも肥大化し続けていたことから、技術者の負担も大きな課題になっていた。「属人化も進み、もはや自社改修・メンテナンスに限界を感じていました。そもそも20年来使ってきたオフコンのシステムではすでに改修にも限界が生じていましたし、パフォーマンスや最新技術の適用という面でも課題がありました」と大山氏は振り返る。
効率性とコストに着目して新システムの開発ツールを検討
オープン系システムへの切り替えにあたり、まずは自社ビジネスに合わせて柔軟性を持たせたオーダーメイドの開発をしていくこと、そして開発・改修・保守にあたり属人化を解消したいということが、新基幹システムに求める要件となった。
「実は最初は、パッケージの導入でなんとかできないかと検討を進めていたのです。システムの基本部分はパッケージを採用し、不足する部分や補いたい部分については通常の開発ツールを用い、アドオンで開発するという選択肢です」
ただ、そこに同社独自の事情が絡む。基幹システムは当然ながら大規模なシステム構築となるわけだが、日配というスタイルでビジネスを行う同社の場合は当日受注したものを当日中に製造し、顧客の配送センター等に届けるので、基本的に在庫というものが存在しない。「そのため、他業態のシステムと比べればそれほど複雑ではありません。となると、さまざまな機能がてんこ盛りになったパッケージでは当社のビジネスで使わない機能が多くあり、結果的にマッチしないと判断しました」と大山氏。かつ、パッケージをカスタマイズしてまで同社の業務に合わせるのであれば、結局のところ費用面ではスクラッチで開発したほうがメリットを生み出せるとの結論に至る。
そこからどういった開発手法で新たな基幹システムを開発していくかと検討を進める中、再びフルスクラッチで開発することも考えたという。しかしながら「新システムでは自社保守を前提としていたため、後々の保守や構築時のスピード感を踏まえ、効率性・生産性を可能な限り高める手法で開発していきたいと考えたのです。ちょうど高速開発ツールがブームになり始める頃で、時間をかけてさまざまなツールをじっくりと見ながら、最良の選択肢を選び取っていきました」と大山氏は述懐する。
ローコード開発ツールにGeneXusを選定した理由
新基幹システムの開発基盤として大山氏が着目したのが、ローコード開発プラットフォームだ。具体的なツール選定に向け、セミナーや勉強会に参加するなどして主要なローコード開発ツールを一つひとつチェック。1年近くにわたり検討した末、採用したのが「GeneXus」だった。 大山氏はGeneXusを選んだ理由を、こう説明する。
「基幹システムの再構築で目指したのは、当社の業務に合った、人が使いやすいシステムへの刷新です。その観点から複数のローコード開発ツールの比較・検討を重ねました。GeneXusは大規模な開発に向いており、かつツールの技術だけを習得すれば開発が可能であると判断したことが、選定の大きな理由です」
GeneXusは、業務要件を記述していくだけでデータベースやプログラムを自動生成する開発ツールである。将来的な技術変化に左右されず、システムの再構築に際しても業務要件そのままに生成し直すことができるため、長く使えるシステム開発を実現できるのが強みだ。
「ローコード開発ツールは大きく分けてGeneXusのようにソースコードを生成するタイプと、そのままアプリケーションとして実装されるタイプがありますが、後者はWeb系の画面インターフェースのみになってしまうので、基幹システムの開発にはソースコードを生成するタイプのほうが向いていると考えました」と大山氏。その中でも、GeneXusは上述のように同社が志す大規模開発に適しており、ソースコード生成後に言語の知識が必要になることもないので習熟も容易であること、さらにはプロトタイプを素早く作れるため取引先のニーズに迅速対応できることも評価ポイントになったという。
「開発にあたり、できればカスタマイズはしたくないという考えが前提にありました。GeneXusなら生成されるソースコードで大抵の部分をカバーでき、基本的には開発プラットフォーム内でほぼ完結できます。もちろん本当にやむを得ないときはソースコードをいじることになりますが、それは極力避けたいと考えていたので、最終的にGeneXusが最適だと判断しました。」
パートナーと密に連携して大規模システムを再構築
念入りに検討したうえでGeneXusの採用を決定し、開発パートナーとしてはJBCC(ジェイビーシーシー)を選定した。モンテールとしては稼働しているシステムの動作に関する現状分析から任せたいと考えていたが、その分析から開発、そしてGeneXusの技術移転までを一貫して対応できたのが同社だったという。
今回の基幹システム再構築では自社保守を念頭に置いていた。そのため、実際の構築では、帳票の共通出力指示画面までをJBCCが担当し、そこから取得したデータの帳票出力はモンテールが手掛けた。その開発において苦労した点について、大山氏は次のように振り返る。
「当社の受注・販売の柱となる基幹システムですから、やはり受注時の伝票入力などエントリー系の仕組みづくりには気をつかいました。当社では、業務がスピーディーに進むため、入力スピードの速い人材が揃っています。そのため、システム画面も同じ速度で動作できるパフォーマンスを備える必要があります。そこについては実際に開発したJBCCと密に相談しながら、ソースコードにも一部手を加え、求めるレスポンスを実現するシステムを開発していきました」
GeneXusで開発した機能は671に上り、うちJBCCが430機能、モンテールが241機能、C#による開発が21機能だった。オフコン系からオープン系システムへ移行するにあたり、オープン系で画面がWebアプリ化することで、高速処理を実現できるか不安だったと大山氏。そこで早期にバッチ処理の性能測定を行ってチューニングを施し、Webアプリ用サーバーとは別にバッチ処理用サーバーを構築することで対処した。ただ、画面構成が複雑なものに関してはレスポンスに不安が残っていたため、初期の段階でC#を用いてクライアントサーバー型アプリを開発したという。
そうして出来上がった新基幹システムは、2022年7月に稼働を開始。旧基幹システムと同様、受注から出荷指示、出荷、売上請求、さらにはその先の入金消込、売掛管理、仕入、債務管理まで幅広く担っている。同社は受注のほぼ9割をEDIで行っているためマスタがとても重要になるが、新システムではマスタ関連の機能が強化され、一括登録もできるようになった。
成果として、旧システムの老朽化やレガシーシステムに対応できる技術者の枯渇、属人化、そしてスピーディーなビジネスへの対応といった課題については以下のように解決されたと大山氏は評価する。
「新システムではオープン化され、もともとオープン系に慣れた技術者も多かったことから、システム改修や他システムとの連携も容易に行えています。また、ローコード開発ツールのGeneXusを採用したことで属人化を解消し、自社保守も実現。さらには汎用的なデータベースを構築し、取引先からの要望など変化に対しても迅速に対応できています」
定量的効果としては、トータルで1カ月辺り66時間の工数を削減できたとのこと。内訳は出荷指示で60時間、マスタの一括登録機能により手間がなくなったことで6時間の削減となっている。また1アイテムあたり10秒の入力効率向上が見られ、3カ所の製造工場それぞれで1工場あたり約100アイテム程度ある生産計画入力の操作性が向上したということだ。
実は稼働開始当初、旧システムではテンキーのみで入力できていたところ、Webアプリ化の弊害で1カ月あたり18時間の工数増加になっていた。しかしユーザーが新システムに慣れてくることで、結果的に66時間の工数削減につながった。
また、定性的効果としては、Webアプリ化によって画面が見やすくなり、直感的操作が可能になったと大山氏。加えて、出荷指示を処理する際に人間が極力判断せず、伝票を自動出力する仕組みにしたことで、出荷伝票出力の作業量が削減され、データの取り込みや抽出、出荷帳票出力時の処理パフォーマンスにも向上が見られているという。
コロナ禍に見舞われながらも充実のサポートで技術を身につける
今回の開発は、実はコロナ禍の真っ只中で進められた。開発手法としては要件定義に基づき実画面を確認しながら5回のイテレーションで開発を進めていく「JBアジャイル」を採用した。「非常事態宣言が出ている期間はやむなくリモート会議でJBCCと要件定義を進めていきましたが、まだリモート会議ツールに慣れていない時期でもあり、うまくつながらない、ノイズが入るといったことが頻繁に起きました」と大山氏。
オンラインで連携しながらプロジェクトを進める形も初めてだったこともあり、当初予定していたスケジュールに遅延も発生した。結果的に当初1年半だった予定が2年越しに延びたというが、JBCCの尽力もあって遅れは最小限に抑えられたようだ。 加えて、JBCCのGeneXusに関する教育効果も大きかったと大山氏は話す。
「GeneXusを選んだものの、実際にどこまでできるかは使ってみなければわからない部分もありました。そこで、まずはジェネクサス・ジャパンが提供するeラーニングで基本的な部分を学んだうえで、JBCC独自の教育プログラムも受講し、GeneXusの技術を身につけていきました。設計開発担当者は2カ月ほどでGeneXusをある程度操作できるようになり、JBCCから開発テンプレートが提供されたこともあって、自前で帳票関連215機能、マスタ26機能の開発を行うことができました」
構築後に入ってきた新しいスタッフについては、ジェネクサス・ジャパンのeラーニングと社内のOJTで十分カバーできているが、「初めてGeneXusを使うところでは、JBCCの教育プログラムの効果がとても大きかったと感じています」と大山氏は明かす。 そして新システム稼働後は当初目指していたとおり、JBCCが構築した部分も含めて自社内でメンテナンスを行っている。それだけでなく、基幹システム再構築の対象としなかったサブシステムに関しても、ものによっては社内でGeneXusにより作り直せるようになった。現在は営業部門が獲得した見積もりをそのまま受注業務につなげる見積もりシステムもGeneXusで構築しているという。
稼働開始3年半強の現在と今後に向けた展望
稼働開始から3年半以上が経過し、「かつてはオフコンの画面に慣れていた人が大半を占めていたところ、いまは社内での浸透に加えオープン系に慣れた若い世代が増えたこともあり、違和感なく操作できているようです」と語る大山氏。実際にGeneXusを扱う担当者からも、GeneXusは自然に扱うことができ、問題は何もないと聞いているとのことだ。オープン系の画面になっても操作のパフォーマンスは落ちず、むしろ慣れによって向上しているのは上述のとおり。今回のプロジェクトでマスタ構造を見直したことで、現在はパッケージを導入し、生産管理システムの構築も進めている。この新システムとGeneXusで構築した基幹システムとのマスタ連携も容易に行えているという。
今後については、2年後をめどにハードウェアのリプレイスも考えなければならず そこに向けて、ジェネクサス・ジャパンと協議を重ねているという。また、GeneXusの新バージョンでモバイル系端末のインターフェース強化が進んでいることを受け、現在C#で自社開発しているモバイル部分についても、将来的にはGeneXusへの移行を検討している。
これまでに培ってきた運用や開発の経験を土台に、業務の変化に応じたシステムの進化を柔軟に描いていく――モンテールの取り組みは、次のステージへと歩みを進めている。
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