SCREENセミコンダクターソリューションズは、京都に本社を置く半導体製造装置メーカーだ。シリコンウェーハの表面を洗浄する「洗浄装置」では世界トップクラスのシェアを持ち、塗布・現像装置(コータ・デベロッパ)などの装置の製造・販売も行っている。

その一方で、同社にはもう一つ、長年にわたり顧客から厚い信頼を集め続けてきた装置がある。回路パターンを転写する原版であるフォトマスクを測定する装置である「DR-8000」だ。主力装置ではないものの、業界内でもその品質に定評があり、海外メーカーを含め、多くの企業で採用されてきた。

驚きなのは、このDR-8000に関わるメンバーが、開発・営業を含めてもわずか10名程度だという点だ。なぜ、この少人数のチームが、長年にわたり高い評価を受ける装置を生み出し、育て続けることができたのか。その背景には、技術に対する一切の妥協を許さない姿勢と、顧客と真正面から向き合いながら装置を進化させてきた、挑戦の日々があった。

本記事では、DR-8000の開発を率いる開発担当のK.R氏と、顧客と現場をつなぐ営業担当のO.Y氏に話を聞きながら、少数精鋭だからこそ実現できたものづくりの姿勢をひも解いていく。

  • (写真)集合写真

    (左)SCREENセミコンダクタ―ソリューションズ フロンティア技術統轄部 検査計測プロダクト部 K.R氏
    (右)SCREENセミコンダクタ―ソリューションズ 国内営業二部 O.Y氏

世界の大手メーカーから信頼を集めるDR-8000とは

―K.R氏は開発職とのことですが、普段はどのような業務を行っているのでしょうか?

開発担当K.R氏:計測装置と検査装置の光学設計を担当しています。主にDR-8000の開発において、10名程度のチームのまとめ役をしています。現在はDR-8000で「できること」を増やしていくのが私のミッションです。

―DR-8000は、どのような装置なのでしょうか?

開発担当K.R氏:ウェーハ上の電子回路の原版となるフォトマスクのパターン寸法を計測する装置です。当社はウェーハの洗浄装置といった表面処理技術のイメージが強いですが、光や画像を扱う技術もコア技術として持っており、それによって成長してきました。DR-8000は、この光や画像を扱う装置で、ミクロンからサブミクロンのパターン寸法を、1ナノメートルレベルの高い繰り返し精度で測定できる装置です。フラットパネルディスプレイ(FPD)分野ではトップクラスのシェアを持っており、日本国内の大手フォトマスク製造企業のほか、韓国や台湾、中国など海外にも出荷しています。DR-8000は2000年代初頭に出荷を開始し、約24年の歴史があります。

  • (写真)SCREENセミコンダクタ―ソリューションズ フロンティア技術統轄部 検査計測プロダクト部 K.R氏

    SCREENセミコンダクタ―ソリューションズ フロンティア技術統轄部 検査計測プロダクト部 K.R氏

―もともとFPD用であったDR-8000が、最近LSIにも対応したと聞きましたが……

開発担当K.R氏:FPD向けフォトマスクの計測装置として成長してきたDR-8000ですが、新たな機能を開発したり、測定精度を追及したりしているうちに、「ディスプレイよりさらに緻密なパターンを含むLSI向けフォトマスクにも応用できるのではないか」と考え、2025年にLSI向けフォトマスク用のDR-8000をリリースしました。このLSI向け計測装置のリリースは、このグループの開発に加わって以来、私の夢でした。

―DR-8000はフォトマスク業界での評価が高いと聞きます。どのような点が評価されているのでしょうか?

営業担当O.Y氏:“DR-8000が1台あれば、何でも測定できる装置である”という点だと思います。一般的に、検査や測定の装置は、「この検査や測定をするならこのメーカーのこの装置」という形で、目的によって別々の装置を導入する必要があります。しかし、DR-8000はオールインワンという形で、1台でフォトマスクの品質を総合的に担保できます。

  • (写真)SCREENセミコンダクタ―ソリューションズ 国内営業二部 O.Y氏

    SCREENセミコンダクタ―ソリューションズ 国内営業二部 O.Y氏

高精度にとどまらない、DR-8000の技術的優位性

―技術的な面で、DR-8000の優位性をもう少し詳しく教えてください

開発担当K.R氏:DR-8000の優位性は、3つあると思っています。

1つ目は、ミクロンからサブミクロンレベルのパターン寸法を、3σ1nmという極めて高い繰り返し精度で計測できる点です。フォトマスクは光を透過させて使用するため、それと同様にフォトマスクに光を通して顕微鏡で観察・計測する必要があります。この条件で1ナノレベルの繰り返し精度を安定して実現できる装置は、現時点では当社以外にないのではないでしょうか。

2つ目は、1台の装置で多様な検査・計測に対応できるオールインワン性です。パターン寸法測定に加え、光透過率、位相差測定、露光シミュレーション、膜厚測定などを1台で行うことができます。複数の装置を並べる必要がなく、設置スペースや運用面でもメリットがあり、この点はお客様から高く評価いただいています。

3つ目は、LSI向けの6インチ、5インチマスクから、ディスプレイ向けの大型フォトマスクまで、さまざまなサイズのワークに対応できる点です。過去には、フォトマスク以外での計測用途で購入いただいた実績もあります。

営業担当O.Y氏:DR-8000の役割には3つの要素があると思っています。

1つ目は、顧客のプロセス開発における検証ツールとしての役割です。マスク業界は日々進化しており、様々な技術開発が行われています。新たな技術が生み出された際、それが本当に有効なのかを示す必要がありますが、それを客観的に証明するツールとしてDR-8000は有効なツールとなります。

2つ目は、開発した技術が安定的に製造できるかを管理する、いわゆるプロセス管理ツールです。複雑な製造プロセスを経て完成した新技術搭載のマスクは、付加価値が高い一方で、たった一度製造できただけだと意味がありません。このマスクを安定的に製造するにはその前後のプロセスを管理するツールが重要となります。DR-8000はその役目も担います。

3つ目は、品質管理の側面です。顧客の要求するスペックを満たす各要素を数字に置換え、マスクを販売する際に合わせて提出する必要があります。これにより、エンドユーザーは安心してマスクを使用することができます。

―製品を開発する上で、どのような点にこだわっていますか?

開発担当K.R氏:DR-8000の開発において、もっとも重視しているのは「光をいかに制御するのか」という点です。フォトマスクは光を透過させて使用するため、計測の際にも透過照明を使います。ただ、測定装置においては、顕微鏡が重視され、照明はどちらかというと軽視されがちです。しかし、この装置では照明系を非常に重要な要素として設計しています。

また、観察視野の均一性はもちろんですが、照明系の中にある「瞳」と呼ばれる部分の均一性も徹底的に配慮しています。FPD向けの大型フォトマスクを測定するとき、特に強みを発揮するのは、「どこで測っても同じ値を出せる」という点です。癖のない値を出せるように、光学系全体を設計している点もこだわりの一つです。

  • (写真)実際にDR-8000でフォトマスクを測定する様子

    実際にDR-8000でフォトマスクを測定する様子

トップダウンではなく「面白そうだから作る」文化

―少人数で、高評価の製品を生み出せたポイントはどこにあると思いますか?

営業担当O.Y氏:我々は少人数のチームですが、大きなお客様を相手にしています。何か困ったらみんなで集まって議論し、結論を出さなければなりません。そういう意味では、営業と技術の距離が一番近いチームだと思います。

開発担当K.R氏:最初は、営業の一人が技術者に「こういうフォトマスクを測りたいが、できないか」と声をかけたところ、「できます」と返答したのがDR-8000の始まりでした。上から開発を指示されてやったわけではなく、立ち話をするような形でメンバーが集まり、「こういう装置を作ろう」と動き出しました。「こんなものを作ったら面白いのではないだろうか」と日常的に語り合えるチーム力が、高評価の製品を生み出せた理由の一つではないかと思っています。

  • (写真)対談されているときの写真

これまでも、これからも、お客様との共創は続く

―DR-8000のこれまでの歩みは、まさにお客様との共創の歴史なのですね

営業担当O.Y氏:はい。営業と技術が常に一緒になってお客様と向き合う伴走型の営業・開発スタイルは、今後も続けていきたいですね。2026年2月に開催されたSEMICON Korea 2026では、DR-8000のライブデモを行いました。開発担当のK.Rは日本から装置を操作し、私は現地でお客様と向き合いました。お客様と熱い議論を交わし、細部まで装置をご覧いただけたことで、実際に商談へつながったケースもありました。離れていても同じ目線でお客様へ寄り添える点が、我々のチーム力だと感じています。

開発担当K.R氏:これまでのDR-8000が進化を重ねてきたのと同じように、今後も常に「次に必要とされる技術」を生み出し、この装置にできることを一つひとつ増やしていきたいと考えています。そのために、将来必要とされるものも追加できるように、あらかじめ空間を確保したり、拡張性を仕込んだりした設計になっています。

売上規模の観点では、DR-8000はニッチな市場を対象としているため、規模は限定的です。一方で、その市場における当社の存在感や果たす役割は主力装置と同等であり、その重要性は上層部にも十分に理解してもらっています。もちろん、新規開発を行う際にはその意義、市場性を説明する必要はありますが、一度承認が得られれば自由に活動ができる気風で、非常に懐が深い会社です。私自身、強い愛着を持ち、技術面でも一切妥協せずに向き合ってきた装置だからこそ、これまで以上に多くの方に知られる存在にしていきたいです。

  • (写真)SEMICON Korea 2026でのライブデモの様子

    SEMICON Korea 2026でのライブデモの様子

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DR-8000は、時代ごとに変化するフォトマスク技術と向き合いながら、現場の声を一つひとつ装置に映し込み、少しずつ進化を重ねてきた装置だ。開発と営業が装置を囲み、議論や施策を重ね、ときには将来を見据えた余白を残す──そうした取り組みは、トップダウンで決められたものではなく、「面白そうだからやってみよう」という現場発の発想から生まれてきた。その姿勢こそが、少人数のチームでありながら、世界中の現場に受け入れられてきた理由なのだろう。DR-8000は、いまもなお進化の途中にある。次に必要とされる技術を見据えながら、これからも顧客とともに歩み続けていく。そして、その歩みの中にこそ、SCREENセミコンダクターソリューションズのものづくりの本質が表れている。

  • (写真)複数のDR-8000に関する写真

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