AIの処理に特化したNPUを搭載する次世代のPCが「AI PC」。AIの普及に伴い、AI PCも着実にシェアを拡大しており、今後のビジネスにおいて主流になっていくと見られています。
一方で、日本企業のAI PC導入は世界に比べて遅れを取っているのが現状です。なぜ日本はAI PCへの移行がなかなか進まないのか。そして、AI PCはビジネスにどのような可能性をもたらすのか。
PCからサーバ、ストレージまで、あらゆるハードウェアを一気通貫で提供し、AI PC市場をリードするデル・テクノロジーズ。同社で上席執行役員 クライアント・ソリューションズ営業統括本部長を務める猪瀬小里江氏にAI PC市場の現状と、デル・テクノロジーズが描く未来の展望について話を伺いました。
AI PCへの置き換えが着実に進みつつあるが、日本は世界と比べて遅れが目立つ
ーーまず、AI PC市場の現在の状況について教えてください。
IT専門調査会社IDCの予測によると、2028年までに98%のPCがAI PCに置き換わるとされており、当社でもここ数ヶ月は1,000名以上の規模のお客様でAI PCの引き合いや導入実績が増えています。
一方で、中堅中小企業ではまだWindows11移行への過渡期にあり、まずはそこを見据えてからAI PCの導入を検討していくという状況です。また、海外と比較すると、日本はAI PC導入が遅れているのが現状と言えます。
ーー日本が海外から遅れているのはなぜでしょうか。
日本は「誰かがやると、それに続く」というように新しいものを最初に導入することが苦手な文化があると思います。つまり、リスクを取ることに対して慎重になっており、AIについては、その「誰か」がまだ現れていない状況です。失敗するとコストになってしまうと考えがちなことが遅れている理由の一つだと考えています。
AI PCの活用でルーティンワークを効率化し、リソースの最適化でビジネスを底上げ
ーー海外の経営者は、どのようなメリットを想定してAI PCに投資しているのでしょうか。
ROIの観点でいえば、AI PCの導入は全体的な効率化につながると考えています。AIによってオーバーヘッド(間接費)を削減し、人的リソースを適切に配置することで、ビジネス全体の底上げができると見ているのです。昨年5月にラスベガスで開催された「Dell Technologies World 2026」で大手金融機関やリテール企業のCEOやCIOが登壇した際も、「ルーティンワークにAIを活用し、削減できたリソースを新しいビジネスに投入することで、従業員のモチベーションとエンゲージメント向上につながる」と話していました。
【AI PC活用事例】医療現場での実証実験により、看護師の残業の大幅削減と業務効率化を実現
ーー実際のAI PCの活用事例について教えてください。
医療関係の在宅訪問医療で導入いただいた事例をご紹介します。宮崎県のクリニックがマイクロソフトとのアライアンスで始めたプロジェクトで、AI PCとDellの作成したAI ソフトの活用事例です。
訪問時に患者との会話内容をAI PCのマイクで録音し、AIがリアルタイムで文字起こしをします。次にAIがその内容を電子カルテのフォーマットに合わせて変換し、レポートを作成。さらにそのレポートをAIが読み込み、在宅医療計画書のドラフトを作成します。こうしたAI活用により、現場の医師や看護師の皆さんの残業時間が大幅に減少しました。また、議事録の作成や電子カルテの作成といった作業が削減できたことで、現場の医師や看護師の皆さんがより患者のケアに集中できるようになったと好評をいただいています。
ーークリニックなどの医療機関だと個人情報などのセキュリティが重要です。
はい。AI PCであれば、先ほどお話した処理をすべてAI PCというローカル環境で完結できます。これにより、患者のプライバシーを確保しながら、月間500件近くにのぼるレポート作成業務を大幅に効率化することが可能になりました。
デルの強みは強固なサプライチェーンによる高いセキュリティ性
ーー他社もAI PCを展開していますが、DellのAI PCならではの強みは何でしょうか。
デル・テクノロジーズの最大の特長は、強力なサプライチェーンによるセキュリティです。きちんと審査を通過したパートナー企業から部品を調達しており、独自の組み込みセキュリティによりファームウェアも堅牢です。製造時には各コンポーネントレベルでデジタル証明書を付与しているため、公式サイト内をシリアルナンバーで検索していただくと、コンポーネント単位で出自をトラッキングできます。これはサプライチェーンに強みを持つ当社ならでしょう。
さらに、マイクロソフトのIntuneやクラウドストライクなどのサードパーティーとも連携して、IT管理者がPCの異常をリモートかつBIOSレベルで検知・対応できるシステムも提供しています。我々が提供するPCは“最も安全な商用PC”であると自負しております。
ーーサイバーセキュリティはもちろん、ハードウェア・ソフトウェアに関する信頼性という意味でのセキュリティ性についてもデル・テクノロジーズは強みを持っているわけですね。
そうですね。当社は個人向けPCから、サーバやストレージなどのインフラ領域まで幅広い製品ポートフォリオを持つ数少ないハードウェアベンダーです。製品群を同一のベンダーで統一できるため、セキュリティ対策や運用をそろえやすく、安心して導入いただけます。デルのインフラ関連の製品を導入いただいているお客様企業に対して、一気通貫でお応えできるのが強みです。
そして「Dell Pro AI Studio」や「Dell AI Factory」といった独自のテクノロジーもデルの強みと言えます。幅広いポートフォリオと「Dell Pro AI Studio」「Dell AI Factory」で包括的にAI導入を支援
ーーまずDellのAI PCの製品ラインアップを教えてください。
最近、AI PCの製品ラインアップを一新しました。学校、仕事やエンターテインメント向けの「Dell」、プロフェッショナルレベルの生産性を発揮する「Dell Pro」、最高峰のパフォーマンスを誇る「Dell Pro Max」の3カテゴリがあり、さらにそれぞれのカテゴリ内に「Premium」「Plus」「Basic」の3製品がラインアップされています。(※2025年に取材当時)また、予算や要件に合わせて細かく仕様をカスタマイズできるCTO(Configure To Order)も可能です。
CPUについてはIntelとAMDの両方を全面的に展開しており、ハイエンドからミドルレンジまで対応しています。
ーー「Dell Pro AI Studio」について教えてください。
「Dell Pro AI Studio」は、デルのAI PCでのAIアプリケーション開発・導入・管理を支援する無償のツールキットです。当社内に蓄積されたAIツールの開発ノウハウをもとに、検証済みのフレームワークやテンプレートがまとめて入っているため、本来であれば数ヶ月かかるような開発を短期間で行えるのが利点です。
AIをどんどん活用してレベルアップしていきたいというお客様にとっては、すぐにでもAI開発に取り組んでいただけるソフトウェアとなっています。ーー「Dell AI Factory」について教えてください。
「Dell AI Factory」は、PCやワークステーションを現場作業の入口とし、最終的にはデル・テクノロジーズのサーバやストレージ、ネットワークを組み合わせて一元化する考え方です。オンデバイスで行ったAIの学習や推論、データなどを統合管理し、最終的には企業全体での活用を目指しています。先ほどご紹介した「Dell Pro AI Studio」で作成したAIアプリケーションも、この「Dell AI Factory」の一部として活用できます。
ーー「Dell AI Factory」ではAI PCだけでなく、サーバもAI処理に使用するのですか?
はい。「Dell AI Factory」は、AI PCとサーバを組み合わせたハイブリッドAIを想定しています。AI PCを使ったAI処理はセキュリティや速度、コストなどで多くのメリットがありますが、規模が大きくなると限界も見えてきます。そこで、より重いAI処理を行う場合はサーバに移します。ただ、最初からすべてをサーバで行うとリソースを大量に使いますし、クラウドがパンクする可能性もあるので、使い分けが重要なのです。
まずはPCを入口として推論を行い、必要に応じて場所を移しながら、様々なAIエージェントが動き始めるーーあたかも“工場”のベルトコンベアで行う流れ作業のようなイメージですね。
日本企業のAI PC投資マインド変革が競争力維持の鍵を握る
ーー日本企業のPC投資に対する考え方について、どう感じていますか。
「使えるものを渡せばいい」という考え方が多いと感じます。しかし、AIの時代ではツールがどんどんAI化していくため、適切なPCを与えなければ投資効果が落ちてしまいます。「NPUの使い方がわからないから、2世代くらい前のPCでもいいだろう」といった考え方では、確実にこれからの経営や競争で遅れを取ってしまうのではないでしょうか。
さらに、もう一つの問題は人材採用への影響です。コロナ禍で働く環境への意識が変わり、リモートワークができない会社が敬遠されるようになりました。それと同じように、AIが使えないようなPCを配っている会社には入社したくないという時代になってくるかもしれません。 きちんとした投資をPCに対して行うことで、優秀な人材を採用にもつながると考えています。ーーAI PCの導入は、企業にどのようなインパクトをもたらすでしょうか。
個人的には、インターネットやWi-Fiが登場したときと同じくらいのインパクトがあると感じています。今やインターネットはもちろん、Wi-Fiのない場所で仕事をしようとは思わないでしょう。同じようにAIが使えない環境では仕事ができないという時代になると考えています。
ーーデルが描くAIの未来について教えてください。
日本はまだAIをフルスロットルで活用できていない状況です。我々社内で数千ものAIツールを活用して業務を効率化し、それをユースケースとしてお客様にお伝えしています。日本のAI環境を作る一番の担い手になることが、デル・テクノロジーズの目標であり責任でもあると考えています。
AI PCがもたらすのは単なるハードウェアの進化ではなく、働き方そのものの変革。そうしたAI活用を強力にサポートするのが、デルのハードウェアでありアプリケーションです。特に「Dell Pro AI Studio」「Dell AI Factory」といった包括的なAIソリューションは、PCからサーバ、ストレージまで一気通貫で提供するデル・テクノロジーズならではの提案といえます。経営や競争で遅れを取らないためにも、日本企業には早急なAI PCへの投資が求められるでしょう。
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