AIエージェント元年を迎え、企業の生成AI活用は新たなステージに踏み込み始めた。よりパーソナライズされたAIが、業務と状況に合わせた支援をしてくれる世界が近づくなか、業務デバイス上で処理を行う“ローカルAI”の利用シーンも拡大している。こうした状況において、設計開発やデータ解析、メディアコンテンツ制作など、高い処理能力を必要とする専門的な用途で使われてきたワークステーションの需要が高まりを見せている。本稿では、最新のAMD Ryzen™ AI Max PROプロセッサを採用した新時代のモバイルワークステーション「HP ZBook Ultra G1a 14」をリリースした日本HPとAMD、ワークステーションのレンタルサービスを展開するオリックス・レンテックの担当者に、モバイルワークステーション市場の最新動向について話を伺った。
テクノロジーの進化に伴い、デスクトップからモバイルへとシフトするワークステーション市場
生成AI活用がビジネスに浸透した現在、業務デバイスにはより高い処理能力が求められるようになった。デバイスの心臓となるプロセッサの進化も著しく、近年では可搬性を重視したモバイルノートPCにも、デスクトップPCと遜色のないパフォーマンスを発揮するプロセッサが搭載されている。
こうして業務デバイスの高性能化が進むなか、着実にシェアを伸ばしているのがモバイルワークステーション製品だ。場所を問わない自由で柔軟な働き方を追求する流れは、これまでワークステーションを活用してきた製造・建築・メディア・エンターテイメントといった業界にも押し寄せており、デスクトップからモバイルワークステーションへの移行を検討するケースも増えてきているという。日本HPの大橋 秀樹 氏は、モバイルワークステーション市場の現状についてこう話す。
「コロナ禍以降、モバイルワークステーションの市場は急速に伸びてきています。これまで設計やデザインといった専門的な業務は、オフィスに設置したデスクトップ型のワークステーションで作業を行うというスタイルが主流でした。しかし、最近では一般的な業務担当者と同様に、オフィスでも自宅でも快適に作業できるモバイルワークステーションへの注目度が高まっています」(大橋氏)
働き手不足が深刻化している状況下、専門的なスキルを持った人材を確保するという意味でも、自由で柔軟な業務環境の実現は不可欠と大橋氏。このためデスクトップ製品と同じレベルの処理能力を備えたモバイルワークステーションが求められるようになったと市場を分析する。
クライアントPCやワークステーションのレンタルサービスを展開しているオリックス・レンテックでワークステーションを担当するICT事業推進部の柏木 俊秀氏も、モバイルワークステーション需要の高まりを感じているという。
「デスクトップからモバイルへのシフトが急速に進んでいるのは確かで、タワー型のエントリーモデルからモバイルワークステーションに移行する傾向が見られます。もちろん業務によってはハイエンドのデスクトップモデルを必要とするケースもありますが、モバイルワークステーションへの移行は今後も続いていくと考えています」(柏木氏)
“ローカルAI”のニーズが高まり、デバイスのAI処理能力が問われる時代に
モバイルワークステーションが注目される要因の1つとしては、デバイス上でAI処理を行う“ローカルAI”のニーズが増大していることが挙げられる。これまではクラウドのリソースを用いるAIサービスが大半を占めていたが、デバイス上での処理を想定したSLM(小規模言語モデル)なども普及し始めており、特に社内の機密情報を扱うような用途では、ローカルAIでの利用が検討されるケースが増加。またOSやアプリケーションにもAI機能が実装されるようになったこともあり、業務デバイス自体に高いAI処理能力が求められている。日本HPの大橋氏は、AI処理能力の向上がモバイルワークステーションのユーザーにもたらすメリットに言及する。
「クライアントPCの市場でも、高いAI処理能力を持つCopilot+ PCのニーズが増えています。ワークステーション市場においても同様で、3D CADなどの専用アプリケーションが高速に動くことはもちろん、日常業務やセキュリティといった領域でも効率化が図れることが大きなメリットとなります。セキュリティに関しても、AI処理に特化したNPUを採用した製品であれば、バックグラウンドで動いていても気にならないレベルまで負荷を下げることが可能です」(大橋氏)
日本AMD コマーシャル営業本部 セールスエンジニアリング マネージャーの関根 正人 氏も、セキュリティソフトのベンダーと協力してAI対応を進めていると語り、「セキュリティの分野に限らず、さまざまなアプリケーションでNPUを積極的に使うようになれば、モバイルワークステーションはより高速で省電力な環境で使えるようになると期待しています 」と近い将来を予測する。
ハイエンドGPUレベルのVRAMを利用できる、革新的なモバイルワークステーションが登場
こうした市場の高まりを受け、日本AMDではモバイルワークステーション向けの最新プロセッサ「AMD Ryzen AI Max PRO」の提供を開始した。最大16コアのCPUに最大40CU(コンピュートユニット)のGPU性能、最大128GBのユニファイドメモリを実装できるこの革新的なプロセッサについて、日本AMDの関根氏は次のように説明する。
「これまで大きなAIモデルや、3D CADなどのアプリケーションをノートタイプの製品で動かそうとすると、15~17型クラスの大型で消費電力の高いノートPCやモバイルワークステーションが必要でした。CPUとディスクリートGPUを合わせてTDPが100W~150Wを超えるケースもあり、モバイル用途向けとはいえませんでした。今回当社がリリースしたAMD Ryzen AI Max PROでは、TDPは55Wと従来の1/3程度に抑えながらもパフォーマンスの大幅な向上を実現しており、可搬性と高性能を両立できるプロセッサに仕上がっています」(関根氏)
日本HPでは、モバイル向けプロセッサとして他に類を見ない性能を誇るAMD Ryzen AI Max PROを採用したモバイルワークステーション「HP ZBook Ultra G1a 14」をリリースした。14型の小型・薄型筐体でありつつも、従来のハイエンドモバイルワークステーションを超える処理性能を実現する。最大128GB搭載可能なメモリは、用途に応じてシステムメモリ(RAM)とGPUメモリ(VRAM)に割り振ることができるユニファイドメモリアーキテクチャを採用。これまでディスクリートGPUを搭載したハイエンドのデスクトップモデルでしか実現できなかったGPU性能が利用できるようになるという。
「CPU、GPU、メモリを1つのパッケージに統合したAMD Ryzen AI Max PROを採用することで、バリアブルなメモリ構成が可能となりました。例えば128GBのメモリを搭載したモデルでは、サーバーやデータセンターで利用されるハイエンドGPUと同等となる96GBのVRAMを利用することができ、ある程度規模が大きなランゲージモデルもデバイス上で実装できるポテンシャルを発揮します。また、VRAMに割り振った容量を必要とするアプリケーションを走らせると、自動的にシステムメモリをVRAMにアロケーションさせる設定も可能で、さまざまな業務に最適なメモリ構成で作業することができます。実際、本製品を使っていただいたお客様からは『このサイズのモデルでは想定していなかった業務で活用できた』と高い評価をいただいています」(大橋氏)
設計データをはじめ、機密データを扱うことが多いモバイルワークステーションには、強固なセキュリティも求められる。HP ZBook Ultra G1a 14には、ハードウェアレベルで多様なセキュリティ対策機能が盛り込まれており、マルウェアの侵入を防止するのはもちろん、万が一感染した場合、さらには外出先で紛失・盗難に遭った際にデータを保護・消去する機能も実装されている。重量も約1.57kgと、性能を考えるとかなり軽量で持ち運びも容易。専門業務に携わるエンジニア/クリエイターに柔軟な働き方を提供するという意味でも、非常に有効な製品に仕上がっている。
AMD Ryzen AI Max PROのポテンシャルを最大限に最大化するための設計が施されたHP ZBook Ultra G1a 14には、オリックス・レンテックも注目しており、すでにレンタルサービス向けに先行投資で調達を進めている。ICT事業推進部 購買第二チームリーダーの石原 稔 氏は、電力効率の高さを大きなメリットと捉えている。
「近年では、設計開発や3D CG作成といった業務の担当者の間でも、モバイル環境で業務用デバイスを持ち運んで使いたいというニーズが高まっています。AMDのプロセッサは電力効率が高く、HP ZBook Ultra G1a 14も、性能を考えると非常に長いバッテリー持続時間を実現しています。性能だけでなくモビリティを重視するお客様にもお薦めしやすい製品に仕上がっていると感じています」(石原氏)
柏木氏も「性能をある程度犠牲にしてでも、バッテリー持ちを長くしたいと考えるお客様は一定数いらっしゃいますので、その意味でもAMD Ryzen AI Max PROは市場のニーズに合致したプロセッサだと思います」と、最新プロセッサの実力を高く評価する。
モバイルワークステーションの実力をレンタルで測るという選択肢
高度な処理を必要とする専門用途での利用を想定したモバイルワークステーションは、一般的な業務で利用するノートPCと比較するとどうしても価格は高くなる。社内稟議に時間がかかり、必要な時期にデバイスを用意できないといったケースも少なくない。近年は価格を抑えたエントリーモデルも増えてきているが、導入を検討している部署(業務)に必要な性能を予測するのは非常に困難なミッションとなる。導入したがVRAMが足りず処理に時間がかかったり、逆にオーバースペックで無駄なコストが発生したりと、問題に直面する企業も多いはずだ。
そこで注目されているのが、最新のモバイルワークステーションをレンタルで利用するというアプローチだ。オリックス・レンテックの石原氏は、同社が提供するレンタルサービスのメリットについて解説する。
「例えばAIの開発環境を考えても、開発が数年にわたるものであれば購入という手段も有効ですが、短期間を想定した開発環境ならば、高性能なワークステーションをレンタルで利用し、その後、繰り回しの標準機においても、運用やLCM(ライフサイクルマネジメント)も含めて当社のレンタルサービスを利用いただくことで、効率的なデバイス運用が可能になると考えています。実際、まずはPoCで開発用途のモバイルワークステーションを試してみたいといった要望も多く、先ほどから話に出ているローカルAIの需要増を鑑みても、レンタルサービスのニーズは高まっていくと予測しています」(石原氏)
ワークステーション担当の柏木氏も、レンタルサービスの利用を検討する企業は増加傾向にあると市場を分析。「最新モデルでPoCを実施したいというお客様の要望は増えており、多様な製品ラインナップを用意し、用途や利用期間、コストなどをふまえたうえで最適な提案を行えることは、当社の強みと考えています」と語り、スピーディに利用を開始できることも同社の優位点と話を続ける。
「当社では需要を予測し、先行投資でワークステーションを購入しており、在庫があれば最短3営業日 でご提供できます。購入する場合は社内稟議を経た後に調達する必要があり、タイムリーな導入が難しい側面がありますが、私たちのレンタルサービスを利用すれば、スピード感を損なうことなくビジネスを推進できます。こうした点もレンタルサービスのメリットだと思っています」(柏木氏)
企業の消費行動が「所有」から「利用」へと移行していることを鑑みても、“モバイルワークステーションをレンタルで利用する”というアプローチを採用する企業は、今後も増え続けていくはずだ。
3社の協業により、膨大なデータが扱われるAI時代に対応する製品・サービスを提供し続けていく
日本HP、日本AMD、オリックス・レンテックの3社は、今後も協業を続けながら、AI時代のワークステーション活用を推進していくという。
「ワークステーション製品は、新しいテクノロジーを先行して導入する傾向があります。今回のAMD Ryzen AI Max PROについても、当社と日本AMDの協業により、HP ZBook Ultra G1a 14という製品をいち早くリリースすることができました。今後もお客様のニーズを捉えて、チャレンジングな製品を送り出していきたいと考えており、日本AMD、オリックス・レンテックに協力いただけることを期待しています」と大橋氏は今後の展望を口にする。
オリックス・レンテックの柏木氏も「PC市場ではAMD、日本HPのシェアが伸びていることを実感しており、ワークステーション市場においても同様の流れがくると考えています」と語り、同社のレンタルサービスが、AMD、日本HP製品のシェア向上に寄与できることを期待していると話す。
AI時代のモバイルワークステーションに相応しい最新プロセッサを世に送り出した日本AMDの関根氏は、今後も市場のニーズを捉えた革新的なプロセッサを開発していきたいと力を込める。
「AMDでは“AI”をスローガンに掲げ、データセンター・クライアント市場に向けて製品を投入しています。今回、革新的なモバイルワークステーション向けのプロセッサをリリースしたわけですが、その背景には、ビジネスで扱うデータ量が年々増大していることがあります。膨大なデータを処理するにはそれに対応するプロセッサのパワーと大容量メモリが必要です。こうした時代の要求に応えられるようなプロセッサ、新しいワークロードに対応したプロセッサを出し続けることで、皆様のお役に立てればと思っています」(関根氏)
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