「人的資本経営」の注目度が高まり続けているいま、企業にとっては人材の価値を組織の成長やビジネス競争力強化へいかにつなげるかが大きな課題だ。すでに多くの企業では人材データの可視化、いわゆる「見える化」には取り組んでいるものの、そのデータを実際に活用できているかといえば疑問が残る。2025年9月26日に開催されたオンラインセミナー『人的資本経営の進化 ~「見える化」から「活かす化」へ。戦略的人事の次なる一手~』では、人的資本をいかに活かし、現実の成果につなげていくか、そこに向けた戦略的な考え方や実践のヒントを、主催のSB C&S、有識者、およびHR・タレントマネジメント領域におけるSB C&Sのパートナー企業担当者たちが語った。本稿ではその模様をダイジェストでレポートする。
データの「見える化」を超えて「活かす化」に進め
セミナーは、SB C&SでSaaSの営業部門を担当する山瀬誠氏の挨拶からスタートした。山瀬氏はまず、ソフトバンクグループの一員としてさまざまなITメーカーやベンダーの製品・サービスを仕入れ、販売代理店に卸すIT流通事業を展開している同社の概要を紹介。山瀬氏自身は「SaaSをすべての企業へ」をスローガンに、HR領域を含め100以上のプロダクトについてベンダーフリーの立場から、顧客企業のニーズにマッチした最適な選定と導入・運用支援を行う「Cloud Service Concierge」を担当している。これまでの累計支援数は7000社を超えるとのことだ。
「企業では人材が戦略的な経営リソースとして注目され、労働人口減少が進む中で人材の確保・育成・活用が重要テーマになっています」と同セミナー開催の背景に話を進めた山瀬氏。「ただ、見える化はある程度実施できているのですが、たまったデータを活かす部分には課題感を抱える企業が少なくないと感じています。データを集められるが分析や活用が追いつかない、データの利用が人事部のみにとどまり経営や現場に展開できていない……。こうした相談を多く受けています」と明かした。山瀬氏はセミナーのゴールとしては「人的資本経営の実践における『見える化』にとどまらない『活かす化』への具体的アプローチに関して、実務での活用を通じて人的資本経営を進めるにあたり、次の一手を見つける場になればと考えています」と話した。
その上で、SB C&SではSaaSに精通したスタッフが課題の整理から多彩なベンダーの製品比較、導入検討、実際の運用まで一気通貫で伴走支援を行うことから、「本日の内容を聞いて、自社でも取り組んでみたい、まずは課題の整理から始めたいと感じたら、ぜひ当社のCloud Service Conciergeにご連絡ください」と語り、挨拶を締めた。
なぜ「活かす化」につながらないのか―識者が考えるHR施策成功の要点
続いて、早稲田大学商学部准教授の村瀬俊朗氏が登壇し、『データは手段、人事は戦略 ‐組織を進化させる人事の本質」と題する基調講演を行った。
まず村瀬氏は2020年と2022年に公表された「人材版伊藤レポート」を引き合いに、「経営環境が急激に変化していく中で、人事もこれまでと同じことをするのではなく、より戦略的に取り組んでいくことが求められます」と語った。そしてその観点から、現状を理解して効果的な人事戦略を実施するためにもまずは測定が重要で、実際に人事データを「見える化」する取り組みは充実しているものの、そこを超えて「活かす化」につなげるには課題が多く残っていると指摘した。
「本来は見える化したデータを使って次の打ち手を考えるのが目的のはずなのに、見える化で終わってしまうケースが多い。では、なぜ活用できていないのか。その原因に目を向けると、データが一元管理されていない、社内に異なるシステムが混在している、データ活用の目的が不明瞭、専門知識を持つ人材の不足などが考えられます。そもそも数値化を超えた活用は、単純にテクノロジーを導入・実装するだけでは難しいわけです」(村瀬氏)
そこで考えるべきは、何のための人事施策なのかということだと村瀬氏。「経営に深く入り込む人事戦略がしっかり考えられていること、スキル情報登録を促す仕組みが設計され、かつ運用の結果がきちんと評価されること、そしてその取り組みを牽引する人材が育成・採用され、的確に配置されていることが重要になります」と続けた。
さらに村瀬氏は、経営層のコミットメントや人事部門と経営層のコミュニケーション以上に、現場リーダーと現場メンバーの深い関わりが最重要ポイントになるとし、「見える化を超えるには、経営戦略に沿ったビジョンと人事戦略が主役になり、HRテックはあくまでもその実践を手伝う黒子となるべきです」と語った。
蓄積したデータを「宝」にするタレントマネジメント高度化のヒント
ここから各パートナー企業の講演に入った。最初は、タレントマネジメントシステム「HRBrain」を提供するほか、組織人事コンサルティングなどのサービスも展開する株式会社HRBrainでフィールドセールス/マネージャーを務める田中泰介氏。タイトルは『その人事データ、「宝」になるか「ムダ」になるか。人的資本を活かしきるためのAIデータ戦略』だ。
田中氏は、日本の労働市場の課題を背景に、HRBrainが企業の人事戦略およびその実行にどのような形で向き合っているのか解説した。まず前提として、人事戦略はあくまで経営目標を達成する手段であると強調。その上で、HRBrainは人事戦略の設計からシステムの運用まで一貫してサポートすることで企業のタレントマネジメント高度化を支援していると説明した。
さらに、日本は生成AI活用で欧米や中国に後れを取っているとし、「HRBrainでは既にリリースしたAI関連機能に加えて、今後AIにさらに力を入れ、経営戦略の実現に向けてコンサルティング、システム提供、運用の伴走を一貫してフルサポートで企業様をご支援していきます」と話した。未来に向けたアクションをシステム活用による3つのステップで支援
次に、タレントマネジメントシステム「カオナビ」の開発・提供・サポートを行うカオナビのアライアンス事業本部パートナーサクセスグループ マネージャー 金川義生氏が登壇し、『「データの見える化」だけではない! カオナビだからできる「人材の活かす化」 戦略的人事の実現方法』のタイトルで講演した。
金川氏は、「見える化」は現状把握であるのに対して、「活かす化」は未来に向けたアクションだと定義した。そして、この「活かす化」に活かせるのがカオナビのタレントマネジメントシステムだとし、同システムを用いて「集める」=散在する情報を一元管理する、「見つける」=組織の課題や強みを簡単に発見する、「動かす」=データを基にした具体的なアクションにつなげる、という3つのステップを踏むことで「活かす化」を実現できると話した。さらには同システムの実践的活用事例として、配置・異動の最適化、次世代リーダーの発掘・育成、退職リスクの早期発見という3つの取り組みを示した。最後に金川氏は「データを戦略的に活用することで、受け身の多い人事部門が攻めの姿勢へと変わり、企業の成長を力強く後押しする部門へとレベルアップできます」と力を込めた。
人的資本経営はトライアスロン?
最後の企業講演は、SmartHR パートナービジネス事業本部パートナープロモーション部の山内康弘氏による『人的資本経営 見える化の「その先」へ ~最強のアスリートは、最高のキッチンから生まれる~』だ。山内氏は人的資本経営を、自らの趣味であり総合力が問われるトライアスロンになぞらえてユニークな講演を展開。「現代のトライアスリートは気合や根性ではなく、リアルタイム生成データを徹底活用し、科学的戦略で勝利をつかんでいます」と語り、組織にも同様の考え方が必要として、「見える化」したデータは活かせる鮮度なのかと問いかけた。
そして、優れたレースプランであってもそれを支える栄養戦略がしっかりしていなければ意味がなく、多くの組織では栄養戦略の要であるキッチンで問題が起きていると指摘。そのベースとなる食材(組織における人事データ)の鮮度が重要であり、人事データの三大疾病「ばらばら病」(データの散在)・「ぐちゃぐちゃ病」(入力方法等の不統一)・「まちまち病」(データの取り方の不統一)がボトルネックになっているとした。
その解決策となるのがSmartHRの各種サービスで、いうなればそれは「最高のアスリートを育てるための最高のキッチン」であると、山内氏は表現した。新鮮な食材(=人事データ)を運ぶドローンといえるスマホアプリ、その食材を整理する冷蔵庫たる「従業員データベース」、キレイな盛り付けができる「配置シュミレーション」などが揃っているということだ。そしてさらに「最高のアスリートを育てるためのコーチ」として、SmartHRに組み込まれているAI機能を紹介した。常に正確な人事データを活用できる環境を提供し「活かす化」につなげることができるSmartHR。山内氏はそのメリットを強調し、セッションを締めくくった。
人的資本を最大限に生かすための示唆に富む内容となった、本オンラインセミナー。人事と組織づくりにおいてデータ活用がいかに重要であるかが明らかとなった。ぜひ、本セミナーで提示されたヒントをもとに、成果につながる戦略的人事を推し進めてほしい。
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