AIは今、単なるツールから、人間の代理として自律的に判断・行動する「AIエージェント」へと進化を遂げつつある。AI同士が連携して業務を担い、日常生活のイベントを代行する社会が現実味を帯びるなか、人間とAIの関係性も大きく変わり始めている。本記事では、Google Cloudに特化し、クラウド導入からAIエージェントの活用支援までを手がけるクラウドエース株式会社の取締役CTO・高野遼 氏と、企業のAI活用を長年見つめてきたTECH+編集長・小林行雄が、AIエージェントの可能性と人間の役割について語り合った。

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    (左)クラウドエース株式会社 取締役CTO 高野遼 氏
    (右)TECH+編集長 小林行雄

生成AIの進化とAIエージェントの台頭──この5年で何が変わった?

TECH+ 小林:
近年、生成AIの進化は目覚ましく、ビジネスの現場でもAIエージェントへの関心が高まっています。まずは5年前のAI技術やビジネス活用の状況を振り返って、当時はどのような段階だったと感じますか?

クラウドエース 高野 氏:
ChatGPTが爆発的に注目されたのは2022年末のことですから、5年前は「生成AI」という言葉をまだ誰も知らなかった頃ですね。AIというと機械学習やディープラーニングが注目されていたと思います。

TECH+ 小林:
たしかに当時はディープラーニングでどこまでできるかという話題が中心でした。文章要約はまだ日本語ではうまくいかず、AI自体も実用レイヤーには遠いという話をしていたのですが、それがあれよあれよと変わってきたのがこの5年の印象です。とくに、ここ1年は展示会等でも生成AI活用サービスや、いわゆるAIエージェントと呼ばれるサービスが増えています。クラウドエースさんは、Google Cloudに特化した開発や組織の生成AI活用を推進していますよね。同社の取締役CTOである高野さんは、ここ数年のAIを取り巻く状況をどうみていますか?

クラウドエース 高野 氏:
まず生成AIのビジネス実装については、実用フェーズに入っている企業もあるものの、やはりまだまだ段階を踏んで適用できるかどうかを慎重に見極めている状況だと思います。一方で、AIエージェントを導入してみたいというお客さまは間違いなく増えてきています。

TECH+ 小林:
やはり、AIエージェントは今の技術トレンドですから、避けるという選択肢はないですよね。お客さまはAIエージェントにどのような期待を寄せられているのでしょうか?

クラウドエース 高野 氏:
そうですね。AIエージェントは最近でたものでもあるので、まずは目線合わせからスタートすることが多いです。

TECH+ 小林:
AIエージェントにはどういった期待を寄せられることが多いのでしょうか。

クラウドエース 高野 氏:
実はそこがまだ理解の進んでいないところですね。事前に定義したプロセスに生成AIを組み込む、いわゆる「静的ワークフロー」をAIエージェントと呼んでいるケースが多いように感じます。それでは既存ワークフローに生成AIタスクが入っただけで、単なるRPAの延長であるとも言えますよね。AIエージェントがおもしろいのは、やっぱり「動的ワークフロー」だと思うんです。つまり事前に何らかの定義を行わず、生成AIが自ら動的に作業計画を作成し、実行する。この動的ワークフローを実現できるのが生成AIの強みであり、AIエージェントの本丸と考えているのですが、そこに期待しているという話は現時点でそう多くありません。

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    クラウドエース 高野 氏

AIは「自律」できるか? ──動的ワークフローがもたらす可能性

TECH+ 小林:
そういった自律型のAIエージェントは、まだ市場に認知されていないということなのでしょうか?

クラウドエース 高野 氏:
そうですね、コーディングの文脈に限れば自律型エージェントはもう当たり前のものになっていて、最近の開発現場では自然に使われている状況です。人が何か指示をしたらエージェントが自ら考え、必要なソースコードを見極めて作業計画を立て、実行する……これは完全に自律型のAIエージェントなのですが、まだ開発者しか見ていない姿ですね。コーディング以外の業務に導入したいと思っている人は、その自律型の振る舞いを認識し、動的ワークフローを実現できるという形では見ていない方がほとんどでしょう。そのため、業務の洗い出しとプロセスの事前定義に基づく静的ワークフローというアイデアにたどり着くのも、自然な流れだと思います。

TECH+ 小林:
では、今度は5年後という地点に目線を移すとどうでしょう。AIエージェントによる動的ワークフローは組織内で中心に位置するようになり、現時点の想像を超える広がりが見えるようになっているでしょうか。

クラウドエース 高野 氏:
ChatGPT以降3年間の生成AIの進化を見ると、5年後であれば実現している気がします。2030年には、相当な部分でAIに仕事をしてもらう状況が作られているのではないでしょうか。

TECH+ 小林:
それこそ5年後といわず、最近の進化を見ると3年後くらいには実現しているかもしれませんね。私はよく、AIエージェントが行き着く先は「有能な執事」だと言っています。エージェントに「なんとかしてよ」と言うと、何をしたらいいか自律的に考え、実際にさまざまな手配までしてくれて、お膳立てはできたからあとは決定ボタンを押すだけだよ……と。まさに動的なワークフローですよね。

クラウドエース 高野 氏:
まさしく。動的ワークフローはけっして難しいことではなく、人間が人間に仕事を頼むように、人間がAIエージェントに仕事を頼めるようになるというだけのことです。今でも何かをお願いすると全部自分で考えて動いてくれる人がいますが、それが人間からAIに代わるということだと思うんですよね。そうなると人間に求められるのは、「何をしてほしい」という願望をいかに作り上げられるか、なのではないでしょうか。

TECH+ 小林:
その観点でいうと、人間には言語化能力も重要になってくるのでしょう。AIを使いこなせるのはどういった人材かとさまざまな人に尋ねると、最終的には技術の話ではなく人間性に行き着くんですね。自分のやりたいことを相手に的確に伝えられる能力といいますか。AIに仕事を頼める時代になればなるほど、自分の願望をAIに正しく伝える力が大切になってくるのではないかと思います。

クラウドエース 高野 氏:
そうですね。ただ、そのように人間からAIにはたらきかけるという世界がある一方で、もしかしたらAI側が提示する質問にYES・Noで答えていくと、私たちの内なる欲求に沿ったものが作られていくという世界もあるのではないか、という気もしています。

TECH+ 小林:
コンテキストまでしっかり理解したうえで作ってくれると。

クラウドエース 高野 氏:
そうです。AIがパターンを提示し、そこから選んでいくと最適化されたアウトプットができあがる。AIがすべてお膳立てをしてくれるという状況において、人間の言語化能力は少なくともAIと対話するうえでは問題にならない可能性もありますね。いずれにせよ、社会のドライバーが人間であり続ける以上、AIにも人間とコミュニケーションをとる必要があります。そして、人間は過程はどうあれでAIに対して願望をきちんと示す必要がありますね。

TECH+ 小林:
なるほど。その意味で、最後はやはり人間性という部分に行き着くのですね。いずれにしても5年後、AI活用がどんどん広がっていくと「使いこなせる」「使いこなせない」の格差も広がっていく可能性が出てきます。

クラウドエース 高野 氏:
本当にそうですよね。生成AIを使えば生産性が上がることはわかっているので、まずは使ってみることをおすすめしたいですね。

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    TECH+ 小林

MCPが鍵を握る──AIエージェントと人が協働する「ヒューマン・イン・ザ・ループ」へ

クラウドエース 高野 氏:
私自身は自律型エージェントの可能性を高く評価していて、人間の知的活動のほとんどはAIが行えるようになると思っています。少なくとも日常業務での判断は合理性が求められるわけですから、生成AIのほうが得意に決まっています。

TECH+ 小林:
人間だと、どうしても自分で拾ってくる情報量に限界がありますからね。

クラウドエース 高野 氏:
人間がボトルネックになる仕事は、今後AIに置き換えられていくのは間違いありません。ただ実際に活用していくには、人間とAIそれぞれの責任範囲を決めるなど課題も多くあります。

TECH+ 小林:
つまり、今は過渡期ですね。

クラウドエース 高野 氏:
はい。そしてその過渡期には、人間がAIの自律的活動の中に入り込んで、許可や承認、成果の確認・修正を行う必要があります。これを「ヒューマン・イン・ザ・ループ」と呼びます。ループとは、AIの自律活動のプロセスのことです。これは今後1〜2年で当たり前のものになり、誰もがこの考え方でAIと一緒に仕事をするようになるでしょう。

TECH+ 小林:
なるほど。人間がAIの判断プロセスに関与することで、安心感や制御性も保てるわけですね。

クラウドエース 高野 氏:
そうです。特に、MCP(Model Context Protocol)のようなプロトコルが整備されたことで、AIエージェント同士の連携がより現実的になってきました。MCPは、AIが文脈を共有しながら協調して業務を遂行するための通信プロトコルです。当社ではこのMCPを活用し、AIエージェントの連携基盤を整備することでヒューマン・イン・ザ・ループの実現を支援しています。
そしてその先には「ヒューマン・アウト・オブ・ザ・ループ」の世界があります。これは人が介在せず、AIのループを人間が外側から見ている状態です。いずれはそういった世界に移行していくものと思いますが、第一段階としてヒューマン・イン・ザ・ループが実現しなければ、AIエージェントを業務に本格的に組み込むことはできないと考えています。そこで当社では、これを簡単に実装できる仕組みを用意し、お客さまに提案していこうと考えているんですね。

TECH+ 小林:
すでに提案できるサービスとして用意しているのですか?

クラウドエース 高野 氏:
はい、実はあります。すでに私や開発チームメンバーのPCでは動いていますね。こうした仕組みを作ること自体は難しいことではありません。生成AIとシステムをつなぐMCP、エージェントとエージェントが会話するためのA2A(Agent to Agent)といったプロトコルが出てきたので、あとはエージェントを数多く作れば、エージェント同士が相互強調しながら動き、そこに人間が許可や承認等で介在していくヒューマン・イン・ザ・ループが可能になります。

TECH+ 小林:
将来的な話ではなく、現実にもう準備が整っているということですね。

クラウドエース 高野 氏:
はい。そもそも今なぜAIエージェントが盛り上がりつつあるかといえば、活用の基礎となるプロトコルができたからです。当社としては、MCPを活用したAIエージェントの連携基盤を整備し、次世代の業務の姿を体験できる仕組みを用意しています。

  • (写真)対談中の写真

AIが自律して動く時代に、人間は何をすべきか?

TECH+ 小林:
未来像としては真に自律的なヒューマン・アウト・オブ・ザ・ループのほうへ進んでいくとして、そのとき人間はどう考え、どう振る舞えばいいのかが重要になってくるかもしれませんね。ヒューマン・アウト・オブ・ザ・ループが実現したからこそ、人とAIだけでなく、そのAIを使う「人と人との信頼」があらためてポイントになると感じています。

クラウドエース 高野 氏:
ちょっと哲学的な言い方になってしまいますが、最後は人肌といいますか…。当たり前ですがAIには寿命や死という概念ありません。一方、私たち人間には寿命や死というものがあり、限りある命の時間を使って働いています。AIと共生する時代おいて、「人と人」はそういった大きな意味での、「同じ生物である」という運命共同体的な考え方が重要になるかもしれませんね。また、AIと人間との差別化という意味でいうと、身体性が大事になってくると思います。人間に備わっている物理的なカラダこそが、将来においてはAIとの差別化になりそうな気がしているんですね。

TECH+ 小林:
おっしゃる通り、身体性は一つのキーワードかもしれませんね。

クラウドエース 高野 氏:
そうだと思います。AIのループを人間が外側から見ているヒューマン・アウト・オブ・ザ・ループの世界においては、身体を持つ / 持たないという差を乗り越えて、人間にとって自然なAIのアウトプットが重要になってくるでしょう。AIを信頼できるからこそ、人間が外側からAIのループを見られるわけですから。そうなると、経営者が1人で残りの全てはAIエージェントという会社も想像できます。それが楽しいかどうかは別の問題ですが(笑)。

TECH+ 小林:
AIを活用した際のビジネスの楽しさ、言い換えればAI時代における人間の心の豊かさについては課題になるでしょうね。

クラウドエース 高野 氏:
楽しさや心の豊かさのほかにも、AIが「自分の給料を奪わない」「生活を脅かすことはない」という保障はやはり大事になるでしょう。知的労働だけでなく物理的な労働も、ロボットに自律型AIが搭載され、人間がやらなくてよくなる方向に動いていますからね。

TECH+ 小林:
最近はフィジカルAIなんて言葉も使われ始めました。

クラウドエース 高野 氏:
そうなったとき、多くの人が現在の仕事を失うのは自明です。そのようなAIの浸透の仕方はサステナブルではないので、根本的な仕組みが必要になるはずです。

TECH+ 小林:
それは5年後を考えるうえでキーになる話だと思います。変化があまりにも急速に進み、多くの人が生活の基盤を失うとなれば、大変な事態を迎えるでしょう。

クラウドエース 高野 氏:
だからこそ、先ほどもお伝えしたようにサステナブルな仕組みを考えることが必要ですよね。社会全体の生産性で考えれば、合理性と効率を求められる仕事はAIに置き換わっていくのは自明ですから。

そのかわり、人は合理性という枠組みから外れていくと思います。その人自身の体験や経験に基づく、ある意味において非合理的な思考や心の動きにこそ価値があるという時代にシフトしていきますよね。だからこそ、私たちクラウドエースはお客様の心を動かす体験——いわゆる「感動」を提供できるような仕事をしていきたいと思っているんです。

TECH+ 小林:
なるほど、AI時代だからこその「感動」は面白いですね。ビジネス面で言うと、クラウドエースさんは活用を望む個人や企業をはじめとした組織とAIをつなぎ、さらにシステムや他のエージェントとの連携も含めた支援体制を整えているということですから、感動を提供できるAI推進のパートナーとしてますます市場における価値が高まっていきそうですね。

クラウドエース 高野 氏:
ありがとうございます。今は、まさに私たちの頑張りどきですね。AIエージェントの可能性をいち早く追求し、お客様がその恩恵を最大限に享受できるよう、技術的な支援はもちろん、AIと共生する未来のビジネスをデザインするお手伝いをしていきたいと考えています。そして、効率化の先にある人間ならではの「感動」を創り出せたら最高ですね。

  • (写真)集合写真

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