生成AIの急速な普及に伴い、企業はセキュリティとコンプライアンスを確保しながらAI技術を活用する方法を模索している。そのような中でいま起こっているのが、クラウドからオンプレミスへの回帰だ。これに伴い企業の注目は再びサーバーへと向かっており、日本ヒューレット・パッカードもまた、「HPE ProLiant」シリーズの訴求を進めている。
日本ヒューレット・パッカードは、2015年にPCやプリンティング事業が分社化され、エンタープライズ事業を継承した。米国においてエンタープライズ事業を継承した「ヒューレット・パッカード エンタープライズ」(以下、HPE)をブランド名として掲げ、2025年7月にはジュニパーネットワークスを傘下とし、現在はAIを用いたサーバー機器、法人向けのストレージ、ネットワーク機器を展開している。
本稿では、日本ヒューレット・パッカードのAIサーバープリセールスを担当する古賀政純氏、北本貴宏氏に、オンプレミス環境での生成AI活用についてお話を伺った。
身近になった生成AIはビジネスをどう変えているか
大量のデータを学習したAIがテキスト、画像、音声、動画などを作り出すことができる生成AI。この進化は、それまで企業が主体となって使用していたAIをより身近なものとし、AIは個人の生活の中でも受け入れられつつある。
「私が1990年代に携わっていたAIは、従来型のAI、トラディショナルAIと呼ばれるもので、特定の作業に特化した形でしか持てず、性能も非常に限定的でした。近年はさまざまなものを新たに創造する生成AIが誕生し、実生活の中でみなさんが使えるレベルになってきています。AIはテクノロジーの進化とともに、非常に民主化されたと言えるでしょう」(古賀氏)
わかりやすいのはチャットボットの進化だ。従来のチャットボットは決められた質問に決められた答えを返すだけだったが、現在では自然な対話が可能となり、用意された回答にとどまらず、人間らしい応答を生成できるようになった。
また、翻訳も生成AIによって進化した。これはグローバルな展開を行っている企業にとって特に重要で、多言語でシームレスに会話をしたり、議事録を取ったりすることが可能になり、AIの普及に大きな役割を果たした。
さらに昨今は、人間の代理として行動することも可能となっている。これは「AIエージェント」と呼ばれており、例えば人間の代わりにお店を予約したりすることもできる。
企業は当然、こういった生成AIを効率化のためにさまざまな業務で応用しようと考えている。だが、生成AIをより活用しようとすると、大きな壁にぶつかってしまう。現在の生成AIがクラウド上で動いており、重要な意思決定や個人情報が絡む業務ではセキュリティやコンプライアンスの問題が発生するからだ。
この問題を解決するため、2025年現在、生成AIをオンプレミスで導入しようと考える動きが増加している。
生成AIでオンプレミスが求められるユースケース
北本氏は、セキュリティの観点から機微な情報を扱う場合の代表的なユースケースを3点挙げる。
1つ目は、製造業。製造業では、ユーザーマニュアルを効率よく検索したり、マニュアルを簡単に要約したいという要求がある。これまではいわゆる属人化に頼る傾向にあり、ベテランに質問すればすぐに答えが返ってきていたが、人手不足の問題からその知識が引き継がれておらず、ベテランが退職すると代わりを担える人がいないという問題があった。マニュアルには絶対に外部に出せない数多くの情報が含まれるため、機密情報という“企業の宝”を守るためにオンプレミスでの情報保持が求められている。
2つ目は、コールセンターの窓口業務。顧客が商品を購入し、不具合が発生した際、一般的にはコールセンターに連絡し、オペレーターが対応する。この業務を効率化・省力化し、顧客に最適な応答をするために生成AIが用いられている。また、海外の方とのコミュニケーションでリアルタイム翻訳をしたり、それをテキスト化して議事録に残すといったことも行われている。顧客の個人情報が絡むため、こちらもオンプレミス化が望まれている。
3つ目は、プログラムのソースコードを自動的に作成するコード生成だ。例えば、ITシステム構築のための設定ファイルなどを自動的に生成し、IT部門の手間を減らすことができる。またアプリケーション開発においては「こんなアプリを作りたい」という要望に対して、生成AIがプログラムを作成してくれる。開発の現場ではすでに生成AIが大いに活用されており、北本氏自身も「もう生成AIがないとあり得ないというぐらい、効率化される」と話す。
この他にもさまざまな分野で生成AIが使われている。例えば、製造業においては新旧の図面を比較させて相違点を発見させたり、自治体においては情報共有・検索をスムーズに行えるようチャットボットで効率化したり、法律事務所では弁護士が契約書や判例の手書き文字を読み取らせ検索可能にしたりと、その活用は業種・職種を問わない。生成AIは、これからの未来に欠かせない存在になりつつある一方で、セキュリティの観点からオンプレミスである重要性も増しているのだ。
「オンプレミスの生成AIサーバー構成において、セキュリティを重視されるお客さまからは『ProLiantサーバーのセキュリティはどの程度担保されているか』というご質問をよくいただきます。HPEは米国でも国防関係の仕事をしており、セキュリティ面で非常に強みがあります。サーバー内に、暗号化機能や量子暗号対応なども含めたセキュリティ機能を組み込んでおり、ハードウェア面からセキュリティを担保しているのが特長です」(古賀氏)
生成AIシステム全体の性能を考えた「HPE ProLiant」シリーズ
では、生成AIをオンプレミスで利用するためにはどのようなハードウェアが求められるのだろうか。古賀氏は「GPUの性能だけでは生成AIシステム全体の速度は向上しません」と説く。
「やはり生成AIを動かすためにはサーバー全体の性能というものを高める必要があるのです。GPUはもちろん一番大切なもののひとつではあるのですが、同時に高性能なCPUも非常に重要なんですね。メニーコア動作周波数、つまりコアがたくさんあるスピードの速いCPUを使うことがサーバー全体の性能を大きく左右します。またCPUと協調してアプリケーションを動かすメモリも重要です。容量もですが、CPUとメモリ間の通信速度が高速であること、つまりメモリ帯域が広帯域であることも求められます」(古賀氏)
これらの条件を満たすために、HPEは「HPE ProLiant」シリーズの基盤CPUとして、インテル® Xeon® プロセッサーを採用。インテルと協調して製品展開を行っている。HPEとインテルの間には旧コンパック・コンピュータ・コーポレーション時代からの長い関係があり、両社の技術・生産・情報・サポート面における協力体制は非常に強固だ。
「例えばXeonプロセッサーにはPシリーズという製品があります。このPシリーズは非常に性能が高く、AIの学習処理のような演算負荷の高い用途を目的としたお客さまにご採用いただいています。また、Eシリーズはメニーコアでより一般的なサーバー用途に向き、電力効率や密度を重視するサービスプロバイダーの方々を中心に選択されています。高性能なPコアと汎用的なEコアの両面で、幅広いお客様に対応できる製品を取り揃えています。同時にお客さまに対するサポートでは、インテルさまと協調して情報を提供することができます」(北本氏)
「HPE ProLiant」は、とくにAIやLLM(大規模言語モデル)向けのポートフォリオとして、インテル® Xeon® プロセッサーを搭載したサーバーを提供している。また、AIサービスを提供するパッケージシステム、いわゆるAIサービスのプライベートクラウドと呼ばれるシステムにおいてもインテル® Xeon® プロセッサーをベースにした製品を展開。
もちろん、小型サーバーにも積極的にインテルのCPUを搭載しており、タワー型、ラックマウント型、小型の静音サーバー、エッジコンピューティングを見据えたサーバーまで、幅広いラインナップを実現している。これは「HPE ProLiant」シリーズの大きな特徴と言えるだろう。
さらにSGIやCrayを買収した経緯から、AI自体を開発するスーパーコンピューターも世界的に展開しており、この分野でもインテル® Xeon® プロセッサーを搭載した製品を提供している。
「HPE ProLiant」が実現した最新の生成AI活用事例
「HPE ProLiant」は、すでに多くの生成AI活用を実現しているという。古賀氏は海外事例について語る。
「最近、米国では“汎用人工知能(AGI)”と呼ばれるものが注目されています。家庭内で家事・炊事・洗濯を行うような汎用的なロボットを作ろうという機運が高まっているのです」(古賀氏)
こういったロボットは、テキスト、画像、音声や会話を理解するとともに、目の前にあるものを掴む、スイッチを押す、明かりをつけるなど、人間のように幅広い対応ができるマルチモーダルAIを備えていなければならない。そして、こういったマルチモーダル型のAIロボットを動かすには、非常に強力なコンピューティングリソースが求められる。
「我々は、そういったAIロボットを作っているベンチャー企業に、AI開発用として『HPE Crayスーパーコンピューター』を提案しました。さらに、作ったAIのテストをしたり、実際に使ってみたり、AIの動作を可視化するための環境として『HP ProLiant』サーバーを展開し、お客様にご利用いただいています」(北本氏)
ISVパートナーとの協業がもたらすユーザーへのメリット
HPEはサーバー、ストレージ、ネットワーク機器を扱うインフラベンダーだ。AIに関する顧客の要望をより満たすために、独立系ソフトウェアベンダー、つまりISVパートナーとの協業を行っている。
具体的には、生成AIを扱うさまざまなベンダー、例えばチャットボットに強い企業、パッケージ製品に強い企業、生成AIのコンサルティングを行う企業などとの協力体制の構築だ。また、手書き文書のOCR(光学文字認識)に強いベンダー、文字起こしや議事録作成などの機微なデータを扱う企業とも協業している。
また生成AI以外にも、例えば工場での異常検知のための画像認識AIを扱う企業とも協力体制を組み、顧客に対して提案・展開を行っているという。
「HPEの本社に検証環境を用意しています。ISVパートナーのみなさまが自社のソフトウェアをサーバー上で動かし、お客さまに提案する前には検証が必要です。そんなとき、すぐに当社の検証環境をお使いいただけるよう、サーバー製品を提供しています」(古賀氏)
生成AIベンダーはソフト開発やAIロジックは得意だが、ハードウェアやミドルウェアの実装といったシステムインテグレーションまでは手が回らないことが多い。また、クラウドでの実装は経験があっても、オンプレミスで課題が発生することもある。だからこそハードウェアベンダーの知見が求められ、協業の意味が生まれている。
「ISVパートナーの方々と密な情報交換を行っているため、お客様にトータルな形で最適なソリューションをご提案できます。どういった機種が必要か、どういった規模感が適切かといった質問に対して、性能面の相談も含めた情報を素早く提供できること、そしてハードウェアとソフトウェア両面でセキュリティの考慮を行えることが、我々とISVパートナーさまとの協調活動のメリットだと考えています」(北本氏)
HPEというハードウェアベンダーと、生成AIベンダーがタッグを組むことで、サーバーハードウェアとAIが確実に動作するパッケージを提案できる。これはユーザーにとっては大きな安心材料になるだろう。
HPEが整備を進めるAIイノベーションハブ
生成AIの活用はこれから加速度的に進んでいき、それにともないオンプレミスの導入も増加していくだろう。そんな未来に向けて、HPEはどのような構想を抱いているのだろうか。
「我々としては、法人のお客さまがオンプレミス環境で使われるソリューションを、単にハードウェアだけを提供して終わりにするのではなく、さまざまなお客様のニーズに即した形で展開していきたいと考えています。そこでいま大島本社の施設内で、さまざまなISVパートナーの方々と一緒にデモンストレーションできる環境を『AIイノベーションハブ』(通称:AI商店街)という形で整備しています」(北本氏)
HPEが整備している「AIイノベーションハブ(AI商店街)」は、さまざまなAIソリューションを可視化し、比較できるようにしたものだ。生成AIソリューションに関するコンテンツやデモビデオの提供、チャットボットを操作し設定変更も行えるライブデモなど、生成AIを実際に体験できる環境を用意している。これはHPEのみならず、販売パートナーが顧客を招いて利用することも可能だという。
AIというと「何から手をつけたらいいのかわからない」「どういった機材を揃えればいいのかわからない」「自分たちにメリットがあるのかもわからない」と思われる方も多いだろう。そんなときこそ、ハードウェアに対する深い知見と、パートナーシップを通じたソフトウェアに関する情報を持つHPEが力になってくれるかもしれない。
「HPEは、さまざまな事例の情報や経験を持っています。インテルさま、ISVパートナーさまとも協力体制にあり、ハードウェアはもちろん、AI活用全般において包括的なサポートができる環境を整えています。オンプレミスでのセキュリティに関する懸念など、どんなことでも構いませんので、ぜひHPEにお声がけいただければ幸いです」(古賀氏)
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