去る2025年8月26日から29日にかけて、ウェビナー形式のイベント「TECH+ フォーラム データ活用 EXPO 2025 Aug. データを実装し、ビジネスを駆動させる時代」が開催された(主催:マイナビ TECH+セミナー運営事務局)。企業が直面するサイロ化や人材不足、文化醸成の課題を整理し、データドリブン経営を実現するための実践的アプローチを提示することを目的とした本イベントには、多数の専門家や先進企業が登壇し、具体的な知見や事例を共有した。

2日目のテーマは「データを『実装』する」。その中で行われたウイングアーク1st事業戦略本部 小林大悟氏のセッション「生成AIが変える! 次世代データ活用の新常識 〜業務フロー×データフローの融合がはじまる〜」では、BIダッシュボード「MotionBoard」の最新動向が紹介された。業務アプリを構築できる独自性と、生成AIとの連携によって進化する新バージョン「MotionBoard」の具体像にも迫った同氏のセッション内容をリポートする。

  • (画像)ウイングアーク1st株式会社 事業戦略本部 小林 大悟 氏

    ウイングアーク1st株式会社 事業戦略本部 小林 大悟 氏

多様なデータを直感的に可視化・分析し、入力も可能な「MotionBoard」

ウイングアーク1stは、データ活用ソリューションの領域で高い評価を得ており、「日経コンピュータ 顧客満足度調査」ではデータ分析・利活用支援ソフト/サービス部門において4年連続で1位を獲得している。その代表的な製品の1つが BIダッシュボード「MotionBoard」 だ。その大きな特長の1つは、プログラミング不要で多様なデータを見える化・分析できる点にある。

ウイングアーク1st事業戦略本部の小林大悟氏は、「MotionBoardを一言で言えば、さまざまなデータをノンプログラミングで見える化、分析できるツールです」と説明すると、利用できるデータの例として、SFAの商談管理データや基幹システムのデータ、さらには製造業の生産現場に設置されたセンサーやPLC等から取得されるIoTデータなどを挙げ、「数値データだけでなく、映像データも扱える点が特長です」と強調した。

  • (図版)MotionBoard について

さらに、MotionBoardはダッシュボードによる可視化や自動レポーティングに加え、アラート通知による異常検知も可能だ。

「先週の売上を自動でレポーティングしたり、設備に異常があれば即座にアラートを送ったりするような使い方もできます」(小林氏)

加えて、小林氏は入力機能の存在を「最大の特長」と位置付けた。

「一般的に可視化・分析ツールはアウトプット中心ですが、MotionBoardは入力も可能です」と述べると、製造現場における紙中心の業務などまだまだデジタル化が進んでいない領域においても、現場から直接データを取り込み、デジタル化による業務効率化とデータ活用を同時に実現できる点を示した。

現場データを取り込み、業務を進化させる「業務アプリなBI」

続いて小林氏は、MotionBoardの利用シーンについて「データがあれば、いろんなことができます」と切り出し、代表的な例として売上や費用、利益などを俯瞰できる経営ダッシュボードや、製造現場における設備異常の監視を挙げた。

こうした用途は一般的なBIツールとしての活用だが、MotionBoardには「業務アプリなBI」という独自のコンセプトがあると説明した同氏は、その意図について「分析の前に必要なのはデータそのものですが、実際の現場はまだアナログ業務が多い。そこをアプリケーション化することで業務をデジタル化し効率化しながらデータを収集できるのが特長です」と力説した。

アプリを通じて現場データが収集されれば、既存システムのデータと掛け合わせて可視化・分析ができるようになる。

「現場のデータがなければ、システムの数値を分析しても『なぜそうなったのか』は分からず、結局現場にヒアリングに行くことになります。だからこそ、いかに現場のデータを扱えるかがコンセプトになってくるのです」と小林氏は強調した。

さらに機能面では、通常のBIツールがグラフによる表現にとどまるのに対し、MotionBoardは3D表示や映像の取り込みまで可能とし、加えてリアルタイム性でも差別化を図っている。

「多くのBIツールは日に数回の更新ですが、私たちは生産現場等でも使われることを前提に、秒単位で自動更新できる仕組みを持っています」と小林氏は述べ、異常検知やアラート発信の即時性を強調した。

また、入力機能を備えている点も他のBIツールと一線を画するMotionBoardだが、小林氏は「データの可視化や分析だけでなく、入力やアクションも可能です。HTTPアクセスや変数書き込みといった、プログラミング的な概念もMotionBoard上で扱えます」と説明し、可視化・分析にとどまらない業務アプリの構築が可能であることを示した。

  • (図版)普通のBIにはないMotionBoardの機能

例えば商談管理のダッシュボードでは、案件の進捗やギャップを確認するだけでなく、案件の確度を直接書き込み、即座に反映・集計できる。すなわち「業務を行うツール」と「結果を分析するツール」を一体化できる点が、MotionBoardの最大の特長となっている。

入力機能で経営管理を効率化──日本トランスオーシャン航空の活用事例

セッション中盤では、実際のMotionBoardの導入事例として日本トランスオーシャン航空(JALグループ)の取り組みが紹介された。同社は沖縄を拠点に運航する航空会社で、当初は経営ダッシュボードを構築する目的でMotionBoardを導入。これによって売上や費用、利益を即座に可視化できるようになったが、グループ内から新たな要請があったという。「予算や計画見込みと実績に差が生じた場合は、すべての理由を記載しなさい」という指示だった。

当初は各担当者がExcelに理由を入力し、それを経理部門が集約して情報コードと突き合わせ、MotionBoardに取り込んでいた。しかし、この作業には多大な工数がかかっていたという。

小林氏は、「そのとき『MotionBoardには入力機能があるのでは』と気づいた方がいて、それなら直接MotionBoardに入力してもらえばいいのでは、となったのです。その結果として、経理部門の負担は大幅に軽減され、さらに経営層も全員の入力データを即座にダッシュボードで確認できるようになりました」と説明した。

例えば、ある便で予算との差が発生した場合、経営者は翌日にはその原因を明細レベルでドリルダウンして確認できる。

「那覇発羽田行きの便が台風の影響で関空に振り替えとなった、だからこの差が生まれた、といった理由を現場から入力すれば、数値の裏側にある状況を経営者が把握できます。AIが自動で判定するのは難しい領域ですが、現場の声を直接データ化することで、迅速かつ納得感のある意思決定が可能になるのです」(小林氏)

こうした仕組みは現場の効率化に資するだけでなく、経営層にとっても「数値の奥にあるストーリー」を把握できる手段となる。

小林氏は「まさに『業務アプリなBI』の実例です」と強調すると、日本トランスオーシャン航空ではその後、社内教育の申し込みやキャビンアテンダントのサービス品質評価といった業務にも活用が広がっていると紹介した。

  • (図版)日本トランスオーシャン航空様の導入事例

次世代版「MotionBoard」が示す新たな方向性

小林氏は「業務アプリなBI」というコンセプトをさらに推し進めるべく、すでにプレビュー版が公開されており、今年中に予定されているMotionBoardのメジャーバージョンアップについて説明した。

新バージョンには大きく4つの特長がある。

まず1つ目はUI/UXの刷新 だ。小林氏は「よりモダナイズし、直感的に使いやすい環境にしました」と説明した。

2つ目は業務アプリを構築するためのビジネスロジックを、より簡単かつ柔軟に設計できる「フロー」機能の搭載 である。

さらに3つ目の特長として、生成AIを組み込んだ新機能 が挙げられた。

小林氏は「フローの中から生成AIを呼び出し、データから新たなインサイトを得たり、チャートの状態を自然言語で変更したりすることが可能になります」と強調した。

そして4つ目は、既存ユーザーへの配慮 だ。

「新しいMotionBoardでも、過去のバージョンとの互換性を保って動かせるモードを用意しています」と小林氏は強調し、既存環境を維持しつつ移行できる安心感を示した。

デモで示された「フロー」と生成AI活用の可能性

新バージョン「MotionBoard」の特長を紹介する中で、小林氏はプレビュー版を用いたデモを行った。

まずはUI/UXの刷新により、チャートを簡単に作成してダッシュボードに配置できる点を示し、利用者が直感的に操作できる環境が整備されたことを強調した。

続いて取り上げたのが、ビジネスロジックを構築し業務アプリを支える「フロー」機能 である。

  • 新機能である「フロー」について

小林氏は、従来は「ボタンアクション」を組み合わせる必要があった中・上級者向けの複雑な処理を、視覚的に構築できる仕組みとしてフローを紹介。異常検知を契機に当該画像をチャットで通知したり、システムデータと人が入力した文章を組み合わせて自動でレポート化したり、在庫不足を検知して通知や発注処理につなげたりする、といったシナリオを示した。

「いわゆるビジュアルプログラミングの形で、誰でも柔軟に業務アプリを作れるのが特長です」と小林氏は述べ、業務効率化の裾野が広がることを印象づけた。

さらに小林氏は、フローから呼び出せる新機能である生成AIの活用デモも披露した。1つはチャート分析の高度化であり、データから自動的にインサイトを抽出したり、自然言語による指示でグラフの表現を変更できる様子を示した。

  • (図版)自由分析ダッシュボードのデモ画像

もう1つは画像認識の活用例で、棚に並ぶ部品の欠品リスクを生成AIがラベル文字を読み取って把握するというものだ。精度面では専用ツールに劣る場合もあるが、「一日に一度メーターを読み取る」といった用途では十分に実用的であり、軽量かつ柔軟に画像を認識しデータ化できる利点がある。

  • (図版)画像認識のデモ画像

小林氏は「生成AIを組み込むことで、グラフや画像といった多様な情報から容易にインサイトを得られるようになり、現場データの活用が飛躍的に進めやすくなります」と強調。従来は手つかずだった領域まで取り込める可能性を示し、MotionBoardが提供する新しい価値を明確に示した。

「業務アプリなBI」のさらなる進化へ

セッションの最後に小林氏は、MotionBoardの特長を改めて整理した。

同氏は「これまでお話ししたようにMotionBoardは『業務アプリなBI』と呼んでおり、単にデータを分析して意思決定を支援するだけでなく、業務そのものを効率化できる点が大きな特長です」と述べ、従来のBIの枠を超えた存在であることを強調した。

業務アプリを構築できるBIツールとしての位置付けが、他製品にはないMotionBoardの独自性を形づくっているわけだ。

さらに、今年末にリリース予定の新バージョンにも言及した。

「次世代版では業務アプリなBIの世界をさらに進化させます。その中心となるのが、柔軟にビジネスロジックを構築できる『フロー』機能と、データの自然言語分析や画像認識を可能にする生成AIです。これにより、現場業務にデータ活用を組み込みやすくするための強力な仕組みが整うのです」(小林氏)

現在、プレビュー版は無償提供 されており、小林氏は「興味を持たれた方はぜひお試しください」と呼びかけ、講演を締めくくった。

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