生成AIの進化が加速する中、企業の「働き方」と「コミュニケーション」は今まさに大きな転換点を迎えている。2025年7月17日、東京ポートシティ竹芝 ポートホールにて開催された「Zoom Experience Day Summer 2025」では、「次の世界へ。新しいカタチでつながる市民、顧客、従業員」をテーマに、特別ゲストらによる講演とともに注目企業による実践事例が多数紹介された。本記事では、ビジネスの成長と変革を促すインスピレーションを与えたキーノートを紹介するほか、現場起点の業務改革から顧客接点の強化、社会課題解決型のサービス創出をめざすLIXILと、電話営業の大規模改革に挑む光通信、それぞれの取り組みから見えてきた「AIとZoomで進化する現場」のリアルに迫る。

Zoom Experience Day Summer 2025
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次世代のつながりを創る―ZoomとAIによる社会変革

キーノートには、ZVC JAPAN 株式会社 代表取締役会長兼社長 下垣 典弘氏、大分県知事の佐藤 樹一郎氏、株式会社TGP 代表取締役でプロゴルファーの東尾 理子氏という2名の特別ゲストが登壇し、大きな注目を集めた。

まずはじめに登壇した下垣氏は、AIとZoomの活用によって実現できる、新しいカタチでつながる市民、顧客、従業員の世界を語った。

Zoomは、2018年の設立以来、リモートコミュニケーション分野でのリーダーとして、常に革新を続けてきた。現在は、AIをZoom Workplaceのプラットフォーム全体に統合し、使い易く、より効率的で質の高いサービスを提供している。下垣氏は企業で導入、活用が加速していクラウドPBXの「Zoom Phone」を例に挙げ、AIの活用によって実現した機能として、会議の文字起こしや要約、営業支援ツール「Zoom Revenue Accelerator」などを紹介。AI時代のつながりを強化するためのツールが利用可能となり、業務の効率化を後押ししていることを強調した。さらにエージェント型AIは顧客対応や教育相談などを担い、利用ユーザーが本質的な業務に集中できる環境を構築できるという。

Zoomが推進するAIは、人と人のつながりを強化し、仕事の効率性とコミュニケーションの新しい価値を生み出し、現代の働き方を大きく変革している。

  • (写真)ZVC JAPAN 株式会社 代表取締役会長兼社長 下垣 典弘氏

    ZVC JAPAN 株式会社 代表取締役会長兼社長 下垣 典弘氏

続いて、下垣氏に紹介されて登壇したのが、大分県知事 佐藤 樹一郎氏だ。

大分県は、県立高校の入試を県内18市町村で一元化し、地域間における教育格差の是正を図る取り組みを進めているという。具体的には、遠隔教育配信センターを設置し、数学や英語の習熟度別授業を4校で開始。この授業は同時双方向性を持ち、生徒が異なる高校間でディスカッションすることを可能にするとともに、教員が生徒の解答状況をリアルタイムで把握できる仕組みを採用している。さらには、スタンフォード大学や立命館アジア太平洋大学との連携によるグローバル教育も推進中。この取り組みにより、国際的な視点を持つ教育機会を提供し、生徒の視野を広げることを目指している。大分県ではこれらの取り組みにZoom RoomsやZoom Meetingsを活用しており、スムーズなコミュニケーションを実現できた点を高く評価しているという。

現在、大分県ではAIを活用した授業のアーカイブ化や復習支援を導入している。2025年までに遠隔配信先を県内全普通科高校17校へ拡大する計画で、学習効率のさらなる向上が期待されている。また教員配置や予算措置といった課題についても文部科学省のDX推進政策との連携を通じて改善を図る予定だ。

将来の大分にとっても、また日本にとっても何よりも大事なのが教育であるといい、佐藤大分県知事はセッションを締めくくった。

  • (写真)大分県知事 佐藤 樹一郎氏

    大分県知事 佐藤 樹一郎氏

東尾 理子氏からは、包括的性教育の推進活動においてZoomを活用している事例が紹介された。

日本は不妊治療件数が多い一方で生殖に関する知識や理解度が低く、性教育の遅れが課題となっている。そこで東尾氏が代表を務める株式会社TGPでは、「Four for Oneプロジェクト」と題し、企業と連携して生理用品の寄付と月経教育を全国の学校に届ける活動を展開しているという。

その活動のなかで大きな役割を果たしているのがZoom Meetingsだ。同社ではZoom Meetingsを活用し、地方の学校や保護者も参加可能な遠隔授業を実施。親子で同時に学べる環境を作ることで、ともすると家庭内では話しにくい性に関するコミュニケーションの促進と知識の共有を図っているという。

正しい知識を適切なタイミングで伝えることが、未来の選択肢を広げる鍵であると、東尾氏は力強く語った。

  • (写真)株式会社TGP 代表取締役 東尾 理子氏

    株式会社TGP 代表取締役 東尾 理子氏

EX&CXを向上し社会価値へとつなげるDXを実践!LIXILが描く、AI時代のサステナブル経営

社会課題に応える「LIXIL流」の成長戦略

「LIXIL流EXとCXを向上させるDX」と題して、Zoomや生成AIを活用した多様な取り組みを紹介したのは、LIXIL 常務役員 CX部門リーダー 安井 卓氏だ。

  • (写真)LIXIL 常務役員 CX部門リーダー 安井 卓氏

    LIXIL 常務役員 CX部門リーダー 安井 卓氏

世界150カ国以上に事業を展開するLIXILは、「誰もが願う豊かで快適な住まいの実現」を掲げ、ドアや窓、水回り製品などをグローバルに提供している。同社は企業文化の統一に際し、「正しいことをする」「敬意を持って働く」「実践して学ぶ」の3つの行動指針「LIXIL BEHAVIORS」を軸に据え、従業員の行動ベースで文化を育んでいるという。

安井氏は、同社が社会課題の解決と事業成長を両立させる「インパクト戦略」にも注力していることを強調した。たとえば、発展途上国向けの簡易トイレ「SATO」は、低価格ながらも衛生環境の改善に貢献する製品として、サステナブルな事業モデルを築いている。また、アルミのリサイクルによってCO₂排出量を80%削減する素材「PremiAL(プレミアル)」や、介護用途でも高評価を得ている泡シャワー製品「KINUAMI(キヌアミ)」など、イノベーションを通じた社会的価値の創出が進んでいる。

「私たちの事業そのものが、世の中に対してインパクトを与える存在でなければ意味がありません」と安井氏は力説した。

こうした取り組みが評価され、同社は2023年に「DXグランプリ」を受賞、翌2024年には「DXプラチナ企業2025-2027」にも選定された。だが、同社のDXは単なる技術導入にとどまらない。

安井氏は「私たちが目指しているのは、デジタルの力でEX(従業員体験)とCX(顧客体験)を向上させることです。そこに寄与しないのであれば、単なるデジタル化には意味がないと考えています」と強調した。

背景には、LIXILが5社統合によって誕生し、多様な企業文化を内包しているという組織の事情、さらには国内市場の縮小という構造的課題がある。住宅着工件数はこの30年で半減し、新築市場の先細りは避けられない。こうした状況に対応するため、同社はリフォーム領域への注力や新規サービス開発など、従来の延長線上にはない変革を進めている。

この変革を支えるのが、Zoomをはじめとした先進的なデジタルツールだ。2017年に安井氏がLIXILへ参画した際、同社はビデオ会議ツールの刷新を検討していたという。10種類以上のユースケースでツールを比較検証した結果、「操作性の良さ」でZoom Meetingsが圧倒的な評価を得た。

「ネットワークが不安定な海外拠点との会議でも、Zoom Meetingsなら安定して使えたんです。これは本当に大きなインパクトでした」(安井氏)

Zoom Meetingsと並行して導入した社内SNS「Workplace」が、部署間のサイロ化を打破し、社内コミュニケーションの活性化に寄与した。しかしその後、サービス終了がアナウンスされた。そこでLIXILではZoomが買収した従業員エンゲージメントを高めるプラットフォームである「Workvivo」への移行を決定。複数のツールを比較した上で「もっともスムーズに移行できる」と判断し、2025年6月には無事ローンチを果たしている。

「昨年5月にWorkplace終了の話を聞いたときはどうなるかと思いましたが、Workvivoへの移行がうまくいって、ホッとしています」と安井氏は語る。

もうひとつ特筆すべきは、2019年に導入したAkamaiのZTNAソリューション「EAA(Enterprise Application Access)」である。コロナ禍に突入した際、VPNの枠を超えて2万5000人規模の在宅勤務環境を迅速に構築できたのは、このゼロトラスト基盤のおかげだった。さらにショールーム業務をオンライン化したことで、顧客と従業員双方の利便性が向上。接客品質の維持には、NPSなどのデータをリアルタイムで可視化する「Qualtrics」が効果を発揮し、継続的な改善にもつながっている。

加えて2022年には、社内ネットワークを廃止した新オフィスへの移転も実施。どこからでも同じ業務環境を実現することで、業務効率とコストの最適化を両立した。また「かんたんプラン選び」や「LIXIL Toilet Cloud」といった新サービスの開発にも注力し、データを起点に社会課題とビジネスの両立を図っている。

安井氏は、「デジタルの力を使えば、これまでにない形でサービスを展開できます。今、すごくいい流れができてきていると感じています」と語った。

生成AIを活用した「次の進化」が始まっている

LIXILが次なる変革の鍵として注目しているのが、生成AIの活用である。2023年以降、社内向けツールの開発や業務適用を加速しており、Zoom Meetingsに搭載されたAIコンパニオンの活用もその一例だ。

「ミーティングの要約があることで、後からの確認が圧倒的に楽になりました」と安井氏は実感を語る。

業務の現場にもAIは着実に入り込んでいる。代表例が、2023年に導入されたコールセンターでの自動要約だ。従来は対応後に数分を要していた記録作業(アフターコールワーク)をAIで自動化。オペレーターはより多くの顧客対応に集中できるようになった。

「面倒な作業から解放され、お客様との対話に注力できる。オペレーターにとっても非常に大きな価値だと感じています」(安井氏)

さらに営業部門でもAI活用が進む。音声で商談内容を記録・入力できる「AI音声入力」、訪問先とその意図まで提案する「Schedule AI」、通話内容の要約を自動転送する「Call Copilot」といったツール群が、従業員の生産性を高めている。

LIXILが目指すAI活用は業務補助にとどまらない。将来的には「顧客・従業員へのアドバイザー」としての進化も期待されている。たとえばコールセンターでは、製品の使用年数や応対履歴に基づき、リフォーム提案のタイミングや話すべき内容をリアルタイムに提示する取り組みが始まっているという。

「まだ実験段階ですが、経験の浅いオペレーターには大きな支えになっています。ハイパフォーマーにも役立つよう、さらに精度を高めていきたいです」と安井氏は意気込みを示した。

生成AIによる画像活用にも着手している。リフォーム前の現場写真と提案モデルを合成し、施工後の完成イメージを自動生成する仕組みだ。これにより顧客とのイメージ共有がスムーズになり、提案力の強化と業務効率化の両立が可能になる。

「今後は「どこにAIを導入するか」ではなく、「すべての業務にどうAIを組み込むか」を考えていくべきです。ZoomさんはAIを積極的に取り入れているので、私たちもコミュニケーション領域では迷わず活用していけます。そのぶん、より本業の変革に注力していきたいですね」(安井氏)

生産性150%アップをめざす光通信のZoom Phone活用術とは

2万人の営業力を支える武器に─光通信が見据える電話活用の進化形

光通信は、約2万人に及ぶセールススタッフ(パートナーを含む)が、水や電力、ガスといった幅広い商品を電話で販売し、年間約7000億円の売上を上げている。「Zoom Phone × 営業で生産性150%へ」に登壇した代表取締役社長の和田 英明氏は、本セッションにおいて「Zoom Phone」と生成AIを組み合わせた営業改革の構想を紹介した。

  • (写真)光通信 代表取締役社長 和田 英明氏

    光通信 代表取締役社長 和田 英明氏

「当社の営業は1対1のコミュニケーションによる営業が基本で、リアルなやりとりの中で成果を積み上げてきました。しかしコロナ禍で対面営業が困難になり、Zoom Meetingsを使ったリモート営業が始まりました」と和田氏は振り返る。

その後、ChatGPT-4が登場したことで、光通信でもAIによる営業支援の検討が本格化するが、そこで課題に直面することとなった。

和田氏は言う。「ちょうど1年前にAIを使ったコールシステムのプロジェクトを立ち上げました。ですが、営業担当者が話した過去の会話データは7年ほどで削除しており、その蓄積が活かされていなかったのです」

その中で出会ったのが、Zoom Phoneの提供する録音ログ機能だった。

「Zoom Phoneには録音データを永久保存できる機能があり、しかも営業活動にも活用できる。さらに通話料がかからないかけ放題であると知って、『なんで今まで知らなかったんだろう』と。すぐに導入を決めました」(和田氏)

現在は約800ライセンスの導入にとどまっているが、最終的には2万アカウントまで拡大する計画だという。 和田氏は「Zoom Phone導入によるコスト改善と生産性向上の効果は非常に大きいです。今後はZoomのプラットフォームが提供する様々なサービスの拡充や拡販にも取り組んでいきたいですね」と意気込みを示した。

コール業務の常識を塗り替える!現場主導で進めるZoom Phone改革

セッション後半では、光通信100%出資の業務改善コンサルティング企業、M Plants Consultingの代表取締役であり、光通信でZoom導入を推進する増形 真希氏が登壇。Zoom Phone導入の背景と社内定着に向けた取り組みについて紹介した。

  • (写真)M Plants Consulting 代表取締役 増形 真希氏

    M Plants Consulting 代表取締役 増形 真希氏

増形氏は、従来の電話営業において、通話料金やPBX機器の費用、ログ保管に関するコストなど、現場が抱えていたさまざまな課題を挙げた。「こうした課題は、コールセンターとはそういうものだからと諦められていた部分もありましたが、Zoom Phoneなら解決できると聞いて驚き、すぐにZoomに問い合わせました」と導入のきっかけを語った。

とはいえ、既存のシステムからの移行にはハードルもあった。現場では従来のPBXに慣れており、「設定方法を教えてほしい」といった問い合わせが殺到したという。全社導入に不安を抱えながらも、「導入すれば確実に良くなると見えていた」という増形氏は、社内への浸透を進めるために徹底した施策を展開したのだった。

まず注力したのは、コストメリットの可視化である。部署ごとに通話コストの試算を行い、Zoom Phoneに切り替えた際の費用対効果を提示。責任者クラスは数字を見ればすぐに判断してくれたという。また、Zoomの多機能さが逆に障壁となる場面も多く、社内専用のAIチャットボットを設置。重複した問い合わせが起きないよう工夫し、導入への心理的ハードルを下げた。

さらに、デモ利用期間の設定やZoom Meetingsでの定期共有会の実施など、利用体験を通じた浸透策も実施。「毎日使うツールだからこそ、使い始めれば社内定着は非常に速かった」と増形氏は強調した。

通話ログが永年保存されるZoom Phoneの機能は、他のシステムとの連携によって真価を発揮している。

「日程調整では、Zoomを活用してURLを一度送るだけでスムーズに商談の調整ができるようになりました」(増形氏)

さらに「Zoom Revenue Accelerator」によって、商談後の要約やToDo抽出、トップ営業の可視化などによって、生産性向上に直結する成果も上がっている。

また、光通信が独自開発したリスク検知AI「Talk Monitor」とZoomのプラットフォームとのアプリ連携も進む。Zoomで記録された通話ログから文字起こしを行い、AIがリスクを自動検知。責任者にメールで通知する仕組みにより、クレームが発生する前にフォロー対応が可能となっている。

最後に増形氏は、「Zoom Phoneを社内に導入するのは大変だと思っている方も多いかもしれませんが、社内導入は営業と同じです。十分な説明と移行期間、コストメリットの訴求、そして多少の強引さも必要なのです」と、会場に向けて力強く訴えた。

  • (写真)会場の様子

    Zoom Experience Day Summer 2025は盛況のなか行われた

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