構造的な人手不足や燃料費の高騰、ドライバーの労働時間規制など、多くの課題を抱える物流業界。そうした現状を打破しようと、システム開発の内製化を積極的に推進しているのが、山崎製パングループの一員として、食品流通向けにパンを主体とした共同配送サービスを提供するサンロジスティックスだ。内製化を進め、効率性を高めることでベンダー依存から脱却し、システム部員のモチベーション向上と人材育成を図っている。そのためのローコードツールとしてGeneXusを活用しているようだ。

  • 写真:株式会社サンロジスティックスの社員

    左から、株式会社サンロジスティックス 経理本部 システム管理部 部長 池谷正氏、システム管理課長 當津征幸氏、システム管理部 システム管理課 課長 渡邉恵介氏

パンの共同配送サービスのパイオニア企業がGeneXusで基幹システムを刷新

パンや和菓子、総菜・デリカテッセン、青果、米など約150のメーカーの商品を全国16チェーン、約2200店舗の量販店に共同配送するサンロジスティックス。共同配送とは、複数のメーカーから預かった商品を複数の納品先へ届ける配送サービスのことで、同社は、流通チェーン各社からの要望で2003年に設立された共同配送のパイオニアだ。

パン業界では、もともと各メーカーが独自の物流でスーパーなどの店舗に配送しており、店舗側の負担が大きいという課題があった。そのような中、サンロジスティックスは共同配送によって、使用車両台数の削減や物流の効率化、担当者の業務負担軽減、CO2排出量の削減などを実現。また、配送センターと車両内を20℃に保つ定温配送や独自システムによって、物流を最適化する仕組みも作り上げた。

そんな同社がシステム改革と事業変革の一環で取り組んでいるのが、基幹システムを含んだすべてのシステム開発の内製化だ。内製化にあたっては、ローコードツールのGeneXusをフル活用している。経理本部 システム管理部 部長 池谷正氏はこう話す。

「全国14箇所に配送センターを持ち、その拠点ごとに商品の仕分けや配送を管理するコンピュータシステムがあります。システム管理部は、それらの管理を中心に、グループウェアなどの業務システムや、PCデバイスの管理といったIT関連を一手に引き受けています。もともと基幹システムを含む社内の業務システムはWindowsベースのオープンシステムであり、必要に応じてシステム開発をベンダーに依頼して構築、運用するという体制でした。ただ、10年超にわたってシステムを運用するなかで、さまざまな課題に直面するようになりました。そうした課題を解決するために採用したのがGeneXusです」(池谷氏)

2017年にGeneXusを採用して、まずはグループウェアの構築に着手した。スケジュール表や、メッセージ機能、名刺管理、会議室予約システムなどを追加することに加え、稟議書申請のワークフロー化も行ったという。

  • 写真:GeneXusで構築したグループウェアのキャプチャ画像

    GeneXusで構築したグループウェアのメインページ

  • 写真:GeneXusで構築したグループウェアのキャプチャ画像

    構築したグループウェアで、エリアごとの従業員の日別スケジュールをチェックできる

システムの複雑化、データ連携、ベンダー依存という課題を内製化で解決

2024年から取り組みを本格化させたのが、基幹システムの1つである配送センター内にある配分システム(仕分けシステム)の刷新だ。仕分けシステムとは、メーカーからの指示書に基づいて配送センター内で店別・商品別に配送する商品の仕分けを行うシステムのこと。商品のピッキングやコンベア動作などを制御するもので、共同配送のための中核機能を担うシステムとなる。

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    株式会社サンロジスティックス 経理本部 システム管理部 部長 池谷正氏

その配送センター内の配分システムに加え、どのコースでどの店舗に向かうかを担う配送管理システムや、トラックを見守る動態管理システムにおいても課題を感じていたようで、大きく3つに整理できる。

1つ目は、システムの複雑化である。システム管理課長 當津征幸氏はこう説明する。

「会社設立時に構築されたシステムが多く、必要に応じて機能を追加、変更してきました。ただ長く利用するなかでシステムが複雑化し、機能の追加や変更が難しくなってきていました。たとえば、流通業者間で利用される電子データ交換のための新しいガイドラインである流通BMSなどの仕組みも後から追加して対応しましたが、処理が複雑になり、バージョンアップ対応に手間がかかるといった課題がありました。枝葉を整えるのではなく、幹の部分から再構築する必要性を感じていました」(當津氏)

2つ目は、データ連携の難しさだ。システム管理課 課長 渡邉恵介氏はこう説明する。

「拠点ごとにシステムがあり、それぞれのシステムでデータを管理していました。システムはクライアントサーバシステムで、拠点のデータが一括管理されているわけではありません。また、システム自体も拠点ごとに現場のニーズにあわせて独自に改良を加えていたり、設定や更新のタイミングが異なったりしていました。そういった拠点ごとに少しずつ異なるバージョンのシステムを管理する必要があり、管理の手間が増えていたのです。これらを解決すべく、クラウドなどの技術を活用しながら一元化して、必要なデータを一斉に投入したり収集したりできるようにしたいと考えていました」(渡邉氏)

3つ目は、システムベンダーへの依存だ。

「外部環境の変化により機能の追加や更新を行うたびに費用が発生します。また、ハードウェアやソフトウェアの保守期限の関係でバージョンアップが必要になるため、内製化することでベンダーへの依存から解放されたいと考えていました」(池谷氏)

GeneXus導入で、システム部門のモチベーション向上と仕事へのやりがいを両得

こうした課題を解消するために採用したのがGeneXusだった。池谷氏は、前職の山崎製パン勤務時にGeneXusを使って製品統合マスタシステム「ASCA」を再構築した経験を持ち、GeneXusによる内製化の効果を肌で実感していた。

「そもそもシステム開発を外部委託する場合、要件や課題といったいわゆるキモの部分はこちら側にあり、それを外部ベンダーへ正確に伝えることが非常に困難で、一旦開発・テストが完了した後のレビューでの後戻りが発生するのが課題です。内製化は、ベンダー依存から脱却するだけでなく、自分たちが主導して必要な機能を自分たちで作り、データ管理やデータ活用を推進できるようになる取り組みです。ライセンスコストやメンテナンスコストの削減という効果はありますが、それよりも重要なのは、社員のモチベーションが上がることです。システムを導入し、サポート切れに合わせてそれらをアップデートし続けても現状維持にとどまる場合がほとんどです。そこに何の夢もありません。一方、内製化は、仕事のやりがいを見つけ、そのためのスキルを身につけて、会社に貢献できることで達成感や喜びにつながります。GeneXusを導入する効果は、そこにあります」(池谷氏)

GeneXus導入にあたって、取り組みを推進する担当者として、システム管理の経験を持ち、マイクロソフトが開発した言語であるVBを使ったプログラミングや、業務改善を担っていた當津氏と渡邉氏を抜擢した。當津氏はこう振り返る。

「現場からの要望に応じてExcelマクロやVB、VB.NETなどを使って簡単な機能追加を行ったりしていましたが、大きな改修はベンダーに頼らざるを得ませんでした。しかし、GeneXusを利用すると、独自の言語を使ってWebアプリを作ることができます。また、画面やロジックの設計も視覚的に操作しやすいGUIベースで進めることができるだけでなく、データベースや帳票なども自動生成されます。当初は、コードを書かずにプログラミングすることやGeneXus特有の機能に抵抗もありましたが、慣れてくるとシステムを直感的に手間なく作ることができ、改修や機能追加が簡単に実施できることに大きな魅力を感じるようになりました」(當津氏)

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    株式会社サンロジスティックス 経理本部 システム管理部 システム管理課長 當津征幸氏

また、渡邉氏もこう話す。

「SQLを知らなくてもデータベースを操作できるため、プログラミング経験がない担当者が最初に取り組むツールとして敷居が低いと感じました。また、ハードウェアやソフトウェアのアップデートに伴って、システムの変更が必要なくなることも大きなメリットです。GeneXusはさまざまなハードウェア、ソフトウェアをサポートしており、コードの改修なしに新しい環境へ移行することができます。システム移行コストの削減にもつながります」(渡邉氏)

プログラミング経験のないシステム部員がWebアプリケーションを開発する事例も

課題だったシステムの複雑化については、各拠点で同一のシステムと同一のデータ管理の仕組みを実現したことで、開発効率やメンテナンス効率が大幅に向上した。

「従来は、拠点ごとにシステムのアップデート状況を確認する必要がありました。システムを同一のバージョンに揃えるために、地方拠点に出向いて作業する必要がありましたが、新システムへの移行によって、本部からシステムを一元的に管理できるようになりました。新しい機能開発もモックを見ながら、現場担当者とアジャイルに進められるようになりました」(當津氏)

また、データ連携についても全国の拠点データを一元的に把握できるようになった。

「ExcelマクロやVBなどで拠点ごとにデータを収集、加工する手間がなくなりました。これまでは現場ごとにさまざまな帳票や指示データが散らばっていて、どこにどんな情報があるかわからない状態だったのですが、今後は、システムとして一元管理が可能になり、データ活用やノウハウの横展開もしやすくなります。また、そうしたノウハウをシステム環境に依存せず、引き継いでいくことができるようになりました」(渡邉氏)

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    株式会社サンロジスティックス 経理本部 システム管理部 システム管理課 課長 渡邉恵介氏

ベンダー依存からの脱却という点では、既存SIerや委託パートナーとの関係を見直し、現在は、内製化支援のパートナーとしてGeneXusのパートナー1社としか取引していない状況だ。

「パートナーであるイノベーティブ・ソリューションズ(ISOL)から、GeneXusの導入フローだけでなく、講習会の実施、システム開発におけるさまざまなアドバイスといった伴走支援を受けています。ISOLは内製化の取り組みのパートナーであり、システム開発を委託するパートナーとは根本的に異なる存在です。現在は、ベンダー依存から解放された状況となっておりとても満足しています」(池谷氏)

さらに、社員のモチベーション向上ややりがいの面でも目立った効果が現れている。當津氏と渡邉氏が内製化の推進リーダーとなり、後進の育成を進めるなかで、プログラミング経験のまったくないシステム部員がWebアプリケーションを開発する事例が出始めているという。

今後は、仕分けシステムが完成すると、もう1つの中核的なシステムである配送システムの再構築も視野に入ってくる。池谷氏は「GeneXusは内製化を進め、自分たちが思い描くシステムを自分たちで作ることのできる最適なツールであり、今後もすべてのシステムをGeneXusで構築していくつもりです」と意気込む。

共同配送のパイオニア企業であるサンロジスティックスの取り組みをGeneXusが今後も支えていく。

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