デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する現代のビジネス環境において、システムの安定稼働は企業の生命線となっている。その中でも、システムの健全性や問題の早期発見に欠かせないのがログ管理・分析だ。しかし、ログ管理・分析ソリューションを導入したはいいものの「コストがかさむ」「活用しきれない」「運用が煩雑」といった悩みを抱える企業は少なくない。
このような現状を打開し、手間のかかる存在だったログを、トラブル解決や業務改善を支える資産へと転換するのが、オブザーバビリティ(可観測性)プラットフォーム「Dynatrace」が提供するログ管理・分析機能だ。特に、その中核技術である「Grail™」は、従来のログ管理のあり方を根本から変える可能性を秘めている。
今回は、Dynatrace合同会社の青木氏に、ログ管理・分析の課題とそれを解決するGrail™の優位性、そしてオブザーバビリティの実現に向けた展望について伺った。
インタビュイープロフィール
Dynatrace合同会社 シニアソリューションエンジニア 青木 浩氏
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2014年にDynatraceに、技術統括ディレクターとしてCompware社から移籍。 それ以前は国内SIer、海外のソフトウェア、ハードウェアベンダーで開発、プリ・ポストセールス、サポートと幅広い業種を経験しており、 監視、運用ソリューションについては長く携わってきた。 現在は、シニアソリューションエンジニアとして新規顧客開拓のための提案活動に専念中。 |
保存しているのに使えていない? ログ管理の根深い課題
従来のログ管理・分析ツールでは、取り込み、保存、分析のそれぞれの段階で課題があった。
「取り込みでは、スキーマ定義やインデックス構成など、ログ監視のための事前準備が大変でした。これらの作業は手間がかかるだけでなく、データ構造に変更が生じた場合に再インデックス化という追加コストも発生します」と青木氏は説明する。
また、保存の工程においても問題があると指摘する。
「従来の製品では、直近のログは高速なディスクに保存し、古いログは安価だがアクセスが遅いストレージに階層的に保存する方式が一般的でした。そのため、古いログにアクセスしようとすると、リハイドレーションと呼ばれるデータの移行プロセスが必要となっていました」(青木氏)
こうした課題は、コストや運用面に大きな影響を与えている。青木氏は「多くの企業では、ログの保存はしているものの、本格的に活用できていないというケースが多いのが現状です。また、管理の煩雑さとコストが大きな課題となっている場合が多く見受けられます」と指摘する。
あらゆるログを、すぐに・柔軟に・高速に
Dynatraceのログ管理・分析機能は、これらの課題を一挙に解決する、まったく新しいアプローチを採用している。その中核となるのが「Grail™」と呼ばれるデータレイクハウスだ。
Grail™は、ログ管理における"事前準備の壁"を取り払った点で革新的 だ。最大の特徴は、データを取り込む際にスキーマやインデックスの設計が一切不要なことである。これは、Grail™が「スキーマオンリード」というアプローチを採用しているためだ。スキーマオンリードとは、データ取り込み時ではなく、クエリ実行時にデータ構造を解釈する方式だ。この方式により、JSON、テキスト、OTLPなど多様な形式のデータをシームレスに取り込むことが可能となり、事前に用途を決めずとも柔軟に後からデータ活用を進めることができる。
分析においてもGrail™には大きなアドバンテージがある。
「Grail™は並列処理が可能で、大量の分析クエリを投げてもハイパフォーマンスでレスポンスしてくれるアーキテクチャとなっています。通常のログソリューションに比べて5倍以上高速に処理できるのが特徴です」(青木氏)
独自に開発されたクエリ言語「Dynatrace Query Language(DQL)」の存在も、分析効率に貢献する。青木氏によると、DQLは一般的な正規表現やSQLよりも直感的に使えるよう設計されており、高度な専門知識がなくても簡単にログを分析できるようになっているという。
さらに、DynatraceではAI技術の導入も進んでいる。たとえば、ログの説明ボタンをクリックするだけで、そのログが何を意味するのか、どのような対応が必要かをAIが説明する機能だ。これはログの専門家ではない運用者にとっては非常に有益だろう。
ログデータの活用範囲も広がっており、特定のログレコードからメトリクス作成し、数値化してダッシュボードに反映することも可能だ。これにより、障害の兆候やシステムの健全性を視覚的に把握できるようになる。AIによる分析機能を活用すれば、異常値の検出や将来の予測までできるようになる。
安価に、そして"集めるだけ"から"活かせる"へ──Grail™の真価とは
Dynatraceのソリューションは、コスト面でも大きなメリットを発揮する。特に大規模に活用しているケースでは、従来のメジャーなログ管理ツールと比較して、1/4以下のコストで抑えられるアーキテクチャになっているという(条件による)。コスト削減を実現できる理由について、青木氏はこう説明する。
「これまでのログソリューションでは、データの取り込みと保存に大きなコストがかかっていました。Dynatraceではこの部分の価格を抑え、分析・活用の部分にコストを使えるような料金体系にしています。とりあえずログを集めるだけのユースケースであれば、コストをかなり抑えることができます」(青木氏)
運用負荷の軽減もコスト削減につながる重要なポイントだ。Grail™では、すべてのデータが階層化されていないフラットなストレージ(Dynatraceが提供するデータレイクハウス)に保存されるため、古いデータにアクセスする際もリハイドレーションが不要となる。これにより数ペタバイト規模のデータでも瞬時にアクセスでき、分析時のレスポンスが大幅に向上する。青木氏は「ストレージがフラットなので、分析したいときにログデータを別の場所に移動する作業が発生しません。ストレージの運用管理の手間が大幅に削減でき、データ活用に集中できる環境が実現できます」と強調する。
Dynatraceのログ管理・分析機能は、導入企業においてログ活用の高度化や運用負荷の削減といった成果を生み出している。たとえば、大手金融機関では、手作業によるログ分析プロセスに最大45分かかっていたところ、Dynatraceを用いることでわずか5秒に短縮されたという劇的な効果が報告されている。問題の根本原因分析にかかる時間は80%削減されたという。
エンドツーエンドのオブザーバビリティを実現
Dynatraceのログ管理・分析は、統合的なオブザーバビリティプラットフォームの主要な機能として位置づけられている。このアプローチの優位性について、青木氏はこう語る。
「Dynatraceは、『OneAgent』によって、ユーザ操作、トランザクションのトレース、ログなどのデータを取り込み、自動で関連付けます。すべてのデータを自動で連携させることで、問題発生時の原因分析が容易になります」(青木氏)
ログ管理から一歩進んだオブザーバビリティの実現によって、業務変革を達成した企業も少なくない。決済プラットフォームを提供する金融機関においては、Dynatraceを活用して問題発生時の原因特定時間を大幅に短縮し、デジタルエクスペリエンスの最適化までを実現した。
また、物流企業においては、急速なビジネス成長に伴うシステム複雑化の課題をDynatraceの導入で解決。クラウドネイティブ環境におけるパフォーマンス監視とログ分析を統合することで、顧客体験の向上とシステムの安定性確保を両立させている。
「ログ管理だけでなく、システム全体の観測、つまりオブザーバビリティを実現することで、ビジネスにも大きな影響を与えることができます。Dynatraceのプラットフォームはそれを可能にします」(青木氏)
監視から観測へ、ビジネス意思決定に効くプラットフォームへ
最後に、青木氏はオブザーバビリティの実現を目指す企業へのメッセージを語った。
「システム全体の可視化をするためには、1カ所にデータを集めることが前提条件です。Dynatraceでは、ログだけでなく、メトリクスやトランザクションの流れなども取得しています。オブザーバビリティの完成度を高めるには、ログもプラットフォームで一元管理することが近道になります」(青木氏)
Dynatraceは単なる監視プラットフォームではなく、ビジネス分析やデジタル体験まで含めたエンドツーエンドの次世代統合運用プラットフォームである。そのうえで青木氏は、「迅速なビジネスの意思決定の実現に向けて、経営に資するDynatraceのご活用をご検討いただきたい」と語った。
ログ管理・分析は、システム全体の健全性やビジネスの意思決定にまで寄与する基盤となる。Grail™を中核としたDynatraceのアプローチは、オブザーバビリティ実現への実用的な導入ステップを提示しているといえるだろう。
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