Google Workspaceを導入し、コミュニケーション環境を刷新
アース製薬株式会社は、1925年に設立され、2025年で100周年を迎えた生活用品メーカーだ。家庭用虫ケア用品や衛生用品を中心に、多くのヒット商品を展開。代表的な商品には、口腔洗浄液の「モンダミン」、害虫対策の「ゴキブリホイホイ」、蚊取り製品の「アースノーマット」などがあり、幅広い分野で人々の快適な暮らしを支えている。
株式会社バスクリンや白元アース株式会社を含むアースグループの国内各社では、現在Google Workspaceを業務基盤として活用しているが、その導入は2012年に遡る。
「以前は国産グループウェアを利用していましたが、スケジュール等の各種ツールはあまり活用できていませんでした。コミュニケーションツールとして主に利用していたのはメールです。しかし個人のメールボックス容量が小さく、頻繁にメールを削除しなければならない、大容量添付ファイルが扱えない、操作性やレスポンスが悪い、など多くの課題を感じていました」と当時を振り返るのはアース製薬株式会社 執行役員 経営統括本部 情報システム部 部長の梶 晃氏だ。プロバイダのメールサービスの利用をやめ、メール環境全体の刷新がしたいと考えていたところ、出会ったのがGoogle Workspaceだったという。
「Gmailの使い勝手のよさは圧倒的でした。メールの検索機能なども当時としては非常に強力でした。社員がPCを扱う中でメール操作の比重はかなり高いので、操作性を向上させることで業務効率の改善につながると考え、採用を決めました」と梶氏は話す。
組織でスケジュールを共有するにはサテライトオフィスのアドオンが必須
Google Workspace導入を決定するにあたって、問題になったのがグループでスケジュールを共有する部分の使い勝手がマッチしないことだった。
「組織で仕事をする以上、階層表示は必須です。Google Workspaceは魅力的ですが組織で使えるカレンダー機能がない。これがないと、いくらほかの機能が充実していても移行できないと感じ、対応できるものを探して出会ったのがサテライトオフィスの組織カレンダーでした」と梶氏。
併せて、セキュリティ確保のための「サテライトオフィス・シングルサインオン for Google Workspace」、組織的な情報共有を助ける「サテライトオフィス・組織&グループカレンダー for Google Workspace」と「サテライトオフィス・掲示板/回覧板 for Google Workspace」、メール利用をサポートする「サテライトオフィス・メール誤送信防止/標的型攻撃メール対策機能 for Google Workspace」、「サテライトオフィス・再送信メール作成機能 for Google Workspace」と、サテライトオフィスが提供するアドオンツールが数多く採用された。
「当時サテライトオフィスが提供していたアドオンのほとんどを導入したようなイメージでした。今でも、社内イントラの枠組みとしては別のツールを利用しながら、そのあちこちにGoogle Workspaceの各種機能とアドオンをちりばめて使っています」と梶氏は語る。
2019年よりアースグループの国内全社に導入を拡大
現在、Google Workspace + サテライトオフィスのアドオン群は現場に浸透。2019年からはアースグループの国内全社に導入が広がっている。当初はアース製薬株式会社の1200アカウントだったが、段階的に導入企業が拡大し、現在は全体で約4000アカウントまで増加。柔軟な働き方を支える基盤としてコミュニケーションの円滑化に大きく貢献し、業務上不可欠な存在になっている。
「中途入社の社員や合併した他社のスタッフからも使いづらい、使い方がわからないというような問い合わせは出ていないので、本当に一目見ればわかるようなユーザビリティなのだと感じますね」と梶氏はGoogle WorkspaceのUIを高く評価する。
国内グループで4000アカウントを運用、多彩な機能を業務に積極活用
増加しているのはアカウント数だけではない。環境刷新のきっかけはメール環境の改善だったが、現在はGoogle Workspaceの進化や社内での需要拡大に合わせて利用範囲は広がっている。
「最初はメールだけを乗り換え、スケジュールは使いたい人だけが使っていました。スケジュールを管理したい人、部門ごとに管理したい部門は使うという形です。その後、全社でスケジュール利用を必須化し、現在は会議や打ち合わせの調整なども全部カレンダーから行えるようになっています。当初は他人に自分のスケジュールが丸見えになることに抵抗感を持つ人もいましたが、今は基本的に予定をオープンにしてカレンダーから手配するのが当たり前になりました。これは、経営理念の中でアースバリューとして掲げられているオープンコミュニケーションの理念にも合致しており、情報を共有することで業務の透明性が向上し、意思疎通の迅速化にも大きく寄与しています」と梶氏。
Googleカレンダーは個人単位でのスケジュールを俯瞰的に見ることに利用され、グループや組織全体を切り替えながらのスケジュール確認には「サテライトオフィス・組織&グループカレンダー for Google Workspace」を利用するなど、目的ごとに使い分けも行われている。また会議室前に設置した端末と連携させた会議室の空き状況確認や予約にも活躍している。
利用拡大の中では、Google Workspaceが持つ便利な機能を正しく使えるよう一部機能は利用不可にしたり、必要に応じて許可制にしたりと運用の工夫もされている。たとえばカレンダーへの予定登録時には説明書き等に機密情報を書いてしまわないよう気をつけるなど、具体的な指導もしている。またGoogle Meetは社員間コミュニケーションツールとしてなくてはならないものになっているという。
「メールは正式な通達、Google Chatはリアルタイムのやりとりというように状況に応じて使い分けています。またGoogle Meetはコロナ禍の打ち合わせ需要の高まりに伴い利用が伸びました。動作が軽く多人数会議でも全員カメラオンが無理なく実現できますし、操作も簡単。リモートワークが手軽に実施できたのはGoogle Meetのおかげだと思います。今は会議室にいてもスライドが見づらければGoogle Meetで手元の端末に共有してもらうこともあります。Google ChatとGoogle Meetはどのような場面でもリアルタイムでの情報交換を可能にしてくれるので、なくてはならないものになっています。Google Meetのグループ共同作業をする機能は新人研修などでも活用しています。社内では、フォームアンケートやGoogleスプレッドシートでの共同編集なども活用されています。GoogleドキュメントからGoogleスプレッドシートへの連携も便利です」と梶氏。
サテライトオフィスのアドオンも機能が進化し業務効率化をサポートしている。 「サテライトオフィスの掲示板機能には当初なかったボード表示機能が追加されました。投稿に画像を添付しているとサムネイル表示されるのですが、これを利用すると『文字だけが羅列されるよりもずっと見やすい』と社内でも人気です。社内ポータルにガジェットを埋め込んで活用しており、視覚的な確認のしやすさ、社員の関心のひきやすさから情報伝達がより効果的になったと感じています」とアース製薬株式会社 経営統括本部 情報システム部 ITインフラ・セキュリティ管理室 室長の作地昭彦氏は語る。
Geminiを全社展開し生成AI活用にも意欲
今後の展望としては、Google Workspaceのさらなる活用に加えて生成AIの業務利用が挙げられた。
「Google Workspace全体でいろいろな機能が追加されているので、『こんなボタンがあったのか』と気づくことがあります。そうした気づきから更なる業務効率化に繋げていきたいですね。最近では、新機能のなかからGoogleのAIモデルであるGeminiを使ってみたところ、性能面でも実用性においても非常に効果的であったため、全社展開を行いました」と作地氏は生成AIの活用にも意欲を見せる。
長年の利用を経てGoogle Workspaceのさまざま機能とサテライトオフィスの多彩なアドオンを使いこなしている同社だが、これからの導入を検討する企業にもこの組み合わせを勧めている。
「Google Workspace は直観的で使いやすい操作性が特長です。インターネット環境さえあればどこからでも利用できるのでハイブリッドワークにも適していますし、コストパフォーマンスも優れているので中小企業やスタートアップ企業もチャレンジしやすい。さらにサテライトオフィスのアドオンをうまく活用すれば、低コストで効果的な業務運用につながると思います」と梶氏は経験を踏まえて語ってくれた。