「ストレージはただデータを保存するだけのものではない」──。
2025年1月28日、NetAppが109シネマズプレミアム新宿にて年次イベント「NetApp INSIGHT Xtra Tokyo」を開催した。講演で、ソリューション技術本部 ソリューションアーキテクト部 部長 大野靖夫氏は、AI時代に求められるデータ基盤の姿を鮮明に描き出した。
「インテリジェント」という言葉が意味するものは何か、なぜ今データ インフラストラクチャの進化が求められているのか。
企業のデータ活用を根本から変える可能性を秘めた「インテリジェント データ インフラストラクチャ」の全貌に迫る。
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(登壇者)
ネットアップ合同会社 ソリューション技術本部 ソリューションアーキテクト部 部長
大野 靖夫氏
「インテリジェント」の本質とは何か
大野氏はまず、高い知能を持つことを意味する「インテリジェント(intelligent)」という言葉に対する印象について触れた。AIブームのなかで「インテリジェント」という用語を聞くと、高度なAIが自律的にすべてを運用するような重厚なシステムをイメージしがちだが、実際はもっと実用的な意味を持つという。
ストレージの歴史を振り返ると、単純な記憶媒体から始まり、RAIDによる冗長性の確保や仮想化時代における重複排除機能など、徐々に「賢さ」が追加されてきた。これらの機能進化こそが、ストレージにおける「インテリジェンス」の正体だと大野氏は説明する。
「ネットワークの世界でも、単純なリピーターハブに対して、VLANなどの管理機能を持ったデバイスを『インテリジェントスイッチ』や『スマートスイッチ』と呼びます。デバイスの『インテリジェンス』とは、AIに限った話ではなく、エンタープライズのビジネスを支えるために追加されてきた機能の集合体なのです」(大野氏)
NetAppの製品群、特にAFFシリーズには多くのインテリジェンスが実装されており、マルチプロトコル対応、アンチランサムウェア機能、重複排除、高可用性など、さまざまな機能によってエンタープライズビジネスを支えている。しかし、単に「賢いストレージ」を使うだけでは、賢いデータ基盤にはならないと大野氏は指摘する。
データ ファブリックからインテリジェント データ インフラストラクチャへ
大野氏は近年のIT環境の変化に言及し、クラウドとオンプレミスが混在するハイブリッド環境において、データがサイロ化しているという課題を挙げた。NetAppはこれまで、社内データを一元的に管理することで、誰もがシームレスにスムーズに利活用できるようにする「データ ファブリック」という概念を掲げ、クラウドとオンプレミス間、あるいはクラウド間でのデータの壁を意識せずに利用できるよう製品開発を進めてきた。
しかし、AI時代の到来により、単にデータがつながるだけでなく、企業内のデータを積極的に活用して生産性を向上させる要求が高まっている。ここで課題となるのは、「ストレージ自身は中に何が入っているかを知らない」という点だと大野氏は言う。
「ストレージは根本的に、データを入れて呼び出されたら取り出すという機能しか提供していません。自分自身の”お腹の中”に入っているデータが何なのかを知らないのです」(大野氏)
これがデータ活用の大きな障害となっており、「このデータはどこにあるのか」「このデータはAIで使ってよいのか」といった疑問に答えることが難しい。ストレージ同士が単純につながっただけでは、AIによるデータ活用は進まないのだ。
インテリジェント データ インフラストラクチャの3要素
この課題を解決するのがインテリジェント データ インフラストラクチャであり、大野氏はその構成要素として3つを挙げた。
1つ目は「インテリジェント データ ストレージ」で、基盤となる十分に「賢いストレージ」を指す。2つ目が「インテリジェント データ サービス」で、データそのものを活用するための「賢いサービス」を意味する。そして、3つ目は「インテリジェント オペレーションズ サービス」で、散在するストレージを管理するためのツールだ。
大野氏が特に重要とするのがインテリジェント データ サービスで、これは管理者ではなく「データを使う人のためのサービス」だと強調した。とりわけ現在では、ストレージ内のデータを活用する人=AIのためのサービスだという。
また、現在のIT環境での三大関心事として、大野氏は、AIの活用、サイバーレジリエンス(攻撃を受けた際の被害最小化と迅速な復旧)、そして管理を含めたスケーラビリティを挙げた。同時に、電力消費の削減、コスト削減、複雑化の抑制といった普遍的な課題にも対応しなければならない。
NetAppではこうした課題を想定しながら、ストレージ自身、およびそれに付随するサービスの開発にフォーカスしており、大野氏は「インテリジェント データ インフラストラクチャとは、賢いストレージと賢いサービスを組み合わせて、データ インフラ全体をインテリジェントにしていくことです」と説明した。
AI時代に求められる2つのシステムの課題と解決策
講演の後半で大野氏は、生成AIを想定した昨今のAI環境において求められる2つのシステムについて言及した。1つは「AIを作り出すシステム」で、モデルの学習や開発に使われるシステムだ。もう1つは「AIを使うシステム」で、企業データをAIで活用するシステムを指す。
前者の「AIを作り出す」環境では、これまで学習データをGPUクラスタにいかに高速にフィードするかに注力してきた結果、学習データがサイロ化し、データ マネジメント機能が不足する問題が生じている。学習データを提供するストレージの部分での課題が多く、マルチテナント環境での論理分割などに苦労しているケースが多いという。
これに対してNetAppは、従来のAIPod for NVIDIA DGXをさらに拡張し、NVIDIA DGX SuperPOD環境に対応したストレージシステムを開発中だ。これにより、データ マネジメント機能を活用しながら大規模なAI学習環境を構築できるようになる。
一方、「AIを使う」環境では、企業データをAIに適切に渡すことが課題となる。大野氏によれば、企業が既存データをAIで活用する際には、必要なデータを見つけ出してAIに処理させるプロセスが重要になる。しかし現状では、ストレージが自分の中に何が入っているか知らないため、このプロセスが非効率となっている。
この課題に対して解決策となりえるのが、NetApp ONTAP for AI/MLだ。データを見つけ出してAIに渡す機能をストレージ自身で実現する取り組みであり、2025年中にリリース予定となっている。ストレージ層で何のデータが入っているかを語り出せるようになることで、AIシステムを構築するたびにベクトルデータベースの更新やエンベディング処理などを実装する必要がなくなり、すべてストレージ層で完結できるようになるという。
賢いストレージ+賢いサービスで実現されるインテリジェント
大野氏は講演をまとめるにあたり、インテリジェント データ インフラストラクチャは単一の製品やサービスではなく、賢いストレージと賢いサービスの組み合わせによって実現されると強調した。この組み合わせによって、データ インフラ全体をインテリジェントにし、AIを含むデータ活用を加速させることができる。
「1つのストレージ製品、1つのサービスではなく、それらを組み合わせることでよりインテリジェントなデータ インフラストラクチャを作り上げることができる。そうした世界観を目指して我々は製品開発を進めています」(大野氏)
AIの時代において、ストレージはただデータを保存するだけでなく、データを理解し活用するための基盤へと進化しつつある。NetAppのインテリジェント データ インフラストラクチャというビジョンは、その進化の方向性を示すものといえるだろう。
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