「2025年の崖」「SAP2027年問題」など、ERPにまつわる課題に直面している現状を受け、TECH+では2025年2月、「自社に適したERP実現へ II」と題したオンラインセミナーを開催した。セミナーでは「自社に適したシステム」にたどり着くヒントを、識者や企業の担当者から語ってもらったが、本稿ではその中からインフォアジャパン株式会社の布施 将義 氏による講演「何のためのERP導入かを再考する~既定路線から脱却するためのポイント~」の概要を紹介する。
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インフォアジャパン株式会社 執行役員副社長 グローバルプロフェッショナルサービス本部長 布施 将義 氏
ERP導入における日本企業の問題点
プロジェクトマネージャー、コンサルタント、経営者、そして現在はERPメーカーでサービスを手掛けている布施氏は、自身の経験を交えながらERP導入での注意点について語った。
日本企業における問題点として、ERPの導入やアップグレードがIT部門主導で動いていってしまうことだと指摘する。本当にそのERPが必要なのかどうか、何のために導入するのかが議論されないまま「EOS前に延命したい」「技術的にアップグレードしなければいけない」という理由だけで進めてしまう。逆にいえば、ERPの導入・アップグレードに対して、事業部門の参画意識が非常に低いということだ。
「欧米諸国においては、ビジネスプロセスの主幹は明確にビジネス部門が持っています。自分たちの仕事のやり方や、業務がどうあるべきかをリードしていく体制が取れていますが、日本はプロジェクトを立ち上げたときに、IT主導で動いていく。しばしばIT部門が『ビジネス部門を巻き込む』と言うように、『ビジネス部門に入って来ていただいて、手伝ってもらう』という意識があるのです」(布施氏)
本来であれば、経営として達成したいことが何かを明確にしたうえで、そのためにビジネスをどのように変えなければならないか、必要なITソリューションは何かを考えるべきだが、逆の流れになってしまっている企業が多いと、布施氏は警鐘を鳴らす。
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ERP導入までの検討プロセス
また、パッケージ導入のときに“Fit to Standard”、つまりすでに完成されたパッケージをそのまま使って、それに業務プロセスを合わせるという方法があるが、経営層はこれを簡単に考えがちだと、布施氏は語る。フィットさせるということは、大きな業務変革が必要になるわけだが、経営層にはそのことへの理解が不足しているという。
「当然、パッケージ製品の良さを最大限に発揮させるには、そのパッケージがフォーカスしているやり方、ベストプラクティスに準拠するのが効率的であるのには間違いないのですが、それが自社のプロセス変革になることは理解していただく必要があります。そしてこれを実現するには経営側の理解と業務側の主体性、それを支援するIT部門、この三位一体の体制というのが不可欠です」(布施氏)
パートナー企業との対等な関係性構築、ガバナンスの徹底が重要
ERP運用を継続させるには、この三位一体の体制に加え、ビジネスプロセスマネジメントを行う仕組みが必要となる。この仕組みでは、ビジネス部門が主体となってプロセスを管理し、新たなビジネスモデルが出てきた際にも、それに対応できるようにプロセスを標準化する役割を担う。こうした仕組み・組織を準備しておくことが、ERP利用の成功につながるだろうと、布施氏は言う。
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ERPの導入・利用が成功する組織
さらに、パートナー企業と良好な関係を築いていくことも、成否に大きく関わってくる。クライアントに言われたことをそのままやるような、“IT部門の出先機関”的なパートナーではなく、間違っていることは間違っていると忖度なしに指摘してくれるパートナーを選ばなくてはならない。さらにガバナンスも重要だ。プロジェクト全体でできること、できないこと、何がリスクでどういう手を打たなければいけないのかをIT部門の視点、パートナー企業の視点などから全方位的に見て、互いの管理・監督責任を明確にしたうえで、正しい議論ができる状況をつくることが大切である。
そして布施氏は、そのようなパートナーシップを築ける企業としてインフォア社を挙げた。同社は非上場であるがゆえ、株主に対して短期的に利益を求められるような、ステークホルダーを中心にしたビジネスモデルをとっておらず、パートナーである企業を中長期的にしっかり支えていくことができると、その根拠を説明した。 「投資を含めて、長いスパンでビジネスを考えるERPメーカーの一つであるとご理解いただければと思っております」(布施氏)
また同社はあえてパートナーシップを結ぶ分野を絞っており、日本では自動車、産業機械、食品・飲料の3つがそれにあたる。 「我々はフォーカスしている業界に対して、本気でお客様の成功のためにビジネスをする会社です。今日の講演を聞いて興味をお持ちになられたら、ぜひお声掛けください」(布施氏)
現在、ERPの刷新、更新を考えている読者も多いだろう。布施氏が語ったように、まずは「何のためのERPなのか」にまで立ち返って、本当にすべきことは何かを再検討していただきたい。
[PR]提供:インフォアジャパン