近年のカスタマー事業では、SNSの普及などにより消費者行動やニーズが多様化し、従来の顧客対応の課題も浮き彫りになっている。コンタクトセンターをはじめとする顧客対応部門はカスタマー事業を展開するうえで欠かせない存在であり、事業成長のカギを握っているといっても過言ではない。ユーザーエクスペリエンスを高め、顧客満足度の向上を実現するために、顧客対応部門にどのようなことが求められるのだろうか。
2024年1月25日に開催されたオンラインセミナー「成功事例から学ぶスピード経営と顧客ロイヤリティ戦略 - 2024 -」では、CXMコンサルティング株式会社 代表取締役社長 秋山 紀郎 氏をはじめとしたユーザーエクスペリエンスにおけるスペシャリストが登壇。3つのセッションから、カスタマー部門DXの事例と成功のポイントについてみていこう。
生成AIの活用で「スピード経営」と「顧客ロイヤリティ」を実現
CXMコンサルティングの代表を務める秋山氏は20年以上にわたりコンサルに従事、特にコンタクトセンターについて幅広い経験を持つ。そんな秋山氏が予測する2024年のコンタクトセンターのトレンドが「原価高騰」「人材難」「生成AIの利活用」の3つだ。
中でも秋山氏が注目しているのが「生成AIの利活用」である。すでにコンタクトセンターにおいても生成AIを活用したサービスは生まれつつあるが、大半がまだPoCの途中であり、成果を出すのに苦労しているケースも多いという。
こうした課題を乗り越え、生成AIを利活用していくためには、「生成AIで何が変わるのか」ではなく「何を変えるのか」を考えるべきと秋山氏は提言する。たとえば生成AIがもたらす行動変容であれば「何のために行動変容するのか」を考えるべきであり、生産性の向上がもたらすコスト削減であれば「何のためにコストを下げるのか」を考えるべきということだ。
また、現在はSNSなどで情報が一気に駆け巡るため、顧客の期待やニーズも大きく変化している。そのような環境では、これまでよりも顧客理解を深め、迅速なサービス提供が求められる。そこで必要になるのが、スピード経営による迅速な意思決定である。
さらに秋山氏が提示する生成AIがもたらす変化が「サービス変革」だ。これは、パーソナライズにより顧客への寄り添いを実現し、顧客ロイヤリティを高めることを指している。
「顧客ロイヤリティを高めることで多くの課題に対応できます。たとえば原価高騰で各社のコスト削減は限界を迎えており、値上げを余儀なくされていますが、顧客ロイヤリティが優秀な企業は値上げしても既存顧客が離れないのです」(秋山氏)
スピード経営と顧客ロイヤリティ、この2つのキーワードこそ、生成AIの利活用で企業が目指すべき姿なのだ。
コンタクトセンターの2024年トレンドとあるべき姿
では、こうした見解を踏まえてコンタクトセンターは2024年にどうあるべきなのか。
秋山氏は今後コンタクトセンターに起こり得るトレンドとして、「コスト削減策の行き詰まり」と「顧客体験及び従業員体験の向上策への注目」、「ナレッジ・マネジメントの再注目」を挙げる。
まずコスト削減については人件費などの上昇もあり、これまでのようなやり方では難しい。秋山氏は「同業他社が協力し、非競争領域の共通サービスを構築することでコストの最適化を目指すべき」と指摘する。
また秋山氏によると、「人の記憶に残る顧客体験を提供すること」や「コンタクトセンターでは従業員体験の向上で良い人材を維持すること」が重要になるとのことで、そのためにはパーソナライズがポイントになるという。
ナレッジ・マネジメントが再注目される理由については、自動化が進んだ影響が大きい。自動化できない有人によるフローは難易度が高まるために、コミュニケーターのナレッジ強化が最重要課題になるのだ。
最後に秋山氏は「有人・無人を問わず顧客接点の将来像について丁寧に作り上げること」、「自社のサービスと顧客によって生成されるデータ分析・VoC分析に力を入れること」の重要性を強調し、講演を締めくくった。
コンタクトセンターにおけるVoC分析の重要性と課題
続いて登壇したのは富士電機ITソリューションの阪口氏だ。講演テーマは「VoCの全社活用の重要性」。VoCとはVoice of Customer、すなわち「お客様の声」を意味する。昨今はチャットやSNSなどチャネルが増加したことで顧客ニーズが多様化。目まぐるしく変化する消費者行動に対応するため、VoCを拾う基盤整備が求められている。コンタクトセンター部門もその役割を求められている。
しかし、コンタクトセンターには課題もある。そもそもコンタクトセンターは「顧客満足度の向上」や「VoCの収集と関連部署への共有」を目的に設立されることが多いのだが、その効果が経営層や関連部門まで届いていないケースが多いのだ。
「コンタクトセンターでは、応答率などの現場のオペレーションの品質や生産性を可視化するKPIマネジメントは実施できていても、目的、ミッションとその成果を示すKGIマネジメントが設定できていないことが多く、これが経営陣とのギャップを生んでいるのではないかと考えています」(阪口氏)
また、コンタクトセンターは情報が散在しており、属人化する課題も抱えているという。本来であれば、問い合わせや対応情報を一元管理し、最新データを活用した分析で顧客対応を向上させることが理想である。そのために欠かせないのがVoCの分析・活用なのだ。
もっとも、VoC分析にも課題があると阪口氏は指摘する。
「VoC分析に至らないのは、活用の目的が定まっていないからです。その原因は“情報量が多すぎる”こと、そして“手段やプロセスが決まらない”ことです」(阪口氏)
では、どのように対策すればいいのか。阪口氏が提案するのが「コンタクトリーズンを整理して、問い合わせ内容を分類化する」こと。チャットボットやボイスボットなど自動化し、削減できた人的リソースを有人対応の領域へ投入することで、顧客のロイヤリティの向上に努めることが重要だという。
このような対応をすることで、VoCの収集・活用・分析を行うことができれば、「商品やサービスの改善」、「対応の平準化」、「FAQへの活用」といった効果が期待できるのである。
もう1つの課題として阪口氏が挙げるのが、顧客対応状況の社内共有だ。現状では顧客対応のフェーズでデータベース(DB)やナレッジが共有されておらず、一貫した顧客対応ができていないという。そこで行うべきなのが、DBの統合だ。それにより、各部署に散在するナレッジやFAQを集約。各フェーズの対応の円滑化を目指すわけだ。
その結果、「正確な顧客ニーズの入手」や「顧客満足度の向上」、「案件の滞留防止」といった効果が期待できるという。
こうした情報の統合に役立つのが、富士電機ITソリューションが提供する「CSStream」である。
同サービスは20年以上の歴史を持つサービスであり、コンタクトセンターでの多くの知見を持っている。手厚いサポートや業態規模を問わず導入できる点が特徴である。
VoC収集ができるフリーワード検索やダッシュボード、迅速に社内共有ができるワークフロー機能など多彩な機能を備えており、企業ごとのカスタマイズも可能だという。
CSStreamを活用することで、VoCの活用を促進する体制構築が期待できるのだ。
コールセンター業務に最適なPC環境とは
最後に登壇したのは、富士通の丸子氏だ。
丸子氏が紹介するのは、コールセンター業務で担当者にストレスを感じさせないPC環境である。富士通のコールセンター業務担当者へのヒアリングを通じて導き出されたPC環境構築のポイントは次の3点である。
「①PC本体ができるだけ小さいこと」
デスクの作業スペースをできるだけ広く確保したい。ただし、ノートPCは画面が小さく、キーボードの操作性がフルキーボードに劣ってしまうため、できるだけコンパクトなデスクトップPCが良い
「②PCの処理速度が速いこと」
迅速な顧客対応のためには、作業効率の向上が重要となるため、CPUはCore i5以上、メモリは16GB以上が推奨
「③ディスプレイが大きいこと」
顧客対応時に多くの情報を確認する必要があるため、できれば24型以上の画面サイズは必要であり、解像度についても高い方が望ましいこれらを満たすPCはあるのか。
「富士通が提供する『ESPRIMO G6シリーズ』がもっともおすすめです。筐体は約0.87リットルの超コンパクトボディながら、Core i5プロセッサを搭載したハイパフォーマンスモデルで、豊富なインターフェースを装備し、ディスプレイ背面への設置を可能とするVESAキットも提供しています」(丸子氏)
極小筐体にもかかわらず、ビジネスに必要なインターフェースはひと通り装備しており、VESAキットを使うとディスプレイの背面に設置できるため、ワークスペースを快適に使うことが可能だ。
使う人のことを考え抜いた開発のこだわりはそれだけではない。
さらにPC起動時にウイルスによるBIOSへの攻撃や異常を検知し、BIOSを自動的に修復するBIOSリカバリ機能を標準搭載するだけでなく、生体認証によるパスワード漏えい対策も実施するなど、安心、かつ、利便性が高いセキュリティ対策をPC本体で実現しているのだ。情報システム部門の業務負荷軽減につながるのも嬉しいポイントと言える。
コールセンター業務は、限られたデスクスペースでスムーズな顧客対応が求められる。超コンパクトPC「ESPRIMO G6シリーズ」を導入することで、業務をスムーズに遂行し、顧客満足度の向上にもつなげられるだろう。
[PR]提供:富士通