今も昔も、またどこの、どんな企業であっても、IT環境におけるサーバーの存在は欠かすことのできないものである。さらに、”オンプレ回帰”や”ハイブリッドクラウド”という言葉とともに最近ではサーバーが注目されるシーンも増えている。“クラウドを使う”という大きな潮流を経て、あらためてサーバーを自社で検討・導入する企業も多いことだろう。
ここでは企業のIT担当者が検討する、サーバー導入時やリプレイス時の要件、重要視されているポイントなどについて、“いま”サーバーのことをどのように考えているのか、下記の5つの観点から紐解いていきたい。
- サーバーの導入形態
- サーバーリプレイスのタイミング
- サーバーの信頼性
- サーバーのコスト
- サーバーにおけるCPUの性能
参加者のご紹介
今回は、企業でサーバー関連業務に携わる方に集まっていただき、サーバーにおける選定要件やサーバーリプレイスに関する話など、リアルな現場の声をお話しいただいた。
TECH+編集長 小林行雄
半導体関連の専門誌で長年副編集長を担当し、2021年よりTECH+編集長に就任。現在は 半導体および、多岐にわたる分野の取材などを行っている。
参加者の皆様
サーバーの導入形態
――サーバーの話をする際には、欠かせないトピックである”オンプレ回帰”や”ハイブリッドクラウド”。まずは、現場の方が普段どのようにこのトピックを捉えているのか伺った。
小林:最近は、クラウドからオンプレミスに回帰するというトレンドもありますが、社内でハイブリッドが良い、オンプレメインにしよう、パブリッククラウドを利用しようというような議論はありましたか?
Nさん:オンプレかクラウドかという議論ですね。私の場合は、現行からの置き換えだったので、必然的にオンプレだったのですが、時期的に半導体不足の問題があったので、調達できなかった場合の代替としてクラウドを検討したことはあります。結果として、予定通り調達できましたが、やはりオンプレと比較すると、クラウドの方がトータルコストは高くなってしまうので、そのあたりは懸念としてあります。
小林:ランニングコストを考え、オンプレを選択しているケースは多いのでしょうか?
Nさん:大体5年サイクルでシステムを更新するので、5年で見ると、クラウドの方が高いということはありますが、10年で見たら逆転します。管理するメンバーの負荷を考えて、今後クラウドにすることもあると考えています。
サーバーリプレイスのタイミング
――何年かに1度、必ず入れ替えなければならないサーバーにおいて、実際に現場ではどのくらいのタイミングでリプレイスを検討するのか、話を聞いた。
小林:では、みなさんは何年くらいサーバーを使っていますか? 弊社のアンケート調査では、5年未満が2割くらいで、5年程度が4割弱、5年以上が4割くらいいらっしゃいました。いつ、どのタイミングでリプレイスするかについて、指針などはあるのでしょうか?
Tさん:指針は、とくにないですね。私は社団法人で管理職をしていますが、会員組織なので、会員様向けのサービスを優先して、そちらに積極的に投資していくというところもあり、内部の管理は後手になる傾向にあります。
Aさん:うちのお客さんは、DBやアプリケーションサーバーといったものに関しては5年周期で変えるので、3年ぐらい経った段階で次期システムの構想について話をします。一方、ADサーバー等に関しては、壊れたら交換しましょうというような感じで、7~8年使っているケースが多いです。
サーバーの信頼性
――サーバーの不具合や故障というのは、企業にとって最も恐れる事態だろう。だからこそ、何かあったときにすぐ対応ができる信頼性が必要になる。
小林:サーバーの信頼性をどう担保するかについては、どういう考えを持っていますか?
Iさん:信頼性を考えるときには、壊れないことはもちろんですが、壊れてもすぐ直せるマシンを選びます。いざ壊れたときに交換する部品が日本にないということで、「海外から送ってくるため、1週間待ってください」と言われたこともあります。その間、サーバーを縮退運転するしかなく、社内からクレームがありました。昨年は、半導体不足で修理に時間がかかったので、とくにそういったところを意識して選んでいます。
Uさん:信頼性という意味ではサーバーのスペックも考えますが、クラスター構成するなど、止まらないようにいろいろしくみを考えることや、震災に備えてデータセンターを複数に分けて、すぐに切り替わるような工夫しています。
サーバーのコスト
――経営上、欠かせない観点がコストである。もちろん、少しでも安いに越したことは無いのだが、現場ではどのように捉えているのか伺った。
小林:サーバーのコストに関しては、これまではイニシャルコストをとにかく抑えるという話がありましたが、パブリッククラウドを利用する場合は、ランニングコストも考えなければいけなくなってきています。このあたりのランニングコストを含めたコストの部分は、サーバー選択の際、議論しますか?
Tさん:実は現在、組織として初めてパブリッククラウドで新しいサービスを展開しようと計画しているところで、やはりイニシャルコストよりもランニングコストが非常に気になっています。経済情勢として、コスト的な高まりが出てきているなかで、今後、クラウドのランニングコストを抑えていけるのか心配しています。
Iさん:うちは電力コストを出さないと稟議が通りません。データセンターでもラックごとに何キロワット消費したのかの数字が提供されるので、サーバーを選ぶ際も電力をどれくらい消費するのか気にしています。4、5年前はそんなことはなかったのですが、現在は、購入するときに電力効率のところを期待して見込みを出さないと、経営層は許可してくれません。
小林:そうなってくると、サーバーとしても電力効率の高いものを選ばないと納得してもらえないという社風になっているということですね。
Iさん:そうですね。あとは、不要なサーバーは落とすように、新しいサーバーに仮想化で集約するように、と言われるときもあります。
Aさん:確かにサーバーのラックを立てるときに電力は大丈夫かどうか、サーバーを置く場合の電源は大丈夫かどうか、もし足りなければ工事しないといけない、などの話はあがります。
Uさん:データセンターの方も、電力供給の見積もりをしないといけないので、何台くらい今回追加するのか聞かれます。
Tさん:これまではサーバーをそんなに意識しておらず、どれを選んでも大丈夫だと考えていましたが、どれだけコストに影響してくのかという点は、今回、みなさんの話を聞いてあらためて認識しました。
小林:現在、日本のエネルギー価格が高くなってきているので、たとえば最新のXeonなど、電力効率の高いCPUの搭載が求められる傾向になってきています。また最近は、社会的課題の観点から、サスティナビリティも意識しなければならなくなり、ESG経営によって、CO2の排出量を会社全体で考えなければいけなくなっています。そうした背景から考えても、低消費電力でCO2排出が少ないサーバーに集約し、最新CPUを搭載したハイパフォーマンスサーバーにすることは、企業にとっても社会にとってもメリットとして捉えられるかもしれません。
サーバーにおけるCPUの性能
――前項でも出てきた通り、コストの観点やCO2排出量などを考えれば少しでも電力効率が良いCPUが理想といえる。実際に現場ではCPUをどのように意識しているのだろうか。
小林:サーバーを選択する際、CPUの性能は気にされますか?
Aさん:そうですね。インテルと競合他社の2択というのは、昔も今も変わらないですが、競合他社の場合、熱量の関係でCPUのヒートシンクを強くしなければならない、ファンを大きくして冷やさなくてはいけない、どのようにして筐体内部の温度を下げるのか悩む、といった話もよく聞きます。インテルの場合はそこまでの発熱はないので、そういった意味で熱暴走しにくいインテル製のCPUが搭載されたサーバーを選んでいると思います。
小林:今後はIoTを含め、いろいろなデータ処理をするといったときに、今まで必要なかった部分のサーバー性能が必要になってくることは出てくると思います。そのあたりも含めて、サーバー選定、CPU選定というのは必要だと思います。
Nさん:現在は、CPU性能を使い切るまでには至っていませんが、アプリケーションやミドルウェアがCPUの性能を引き出すような作りに変わり進化していくと、CPUに対する要求も高まると感じます。
小林:おっしゃるとおり、どれだけCPUの性能が高くても、足りないというケースは出てくると感じます。最新のXeonでは、用途に特化して性能をアップさせるアクセラレータが載っていますし、今後CPUの機能が増えていくことによって、選定の基準がどんどん変わってくるというのが、最近のトレンドでしょう。
Tさん:ストレージの影響など様々な要因があるので、CPUだけでパフォーマンスの結果を出せるものではないと思いますが、CPU性能については、選択の基準のひとつだと思います。
Uさん:CPUやメモリは、本当にどんどん進化していて、逆にアプリケーションが使い切れていないと思います。ただ、AIを利用していろいろなデータを分析してみたいと考えているので、そういう面でCPUやメモリの技術革新という点が、データを活用したいというきっかけになると思います。
小林:これまでも技術の進歩を活かして、“経済性を良くしよう”と試みてきました。たとえば、何台かを1台のサーバーにまとめられるという点を考えると、最新CPUを搭載したサーバーを利用することで、消費電力が下がるわけです。こういう観点から考えても、サーバーの技術革新が重要な部分であるという点は変わらないと思います。今後、サーバーを集約していくことを考えると、CPUのパフォーマンスをうまくシェアして使えるようになる点への期待も大きいと思います。
Nさん:CPUという意味でいうと、エンタープライズの現場ではインテル以外のCPUを使うケースは少ないと思います。それは、OSには対応していたとしてもミドルウェアやアプリが対応していなかったりする面があるからです。そういったところも含めて、動作を保証するベンダーの存在が必要だと思います。
小林:CPUだけでなく、サーバーを取り巻く環境は、この数年でガラリと変わってきました。電力の問題もそうですし、爆発的にデータが増えているという話もそうです。そういった意味では、その中心にいるのがサーバーであることに変わりないはずで、今後は高い性能を持ちつつも、電力を抑えられるCPUを搭載したサーバーを選ばれる場面も増えてくるのではないでしょうか。本日はありがとうございました。
実際にサーバー関連業務を担当されている方を招き、選定要件などについて伺ってきた。今後サーバーを導入する際、もちろん用途にもよるが、信頼性や電力効率の良さ、消費電力性とコスト、さらにはソフトウェアの進化に備えた性能面の充実も選定要件になるなど、現在のサーバー選定にはあらゆる角度からの検討が必要だということだろう。
なかでもサーバーに搭載されているCPUは、とても重要な選定要件のひとつであるということはあらためて確認できる内容となった。サーバーに必要とされる様々な要素を満たすインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーの動向には今後も注視していきたい。
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