AI/機械学習(ML)の活用を組織全体に広げて生産性を高め、ビジネス上の価値を生み出していくにはどのような施策が求められるのだろうか。AIプラットフォームのリーダーであるDataikuで金融・通信・エネルギー営業部部長を務める中村祐樹氏は、AI/MLの民主化こそがポイントだと話す。2022年11月10、11の両日に開催された「TECH+ EXPO 2022 Winter for データ活用 戦略的な意思決定を導く」において、中村氏は「世界の金融企業が実践するAIを活用した業務生産性の向上の取り組み」のタイトルで講演を行った。この講演をつぶさに聴けば、AI活用を社内に浸透させるヒントが得られるに違いない。

Dataikuとはどのようなプラットフォームか

Dataikuは2013年にパリで創業した企業であり、かつ同社がリリースするAI/MLプラットフォームの名前でもある。「Data」と「Haiku(俳句)」の合成語というから、日本と無縁ではない名称だ。同プラットフォームは現在500社以上が採用。同社は後述するように「Everyday AI」というコンセプトを掲げ、このプラットフォームでAIの民主化を支援している。 中村氏は、Dataikuの特長と主な機能を解説した。

特長については、

  1. データ分析の全プロセスが1つのプラットフォーム上で完結する
  2. Pythonなどでコーディングができるユーザーだけでなく、クリック操作が中心となる一般のビジネスユーザーも扱うことができ、多様な役割の人材がコラボレーションできる
  3. モダンなユーザーインターフェースで、直感的に操作できる

の3つを挙げ、「これらが、Dataikuがグローバルで大きく支持を得ている理由です」と語った。

  • Dataikuで機械学習の全プロセスをカバーできる

特長の1つ目に挙げられているように、DataikuはAI/MLの全プロセスをカバーする。すなわち、データ準備に始まり、モデル開発、可視化・共有、本番環境への展開、そして運用監視までのすべてを、2つ目の特長で記した通りコードの記述で、あるいはクリック操作で、さらにはコーディングとクリック操作を組み合わせた形でも実行することが可能だ。

Dataikuの主要機能をチェック

まずはデータ準備について。Dataikuは、クラウド、オンプレミス、Webサービスなどさまざまなデータソースと簡単に接続できる。データパイプラインもビジュアルで確認しながらインタラクティブに作成可能で、特徴量エンジニアリングでは高度な加工まで行える。前述のようにクリック操作でも実行できるが、「SQLを書く人は 、クリック操作と併用することで生産性が飛躍的に向上します」と中村氏は説明した。

Dataiku 金融・通信・エネルギー営業部部長 中村祐樹氏

Dataiku 金融・通信・エネルギー営業部部長 中村祐樹氏

モデル開発については「AutoMLは完全にノーコードで行えます」と中村氏。予測や分類のモデルがわずか3クリックで作成できるうえ、予測モデルの説明性の機能も豊富で、モデル予測に影響を与える要因の理解もできるようになるという。また、モデル評価が可視化され、ユーザーが最適なモデルを決定するのに役立つほか、モデルの透明性・公平性を担保する機能も備えている。

AI/MLで分析した結果の可視化と共有も多彩な方法で手軽に実施できる。ダッシュボードを作成して確認や共有ができるほか 、さまざまなBIツールやWebアプリケーションとの連携、データセットのエクスポート、API連携などに対応し、共有したデータを効果的に活用できるようになっている。また、モデルの精度は劣化していくこともあるが、これを防ぐため、モデル性能の継続的な監視・評価やより良いモデルへの自動変更機能も搭載。AI分析をビジネスでより有効に活用することが可能だ。

AI民主化を表すコンセプト“Everyday AI”

前述のように、同社はこのDataikuというプラットフォームを企業・組織が「Everyday AI」を実現するために開発していると中村氏。同社が提唱する「Everyday AI」とは、社内の限られた部門だけでなく、あらゆる部門においてセルフサービスでデータを当たり前のように活用し、最適な意思決定を実現するという世界観だ。

  • Exeryday AI(AI活用の民主化)のイメージ

その前提となるのが、AIモデルが本番環境において持続的に価値を生み出せるような稼働であり運用である。Dataikuはまさにこの部分も含め、ユーザーのAI分析と活用をサポートするプラットフォームになっている。

中村氏は「すでに世界中の数多くの企業がこうした世界を目指し、AI/MLの活用を推進しています」と話し、Dataikuを導入して「Everyday AI」の実現に取り組んでいる欧米の金融機関や保険会社の事例をいくつか紹介した。

金融機関が抱えるデータ活用の課題とは

中村氏は、金融機関がデータ活用の推進に際して具体的にどういった壁に当たり、どのような悩みを抱えているのか、またそれらの課題をDataikuでどう解決できるのか、大きく3つに分けて解説した。

  • 金融系のクライアントが抱えるデータ活用の悩み

1つ目は「データの集計と見える化で精一杯」という悩みだ。AIを活用したいと考えてはいても、データが社内に散らばっていて一元管理されておらず、利用する際も必要なデータを手動抽出してExcelに貼り付けている企業は、いまでも少なくない。また、BIツールを導入してはみたものの利用が広がらず、ダッシュボードすら見られていないという悩みもあるようだ。

まず前者の課題に対して中村氏は、カナダロイヤル銀行の監査部門の事例を挙げた。同行では監査対象組織が年400を超える。これまでリスク評価にはExcelとPythonを使っていたが、手動の作業が多く膨大な時間がかかっていた。しかしDataikuを導入したことで、400以上あるデータベースとのデータパイプラインを整備。リスク評価を常に行える状態とし、Excelの全作業の自動化とコーディング工数の90%削減を達成して生産性を高め、リスクが高い組織にデータドリブンな内部監査を行えるようになったという。

一方、BIの課題については、セルフサービスでのデータ分析が広がらない原因の一つとして、分析しやすいデータがタイムリーにユーザーへ提供されていないことがあると指摘。この課題について、正確で分析しやすいデータを提供するDataikuなら解決できると中村氏は話した。また、ダッシュボードをなかなか見てくれないのは、アクションにつながるコンテンツが可視化されていない可能性があり、これもDataikuであれば将来予測や購入確度の高い顧客リストなどを盛り込めるためデータ活用が進むだろうと語った。

2つ目は「データサイエンティスト人材がいない、すぐに育たない」というもの。いうまでもなく市場価値の高いデータ人材の採用は困難であり、育成も一筋縄にはいかない。この課題について中村氏は、英国系シンガポールの銀行であるス タンダードチャータード銀行の事例を挙げた。同行ではCoE(Center of Excellence)を立ち上げ、AIプラットフォームにDataikuを採用して、あらゆるスタッフがDataikuにアクセスできる仕組みを構築した。さらに全部門にDataikuを活用した市民データサイエンティスト育成トレーニングを提供。データを活用するユーザーのコミュニティも盛り上げた。結果、わずか2年でトレーニングの需要が4倍となり、プラットフォーム利用者も2倍に増加したという。Dataikuにより多くの従業員の容易なデータアクセスが可能になることで、データ活用は進むという好事例だ。

AIを導入しても本番運用できないという悩み

そして3つ目は「取り組みは進めているものの業務に適用できない」という課題である。AIを導入しても効果が出ず、AIが出した答えがブラックボックス化しているためその結果に確信が持てず 、意思決定や具体的アクションまでつながらないというケースはよく聞かれる。また、AI予測モデルを作ったものの精度を定期監視していないため、結果としてモデルを信頼できず、本番運用まで至らないケースも少なくない。

この点について中村氏は「Dataikuなら(主要機能のモデル開発のところで説明した)予測モデルの説明性の機能によりモデルの理解を深められ、信頼できるようになります。また、統計解析結果のダッシュボードによる可視化や、モデル開発者・利用者・その他関係者が情報を共有できるコミュニケーション機能によって透明性も担保できます」と説明した。

加えて、1つのプラットフォーム上で全プロセスをカバーするDataikuによりMLOpsの仕組みを実現することで、本番稼働を促進すると指摘。すべての人が同じ環境にアクセスしてコラボレーションできるところも、Dataikuならではのメリットだと強調した。 このあとDataikuの製品デモが行われ、中村氏の講演は終了した。

関連リンク

● Dataikuについて:https://www.dataiku.com/ja/
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