2022年7月20日、Webセミナー「情シスと現場のための内製のススメ 〜Forguncyで踏み出そう!現場と一緒に推進するDX〜」(グレープシティ株式会社主催)が開催された。本セミナーでは経産省の和泉氏による、DX成功の秘訣が提示されたことに加え、グレープシティが開発・販売するノーコード開発ツール「Forguncy」によるシステム内製で変化に適応したビジネスを展開している企業の成功事例も紹介され、多彩なヒントがちりばめられたイベントとなった。

いま企業が考えるべきデジタル技術とデータ活用のポイント

プログラム最初の基調講演は、講演とパネルディスカッションの2部制で行われた。まずは経済産業省 商務情報政策局・情報経済課 アーキテクチャ戦略企画室長の和泉 憲明 氏が、「DXレポート」を執筆した担当官としての立場から企業のDX推進状況について語った。

  • 和泉氏

    経済産業省 商務情報政策局・情報経済課
    アーキテクチャ戦略企画室長
    和泉 憲明 氏

最初のトピックは、DXがなぜ必要なのか。和泉氏は、世の中は変化したにも関わらず、企業に古いシステムが残っているのはおかしいと指摘。既存産業はパイを奪い合う世界で、しかも市場は縮小している一方、新たなエクスペリエンスを提唱するデジタル産業の世界はクラウドでデータを活用し、インターネットでスケールするグローバルなビジネスを展開していると話した。

では、データを活用するとは一体どういうことか。 和泉氏は、「街灯の下で鍵を探す問題」を引き合いに出す。この状況は多くの企業で起きているため笑い飛ばすわけにはいかないとし、「まずはわかりやすい部分や手元のデータからやってみようと考える時点で、すでにDXから外れているかもしれません」と指摘した。 そして、大事なことはデジタルで経営をどう変えていくか、自社の製品やビジネスを売るためいかに工夫し、自社を成長させていくかを考えることであり、そのためには自社の強みを内製化により強化していくこともポイントになるとした。

最後に、「DXレポート」はDXという用語を広めたものの、手段・ツールといったわかりやすさだけが注目される傾向にあり、真のDXはなかなか進まないと指摘。「着実にDXを推進できる仕組みと明確な方法を知らせ、具体的なアクションを起こすための指針として、ビジョン駆動、価値重視、オープンマインド、継続的な挑戦、経営者中心の5点を打ち出す『デジタル産業宣言』をまとめています」と話し、冒頭の講演を終えた。

  • パネルディスカッション

    左から
    株式会社マイナビ TECH+編集長 星原 康一
    グレープシティ株式会社 Enterprise Solutions事業部 製品企画部 Forguncy プロダクトマネージャー 大島 治彦
    経済産業省 商務情報政策局・情報経済課 アーキテクチャ戦略企画室長 和泉 憲明 氏

パネルディスカッションに移行しグレープシティ株式会社 Enterprise Solutions事業部 製品企画部 Forguncyプロダクトマネージャー 大島 治彦 氏の問いに和泉氏が答える形で話題が展開された。モデレータは株式会社マイナビ TECH+編集長の星原 康一 氏が務めた。

大島氏は「当社はノーコードツールのForguncyを提供しており、顧客も自分たちでDXに取り組んだり、システム構築を行っていこうという意識の強い方が多い。そういった方が悩んでいる点として、組織の壁で取り組みが小さくなってしまうとよく聞きます」と話を切り出した。 和泉氏は、組織の壁を取り払う役割はやはり経営トップであるとし、「シリコンバレーの経営者はシステムを入れる際にも大きなビジョンでテクノロジーを語りますが、日本の経営者はすぐ『それ食べられるんですか、おいしいんですか、安いんですか』とわかりやすいことにフォーカスします。本当は会社のビジョンを経営者が示さなければならないにもかかわらず、効果やコストの議論をしてしまうと話は進みません」と応えた。 これに続き、改善を進めていくうえで現場ではなく全社を巻き込むべきだ、できるだけ広くデータで全体を俯瞰すべきだ、インフラとサービスはしっかり区別すべきだという話題に展開。データ活用について和泉氏は「データで見えない範囲まで見えるようにするというと誤解がある。 見えている範囲をデータでもっと見えるようにしようというイメージを持つほうが、データ活用をすっきりおこなえる気がします。要は、何を可視化したいか。宝物は埋まっているものしか掘り出せないので、目的や明確なゴールがないと、永遠に砂場で遊び続けることになりかねません」と話した。

最後に大島氏がForguncyについて紹介。和泉氏はノーコードツールについて「プログラミングレスで簡単にアプリを開発できるツールというより、眠っているデータを運用できるようにするツールであり、やはりそのデータをいかに使い、何を目指すかを考えることが大切になると思います」と語った。

Forguncy導入からわずか4年でDXセレクション2022に選定

後半は、Forguncyを導入する企業が自社における内製の取り組みを紹介した。

初めのセッションは、株式会社テック長沢 専務取締役の長澤 博 氏による「中小規模の“ものづくり”企業が、内製で実現したDX」。新潟県柏崎市に本社と工場を構える同社は、自動車や産業用設備などに関わる部品の切削加工などを手掛ける企業だ。

  • 長沢氏

    株式会社テック長沢
    専務取締役
    長澤 博 氏

Forguncy導入前は製造業向けパッケージの基幹システムをカスタマイズして使い、業務ではExcelを広く利用していたという。情報システム担当者は長澤氏1人、それも他の業務との兼任で、長澤氏自身プログラムの経験が少々ある程度だったという。 そんな同社が2018年5月にForguncyを導入し、わずか4年で経済産業省から中堅中小企業のDXのモデルケースとして「DXセレクション2022」に選定されるまでに至る。

「以前も、Excelでできない部分を他のシステムでできるようにすれば便利になるといったアイデアはあったのですが、自社では作れず、とはいえ外注するのは予算的に厳しかったので、アイデアは現実化していませんでした」と長澤氏。 それがForguncyによるWebシステム内製化を実現し、アイデアに挑戦できる環境に変わったと語る。厳密な要件定義をせずともアジャイルに開発し、試して、役に立ちそうなものだけ実装するスタイルとなり、IT化が一気に前進した。 いまForguncyで23本のWebシステムが動いている。基幹システムや会計、勤怠管理ソフトで集めたデータをForguncyで蓄積したデータと結びつけて、さまざまなデータ分析も実現。誰もが簡単に使えるように工夫した結果、社内でForguncyファンが増え、生産性向上も実現したという。

現場発で始めるデジタル業務改革に適したシステム開発基盤

続くセッションは、株式会社ダイフク オートモーティブ事業部IT業務Gの篠原 健吾 氏による「シチズン・デベロッパーによるシステム化促進」。物流システム事業で名高く、世界26カ国・地域にグループ会社を展開するダイフクでは、中期経営計画に基づくデジタル化推進の一環としてForguncyによるシステム開発促進活動をおこなっている。

  • 篠原氏

    株式会社ダイフク
    オートモーティブ事業部 IT業務G
    篠原 健吾 氏

活動を進めていく中で、外部ベンダーが開発したシステムに社内で対応できないものがある、慣れ親しんできたアプリ基盤が老朽化しているなど、多様な問題があがってきたという。これらに起因するデジタル化の遅れ、ユーザビリティ悪化、データ活用の停滞といった課題を解決するため、システム内製化により業務改善を進め、基盤の老朽化については新たに構築することを決定。開発対応が間に合わない案件はノーコードツールで現場自ら開発に取り組めるようにした。 こうした背景からForguncyを導入。「学習コストが少なく、スピーディーに開発でき、幅広い要件に対応できるWebシステム開発基盤であることを評価しました」と篠原氏は説明する。

また会社にあるほかのシステムのデータを活用し、ERPや生産管理システムのシステムとの連携することが必須であり、これを実現することで初めて業務改善につながると訴えた。そこでユーザーから見えるフロントエンド部分を現場開発者がForguncyを使用して開発をし、 その他のデータベース等のバッグエンド開発は、IT担当者がサポートするという体制で取り組み、分担をすることでよりよいシステム化につながったという。

Forguncyによる開発実績として、タイトル通り実業務の現場担当者自ら開発した案件を中心に紹介。品質レポートアプリ、出荷管理データベース、物流管理台帳、日報管理など18個のアプリをForguncyで開発したとのことだ。「最初はブラウザという言葉もわからなかった現場社員が、独学で18個ものWebシステムを開発した点を見ても、Forguncyは本当に開発しやすい基盤だと認識しています」と篠原氏は評価した。

ビジョン実現に向けたプロトタイプのメインツールに採用

3つ目の事例は、日本ゼオン株式会社 総合開発センター デジタル研究開発推進室 主任研究員の和田 梓 氏による「プロトタイプ内製の価値と課題・解決策」だ。合成ゴムや化学品、プラスチックの開発製造を中心にグローバルで事業を行う化学素材メーカーの同社では、DXの実現で新たな顧客価値の創造を目指している。基調講演にあったようにDXを単なる手段・ツールとしてではなく、“ありたい姿”を定め、ビジョン駆動で進めているといえる。

  • 和田氏

    日本ゼオン株式会社
    総合開発センター デジタル研究開発推進室 主任研究員
    和田 梓 氏

「顧客価値創造につなげるには、課題の本質を捉え、顧客も気付いていない真の要求を導き出すことが重要です」と和田氏。その本質を捉えるために業務モデリング力とデータモデリング力を養い、課題と解決策を見出すサイクルを素早く何度も回すことを考えている。 このサイクルを回すプロトタイプを内製しているが、内製のポイントは、現場の担当者主体で構築・管理、アジャイル型プロセスで開発し、システムを入力・出力・データベースの3つに分離して個々に改善すること。そしてプロトタイプのメインツールとして、現場担当者でも簡単にシステム構築できるForguncyを利用している。

「Forguncyは学習のハードルが低く、プログラミング知識がなくても簡単にシステムを構築できる点、外部データベースと連携できるなど機能が充実している点、専用のWebサーバーで簡便にWebアプリ化できる点などを評価し採用しました」と和田氏。複数のノーコード/ローコードツールを調査した結果、求める機能に合致しているうえ、ITリテラシーの観点からもForguncyが最も合っていると判断したという。

スピード感あふれるシステム開発が会社の強みを最大化する

最後のセッションは、株式会社共進ペイパー&パッケージ ハコプレ事業部の中北 陽子 氏、「スピード感のある新規開拓を成功に導いた『攻めのIT』の内製化」だ。

  • 中北氏

    株式会社共進ペイパー&パッケージ
    ハコプレ事業部
    中北 陽子 氏

同社は紙パッケージや段ボールの設計から製造、アセンブリまで対応。最新デジタル製造技術により小ロット・多品種・短納期・低コストでの提供を強みとしている。 中北氏は、クラウドファンディングなどをターゲットに立ち上げたハコプレというサービスを提供する部門に所属。小ロット・多品種となると販売単位・単価は当然小さくなり、より多くの件数を効率よく集め、効率よく製造することが求められる。同社の強みを活かすためにWeb受注や自動化の仕組みを取り入れ、最小限の受注コストで成果を上げてきた。

多様なターゲットを対象に事業を行っているが、以前はシステムを外注していたため、スピード感のある対応ができず、アイデアも迅速に事業化できないのが悩みだった。「そんな中、2020年にForguncyを知り、内製化を始めたところ、一気にプロジェクトが加速するようになりました」と中北氏。同社はパッケージで顧客の課題を解決するというミッションを掲げているが、Forguncyによってそのミッションを組織的に実現できるようになってきたという。

「Forguncy導入で感じたメリットは、不確実性が高い案件でも積極的にトライできるようになったこと、迅速かつニーズに合った提案・導入が可能なこと、自社の強みを生かしたシステムが構築できることの3点。いまはさまざまなシステムをForguncyで再構築し、さらに強みを発揮できる環境を整えているところです」と語った。



【関連URL】
株式会社テック長沢 導入事例ページ
https://www.forguncy.com/case/tec-naga
株式会社共進ペイパー&パッケージ 導入事例ページ
https://www.forguncy.com/case/kyoshin-pk

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