193の国連加盟国が2030年までの達成を目標として掲げた「SDGs(持続可能な開発目標)」は、ビジネスにも大きな影響を与えている。なかでも「目標12 つくる責任つかう責任」は、社会にモノを供給する製造業・メーカーにとって重要な目標となっている。

この目標を達成するためには、「どのように原料を調達しているのか」「再生可能エネルギーをどれだけ利用しているか」「武装勢力の資金源となっている資源で生産をしていないか」「温室効果ガスをどれだけ排出しているか」といった、サプライチェーンにおける品質情報を共有できる仕組みづくりが不可欠となる。また、品質不良の発生やリコールといった有事の際の消費者への迅速な対応を実現するためにも、サプライチェーン全体で品質情報を共有することは重要だ。こうした背景から、サプライチェーンマネジメント(SCM)の見直しに取り組む企業が増えてきている。

もともとSCMの枠組みのなかで、受発注・在庫・生産計画など、企業間・社内他部門間で授受しなければならない情報は膨大なうえに、グローバル化やBCP対策などによりモノづくりに関わるサプライヤは増加の一途を辿っている。このように扱うべき情報と参画プレーヤーが増加する中で、データを一元管理し、リアルタイムに状況を把握する仕組を構築するのは極めて困難なミッションといえるだろう。

  • 多様化するサプライヤと不透明な品質情報のイラスト

X-Chainを活用し、「データ交換」から「データ共有」へ

これまで企業間の情報連携はメールや電話、EDI(電子データ交換)などによる「1対1のデータ交換」が主流となっていた。しかし前述したように、SCMの冗長化(多層化)やサプライヤの多様化といった課題が顕在化している現在において、データ交換を軸にサプライチェーン全体を管理する考え方はすでに限界を迎えている。1カ所にデータを集める中央集権型のデータ交換では集約するサーバーに負荷がかかり、複雑化したネットワークに新たな取引先のシステムを追加するのも困難。このため「データの交換」ではなく「データの共有」を軸とした仕組みが重要となる。そこで推奨したいのが、総合ITサービス企業TISが提供するブロックチェーンソリューションの活用だ。

ブロックチェーンとは、データを相互に管理する分散型台帳技術で、「トレーサビリティの実現」「耐改ざん性の担保」「単一障害点の回避」「変更履歴の共有」といった製造業におけるデータ共有に求められる要素を備えている。ビジネスにおいては、データの共有先をコントロールすることは必要不可欠だが、TISが提供するブロックチェーン技術を活用すればビジネスプライバシーを担保した「動的なデータ共有」にも対応可能だ。品質情報を含めたサプライチェーン全体のデータ共有を、透明性と秘匿性を確保しながら実現できる。

  • ブロックチェーンを活用した動的なネットワークの図版

多くの企業がすでにブロックチェーンネットワークの構築に取り組んでいるなかで、サプライチェーンを構成するすべてのサプライヤを1つのブロックチェーンネットワークに集結させるのは容易ではないだろう。結果として個別に構築したローカルなネットワークが点在し、サプライヤによっては複数の企業(ネットワーク)に同一情報の提供が求められることになる。せっかくブロックチェーンを活用しても、これでは「データの交換」が発生してしまい、非効率的だ。こうした問題を解決するには、ローカルなブロックチェーンネットワークを繋いで情報収集範囲を広げていくのが現実的なアプローチといえる。そこでTISでは、異なるブロックチェーンネットワークを接続する仕組み「X-Chain(クロスチェーン)」を提供している。このように企業のブロックチェーンネットワークの構築を支援するだけでなく、サプライチェーン全体における動的なデータ共有の実現を強力に支援している。

  • クロスチェーンの図版

TISのユースケースから見えてくる、ブロックチェーンの具体的な利用シーン

TISの提供するブロックチェーン技術がSDGsへの貢献だけでなく、どのようなビジネスメリットをもたらすのかを、船舶燃料業界にプラットフォームとして導入された事例から確認していきたい。

船舶燃料業界の多くの企業では、これまで燃料・潤滑油・船用品の受発注を電話・FAXで対応、船上で手書きの納品書を作成するなどの紙ベースの情報管理を主体としてきた。そのため情報伝達の遅延と手書き文字の誤認識などのミスが多発していたという。

  • 事例Before(紙の情報交換に改ざんできないメリットはありながらも課題を抱えている)イラスト

そこで総合商社がブロックチェーンによるプラットフォームを構築し、国内の貨物船各社や燃料サプライヤ、燃料配給船各社が参画することで、すべての手続きをデジタル化することに成功。対改ざん性が保証されただけでなく、検索性も向上したデータ共有を実現した。対改ざん性を担保したままデータを保持(共有)できるようになったことで、直接の取引先だけでなく下請先、作業委託先など、多岐に渡る取引関係者にのみに補油に関する情報が開示されるようになった。また、こういった業務仕様に基づき共有先をダイナミックに設定するための設計方式に関する特許を同社は申請済みだという。

  • 事例After(TISブロックチェーンを活用している)イラスト

本事例からもわかるように、TISのブロックチェーン技術を活用すれば、異業種の複数企業が互いに情報を連携し、自社の所管外の情報を把握できる仕組みを構築できる。これにより品質問題が発生した際の原因究明の迅速化や企業をまたいだ在庫確認の効率化など、さまざまなメリットを享受できるようになる。このようにデータ管理の透明度を上げることで、サプライチェーンの強靱化・高度化を実現する。

TISが提案するブロックチェーン活用が、”持続可能な開発”を実現する

品質情報の共有を実現するブロックチェーンネットワークを構築できれば、サプライヤが享受できるメリットも大きいため、前向きに参画を検討してくれることが期待できる。最終的に業界全体のプラットフォーム基盤をいち早く築ければ、先駆者としての信頼性を獲得すると同時に業界にイノベーションをもたらすことになる。もちろん最初から業界全体を巻き込むことが難しくとも、まずは既存の取引先と始めることによって、SDGsへの貢献とともに、業務改善・効率化・コスト削減に繋がっていくはずだ。さらに品質情報を含めた、さまざまな情報の共有は中長期的な新規ビジネス生み出す源泉となり得る。「研究開発やイノベーションに従事する職業人を増やす」ことも、SDGsが掲げるターゲットの一つだ。

  • ブロックチェーンを活用してSCMを構築するメリット

企業間の垣根を越えて、品質情報を含めた動的なデータ共有を実現するTISのブロックチェーンソリューションは、”持続可能な開発”という一見アンビバレントな理念を実現するための重要な鍵となる。これまで多くの業界においてPoCの検討から検証までの実績をもつ同社では、さまざまな業種に向けてブロックチェーンの活用による品質情報の共有がもたらす効果を最大化するための提案を行っている。サプライチェーン管理や企業間の情報連携に課題を抱えているのならば、ぜひ一度相談してみてはいかがだろうか。

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