• 登壇者3名の集合写真

    左:マイナビニュースTECH+ 編集長 小林 行雄氏
    真ん中:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 アーキテクチャ戦略企画室長 和泉 憲明氏
    右:アンシス・ジャパン 技術部 シニアマネージャー 坪井 一正氏

2021年9月8~10日の3日間、製造業向け各種シミュレーションソフトウェアで知られるアンシス・ジャパン株式会社(以下、アンシス・ジャパン)主催のオンラインイベント「Ansys INNOVATION CONFERENCE 2021」が開催された。製造業DXにおけるシミュレーション技術活用という視点のもと、8日は「Automotive Day」、9日は「Digital Transformation Day」、10日は「Electrification/5G Day」というテーマを設定。識者とアンシス・ジャパンのキーパーソンによるセッションや、国内外でのAnsysソリューション導入事例紹介など多彩なプログラムが実施された。本記事では10日に行われたスペシャルセッション「ニューノーマル時代の国内製造業におけるDX推進」の模様をお送りする。

日本の製造業では真のDXがまだまだ進んでいない

このスペシャルセッションには、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 アーキテクチャ戦略企画室長で2018年に最初のDXレポートを、2020年にDXレポート2を取りまとめ、デジタル産業政策に携わる和泉憲明氏と、モノづくり現場の革新をシミュレーションの立場で支援してきたアンシス・ジャパン 技術部 シニアマネージャーの坪井一正氏が参加し、モデレーター役のマイナビニュースTECH+ 編集長、小林行雄氏の進行のもとディスカッションが進められた。

小林氏の写真

モデレーター役の小林氏。パネルディスカッション撮影後も議論は続いた

小林氏はこれからのニューノーマル社会において、本格的な5G活用を見据えつつ、日本の製造業の現場でなぜDXを進めなければいけないのか、とディスカッションの方向性を提起したうえで「そもそもDXとは何か」と切り出した。和泉氏は「DXとはデジタルを使ってある種の産業革命を成し遂げることが本来的な目標であり、D(デジタル)よりもX(トランスフォーメーション)すなわち完全に変革するという意味のほうがより大切な概念です。しかし現状はむしろ反対の方向に進んでいると感じています」と語り、デジタルによる変革は進んでおらず、むしろ既存のITシステム、ビジネスモデル、経営方法が足かせになっているとの認識を示した。

一方、30年にわたり製造業の現場を見てきた坪井氏は「デジタルを使って産業革命を支援するというシミュレーションの使命に関して顧客からさまざまな問い合わせや相談を受けています」と話し、その一例としてデジタルツインを挙げた。「IoTで集めた現場のデータを基に仮想空間でリアルを再現するデジタルツインが注目されていますが、センサーなどで取得できる物理的なデータ量にはどうしても限りがあるので、その部分をシミュレーションで補完できます。これにより、例えば製造ラインで数分後、数時間後に何が起きるのか、予知保全の観点で予測することが可能になります。こうした形でシミュレーションが関わるDXが、まさにいまグローバルで起きています」と語った。

製造業DXの現状、そして未来に向けて必要なものとは

これを受けて和泉氏は「デジタルツインやそれを支えるシミュレーションはDXの実現に向けてキーになる技術です。しかしあくまでも道具であり、使うこと自体が目的化してしまうとそもそもの目的が見えなくなります」とし、DXの目指すところは変革と新たな価値創出であることを強調した。

和泉氏の写真

日本のDXの現状について的確な指摘をする和泉氏

コロナ禍で日本の製造業が史上最高益を更新しているものの変革によって急成長したアップルやグーグル、マイクロソフトといった海外のプラットフォーマーとは異なり、単にコロナ後を見据えた"景気の先食い"の可能性もあると和泉氏は表現。「業界団体の調査によると、なんと40%の企業が"自社はDXのトップランナーである"と答えています。ところがDX推進指標などを用いて評価すると、実際にDXができている企業は、最新の速報値でもわずか8%。経営側からすればわが社はよくやっている、むしろ攻めていると見えるのでしょうが、実はデジタル担当部署を立ち上げたとか、担当役員を決めたとか、そうした範囲にとどまっており、現場はほとんど変わっていないのが現状ではないでしょうか」と指摘した。

その現場では、シミュレーションの活用という観点でいま何が起きているのか。坪井氏は「コロナ禍でリモートワークがニューノーマルとなり、これまでの大部屋で議論しながらモノづくりをしていこうという形ではなく、デジタルな情報をベースにモノづくりをしようという方向に大きく変わらざるを得ない状況になっています。まだまだ道半ばかもしれませんが、これは後戻りせず、着実に前に進んでいくでしょう。実際にシミュレーションのデータやモデルの活用および管理に関する問い合わせが増えており、ニーズの高まりを感じています」と話す。

小林氏は、ではDXへの第一歩としてどうすればいいのかと尋ねた。和泉氏は「デジタルに関する取り組みを短期、中期、長期に分け、短期で解決できることはお金をかけてでもすぐに実行し、中長期で検討すべき課題も先送りせず、スピード感を持って始めるのがポイントです」と答えた。坪井氏も「現場が先陣を切り、リーダーシップを持って取り組んでいくことが重要。現在のプロセスを引きずるのではなく、まったく新しいものに作り直し、ブレイクスルーするという発想で大きな変化に挑むことが必要だと思います」と語った。

5Gの実用化で製造業の"戦い方"が変わる

カンファレンス3日目のこの日は「Electrification/5G Day」と銘打たれている。小林氏は現場を変えるという話題を引き継ぎ、製造業がDXを推進するうえで5Gにはどのような意義があり、どのような価値を生み出せるのかと問いた。

坪井氏の写真

これからの製造業について熱く語る坪井氏

これについては、まず坪井氏が今後の可能性を披露した。 「従来のシミュレーションは、企業に属する現場の人たちが使うにとどまっていました。しかし5Gの世界では、データやモデルがどの場所にあっても柔軟に利用できるので、特定部署の現場という範囲を超え、さらには企業の枠も超えて、産業界はもちろん学術界も含めた広い範囲で協調して活用でき、そのうえで新たなプロセスの構築も可能になっていきます。そうした動きが広がっていけば、例えば一つ一つの製品をオーダーメイドで作っていくようなモノづくりの世界が将来実現されるでしょう」

和泉氏はこれを補足する形で次のように話した。
「これまでITやクラウドといった分野は"大容量・高速"で競争してきましたが、5Gにはそれに加えて"低遅延"というところにネットワークのテクノロジーが踏み出してきました。低遅延は、日本の製造業の強みに直結しています。従来の大量生産・大量消費という文脈ではなく、多品種少量生産によって昨今の激しい環境変化にしなやかに対応している企業が確実に生き残っている状況を見ると、5Gの低遅延が大きな産業変革をもたらす可能性があると期待しています」

小林氏は「製造装置からのフィードバックによる工場内のインテリジェント化にとどまらず、5Gを活用してエンドユーザーが実際に使っているデータを取り、それをフィードバックしてより良い製品の企画・開発につなげ、いかに価値を提供していくか。つまり、"戦い方"が変わるということですね」と指摘。和泉氏はそれを肯定したうえで、「自分たちはB2BだからB2Cとは違うんだ、などと言っているとおそらく呑み込まれてしまいます。B2Cまで考えて初めてデータで横串がつながる。そして、製品の機能だけでなくエンドユーザーの使い勝手も含めたポジティブフィードバックをどういうスピード感で取り込んでいくかが、これからの競争原理になるのではないでしょうか」と語った。

現場のリーダーシップが何よりも重要に

  • 笑顔の登壇者3名

    本番時の登壇者の様子。談笑もありつつ有意義なセッションが繰り広げられた

このように"戦い方"が変わる中で、シミュレーションをどのように活用していくことが必要になっていくのだろうか。坪井氏はこう話す。

「モノづくりの方法が変わり、新たなビジネスモデルが登場してくる世界では、AIなど新しい技術をどう取り込むかが重要になってきます。AIにはデータが必須。そのデータをすべてリアル世界から取得するのは限界がありますが、シミュレーションを使えば多彩なパターンを踏まえたデータを大量に生成し、AIに学習させることができます。従来のように設計プロセスの中だけでなく、データ生成装置として活用する方向性もあると考えていますし、実際に当社も、実機で起きていることとシミュレーションのモデルでできたものを融合させるアプローチに取り組んでいます」

これを受けて、和泉氏は次のように続けた。
「Society 5.0の話にもつながってきますが、これからデータ中心の世界になると、あらゆる取引に人間が介在しなくなる可能性があります。そんな世界が本当にくるのかと思うかもしれませんが、例えば証券取引ではすでに人間が介在していません。そのように人間の意思決定が関与せず、機械がどんどん判断していく世界では、事後に問題を見つけることには何の意味もなく、不正や変化の予兆を見つけることが重要になります。シミュレーションも不具合の予兆を見つけ出す、いわゆる予知保全のツールとなることで、現場のエンジニアの働き方も変わるのではないでしょうか」

セッションを締めるメッセージとして、坪井氏は「DX推進にあたりIT部門は当然必要ですが、DXが効果を発揮するのはモノづくり、エンジニアリングの世界なので、現場のリーダーシップがやはり重要」、和泉氏も「現場のドメイン知識を持っているのは現場の人間。これからは現場のノウハウをプログラム化するためのデータやモデルのメンテにシフトし、量ではなく価値を提供する形に変わっていくと思います」と、共にDXを現場で進めることの大切さを強調した。最後に小林氏が「モノづくりの現場にマッチした日本らしいDXもある。そうした日本らしいDXが実現できればと思います」と語り、セッションは終了した。

産業革命を起こし、製造業DXを進めていくためには、経営的な大決断が必須だ。しかし、実際にDXを実現するためには経営判断だけでなく、ミドルマネージメント層が活躍し、現場で起きる大きな変化に備えて技術基盤を整えることが必要になる。それにはシミュレーション技術の活用もカギを握るだろう。未来を見据え、本気で変革する道を選ぶならば、ぜひ一度アンシス・ジャパンへ相談してみてはいかがだろうか。




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