HCIが注目されるなか、関連ソリューションも目白押しの昨今、それらのサービス・製品を集めたイベント「DIS まるっとHCIサミット」が2019年12月に開催(主催:ダイワボウ情報システム)。ハードウェアからソフトウェア、仮想化テクノロジーまで、各社最新のHCIに関する情報が紹介された。

特別講演:データ社会の実現に向けて

インテル 執行役員 パートナー事業本部 本部長 井田 晶也 氏

インテル 執行役員 パートナー事業本部 本部長
井田 晶也 氏

まず、特別講演に登壇したのはインテルの井田 晶也 氏だ。

同氏は、「過去50年間に生成されたデータの90%以上は、ここ2年で作られたものだといわれています。ただし、その膨大なデータで社会貢献のために有効活用されているのは3%程度なのです」と冒頭で語り、石炭と蒸気機関、電気、そしてコンピューターと通信といった産業に革命を起こした発明を挙げつつ、「現在は第4の産業革命の時代」だと説明する。

「現在のデジタル社会で大きな変化は情報革命です。かつて蒸気機関の発明で、人は遠くまで移動することができるようになりました。その結果文化の融合が起こり、さらなる発達につながりました。つまり情報共有は進化を促すのです」(井田氏)

クラウドコンピューティング、AI、IoTがネットワークでつながった社会がメガトレンドといわれているが、これをいち早く取り入れてビジネスに対する変革を起こすデジタルトランスフォーメーションが、直近の重要な課題だという井田氏。

「市場の急激な変化に対応し、最新のITを利用して自社を変革し、競争力を身に着けていく。爆発的に増え続けるデータを有効活用することへの重要度は、どんどん増しているのです」(井田氏)

今後インフラが大きく変化し、既存のシステムでは対応しきれない時期が来るといわれているが、その時にデジタル競争を勝ち抜くには、よりシンプルで柔軟なシステムが必要だ。「そこで注目されているのがHCIなのです」と井田氏はいう。

サーバを物理的に増やしていくのには限界があるが、HCIなら瞬時に対応できる。リソースの効率的な活用や、サーバの初期投資の抑制、省スペース、省電力といった多くのメリットがある。

HCIはスモールスタートのあとに簡単にパフォーマンスやリソースを調整していくことができるうえに、インフラ管理や時間的な負担からも解放されてフットワークの軽い運用が可能になる。

「HCIはデジタルトランスフォーメーションを進めるうえでも、ぜひご検討いただきたいソリューションです」と井田氏は語り、基調講演は終了した。

HYCUで実現するバックアップの未来

  • ダイワボウ情報システム 経営戦略本部 情報戦略部 部長 谷水 茂樹 氏

    ダイワボウ情報システム 経営戦略本部 情報戦略部 部長
    谷水 茂樹 氏

  • ダイワボウ情報システム 販売推進本部 戦略商品推進部 戦略・高度化推進グループ 係長 丹羽 政裕 氏

    ダイワボウ情報システム 販売推進本部 戦略商品推進部 戦略・高度化推進グループ 係長
    丹羽 政裕 氏

本セッションでは、ダイワボウ情報システム(DIS)が取り扱うバックアップソフト「HYCU Data Protection for Nutanix」が紹介された。初めに同社の谷水 茂樹 氏が製品の概要を説明。

短時間で構築できることや、Nutanixの管理ソフトPrismと似たUIで使いやすいこと、オンラインを含む多彩なストレージに対応し、管理コストが抑えられることを強調。そしてNutanix製品にフォーカスされている製品であり、Nutanix製品にとても親和性が高いことなどを特徴として挙げた。

続いて同社の丹羽 政裕 氏が、同製品の構築などの操作を、実演を交えて説明した。HYCUの仮想マシン(VM)のイメージをアップロードし、そのイメージをもとにVMを作成、最後にIPアドレスを設定するという構築の手順を実際に操作し、アップロードを除いて3分程度で構築が完了するという、その手軽さを強調した。

このほか、バックアップの間隔やリカバリまでの時間、バックアップを実行する時間帯など、ポリシーも細かく作成して割り当てられることなども、実際の操作を行いながら解説した。

最後に再び谷水氏が登壇。Nutanix製品にHYCUソリューションを搭載したバックアップアプライアンス向けの「Nutanix Mine with HYCU」を紹介した。アプリケーションを自動認識して最適なバックアップを提供できるほか、AHVに加えてVMwareにも対応、Prismから管理可能であるなど、使いやすさや拡張性、統合性などといった、バックアップアプライアンスを選定するうえで重要なポイントをすべてクリアしているとし、次のように締めくくった。

「スケールアウトストレージを備えた最高のバックアップソリューションです。今後もHCIの導入メリットを最大化するためのさまざまな展開をしていく予定です」(谷水氏)

パネルディスカッション:vSAN HCIにNutanix HCI、Azure Stack HCI ―― HCIを牽引する3社が議論、「各社のビジョンと戦略の違い」

  • ヴイエムウェア ソリューションビジネス本部 クラウド技術統括部 クラウド技術部 部長 古山 早苗 氏

    ヴイエムウェア ソリューションビジネス本部 クラウド技術統括部 クラウド技術部 部長
    古山 早苗 氏

  • 日本マイクロソフト パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 クラウドアーキテクト本部 クラウドソリューションアーキテクト(Hybrid) 高添 修 氏

    日本マイクロソフト パートナー事業本部 パートナー技術統括本部 クラウドアーキテクト本部 クラウドソリューションアーキテクト(Hybrid)
    高添 修 氏

  • ニュータニックス・ジャパン ソフトウェアテクノロジーセンター テクニカルエバンジェリスト 島崎 聡史 氏

    ニュータニックス・ジャパン ソフトウェアテクノロジーセンター テクニカルエバンジェリスト
    島崎 聡史 氏

本パネルディスカッションでは、ヴイエムウェアの古山 早苗 氏、日本マイクロソフトの高添 修 氏、ニュータニックス・ジャパンの島崎 聡史 氏が登壇し、HCIに関する各社のビジョンなどが語られた。

まず各社のHCIの特徴が語られた。ヴイエムウェア古山氏は、VMware vSphereにネイティブに統合されていて既存ユーザーに最適だとし、データセンター全体を仮想化し拡張型のHCIとして提供するのがコンセプトだと語った。

Nutanix島崎氏は、ハイパーバイザーやハードウェアを選ばず使え、顧客の希望に合わせたHCIを提供できるので「ロックインしないちょうど良いインフラ」であるとした。

またマイクロソフト高添氏は、Windows Server標準機能ですべてを提供するスタンスのため、経済性、高性能、ハイブリッドといった価値を提供でき「Windows Serverにロックインされている方に最高のHCI」と述べた。

今後のビジョンについて古山氏は、「オンプレミス、クラウド、データセンターのどこでも同じものがあればいい、というのが大きなビジョン」と語り、島崎氏は「お客様にとって合理的なら、ロックインしてもしなくてもOK」と述べ、オンプレミスをシンプル化することが大きなビジョンだとした。高添氏は、「Windows Serverの標準機能を進化させていく中にHCI機能がある」というのが基本的な考え方だと述べた。

最後に各社の事例が紹介された。ヴイエムウェアは最新のHCIの事例として、JR東日本情報システムが構築したプライベートクラウド基盤など、身近なところでもすでに使われていることを紹介。Nutanixは、キャンパスごとに別のハードウェアを使っていた慶應義塾の例、VMwareから1000VM単位での移行を行ったNRIの例などを挙げた。そしてマイクロソフトは、Windows Serverユーザーがそのまま移行したバイク王などの例のほかに、自社開発の高速SSDを活かせる環境として導入したマイクロンの事例を紹介し、Windows Server以外の環境にも導入例があることを強調した。

DXを推進するDell TechnologiesのHCI戦略とは?

デル ISG事業統括 パートナーセールスエンジニアリング本部長 馬場 健太郎 氏

デル ISG事業統括 パートナーセールスエンジニアリング本部長
馬場 健太郎 氏

本セッションには、デルの馬場 健太郎 氏が登壇。

「日本はデジタル変革がとても遅れています。旧来のシステムの運用管理のためのコストや人的リソースなどに悩んでいるのが現状です」と同氏は語る。

デルはサーバ関連テクノロジーをフルスタックで提供できるメーカーだが、同時にVMware vSANも提供できるベンダーとしても知られている。「仮想化の技術とサーバを組み合わせた技術をアプライアンスとして提供しています」と馬場氏。それが、デルが持つHCIアプライアンス「VxRail」になる。

スモールスタートが可能で拡張性にも優れたVxRailは、アプライアンスという形で提供することで、HCIをよりシンプルにできるソリューションだ。導入後のパッチ適用などもデルがワンパッケージで提供でき、障害時の窓口もソフトウェア、ハードウェアを問わず、ひとつの窓口で対応できるのもメリットだという。

このほか馬場氏は、デルのコンテナ技術への対応などを紹介。次のように語って講演を終了した。

「デルはHCIのインフラからクラウドネイティブのアプリケーションまで、全体をサポートできます。ぜひ、皆さまと一緒にデジタル変革を推進していきたいと思っています」(馬場氏)

「働き方改革」および「2025年の崖」を乗り越えるためのHCIハードウェア選定の重要性について

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ シニアソリューションアーキテクト 小宮 敏博 氏

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ シニアソリューションアーキテクト
小宮 敏博 氏

本セッションには、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの小宮 敏博 氏が登壇。

「HCIはデータセンターの導入形態の進化の過程で生まれてきたもので、ある日突然出てきたものではありません。例えば、セールの時だけ使用するシステムを短期間でクラウド上に追加するといった、お客様そのもののビジネススタイルが変わってきているために生まれたのです」(小宮氏)

スモールスタートができて拡張性が容易、ワンクリックでファームウェアのアップデートができるといったメリットがあるHCIだが、製品選びには信頼性が重要と同氏は強調する。

幅広いデータセンターソリューションを持つレノボは、業界の中でも信頼性とパフォーマンスの良さでは定評がある。小宮氏は、同社がHCIソリューションとして推奨する「ThinkAgileシリーズ」の各ラインアップを紹介し、その優位性をアピールした。また、HCIが働き方改革や2025年の崖といった課題解決に役立つ可能性について解説。

その内容として、ハードウェアベンダーの目線で、ストレージ、ネットワークデバイスの低価格および機能の進化に伴い、HCIのシステムを高速化することによる業務効率化が「働き方改革」および「2025年の崖」を乗り越えるために貢献すると言及し、講演を締めくくった。

パネルディスカッション:HCIメーカーの雄 CiscoとHPEが議論 ―― HCIが持つ可能性と未来

  • シスコシステムズ データセンター/バーチャライゼーション事業担当 執行役員 石田 浩之 氏

    シスコシステムズ データセンター/バーチャライゼーション事業担当 執行役員
    石田 浩之 氏

  • 日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 ハイブリッドIT製品統括本部 エバンジェリスト 山中 伸吾 氏

    日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 ハイブリッドIT製品統括本部 エバンジェリスト
    山中 伸吾 氏

本パネルディスカッションでは、シスコシステムズの石田 浩之 氏と、日本ヒューレット・パッカードの山中 伸吾 氏により、HCIが持つ可能性と未来について語られた。

「HCIは今、サーバ市場の中でどんなポジショニングにありますか?」という問いに対し、確実に伸びている市場だという共通見解を述べた両氏。また、「HCIを一言で表現すると?」という問いには、「TCO削減」(石田氏)、「秒速バックアップ機能付きサーバ一体型仮想化専用ストレージ」(山中氏)と、それぞれの持論を展開した。

次に、実際にHCIを選ぶ際のポイントについて、石田氏は「Cisco HyperFlex」をもとに次のように解答。

「Cisco HyperFlexは、世界中で評価の高い製品です。エンタープライズクラスの性能をシンプルに運用できるプラットフォームで、運用コストの削減や、3-tier構成からのコスト削減、パブリッククラウドと比較したコスト圧縮率などにおいて、大きな効果を出しています」(石田氏)

一方の山中氏は、先ほどの「TCO削減」を裏付けるデータを「HPE SimpliVity」の導入効果をもとに紹介した。

「HPE SimpliVityは日本で販売を始めて2年目の製品です。すでに400社に導入いただいており、何よりもバックアップ速度が速いことがお客様に喜んでいただいているポイントです。ある企業では100VMの夜間バックアップに3時間かかっていたものが1分に、別の企業ではリモートバックアップにかかる時間が12時間から3分へと劇的に短縮できています」(山中氏)

その後、それぞれの製品の特長や事例を交えて、HCIの具体的な活用について語った両氏。

「専用のシステムはだんだん不要になり、すべてをカバーできる柔軟なシステムが求められるようになっているのだと思います。シスコが持っているほかのポートフォリオとシームレスに連携していく、すべてをまとめたインフラストラクチャとして、HCIを利用していただきたいと思っています」(石田氏)

「HCIをパブリッククラウドのように使った分だけ料金をいただく従量課金ソリューションの拡充も図っています。手軽に利用できるようになるので、ますます便利に使っていただけると思います」(山中氏)

全体を通して多くの来場者で盛況だった「DIS まるっとHCIサミット」は、こうして幕を閉じた。来場者の熱意のこもった視線や、別室に用意されたショールームの活気を見れば、HCIへの注目度が大きく伸びていることがわかる内容だったといえる。HCI市場の今後の活性化は必然であり、興味のある方はぜひダイワボウ情報システムに相談してみるといいだろう。

[PR]提供:ダイワボウ情報システム