人工知能(AI)や最先端の機械学習(ML)を導入し、競争力を強化する企業が増えている。企業を取り巻くビジネス環境が急速に変化している現在は、ITインフラにも最先端技術を取り入れる柔軟性が求められているのだ。しかし、エンタープライズに要求される堅牢性は維持しなければならない。最新技術を取り込みつつ確実にビジネスを成長させるために、企業はどのような観点でITインフラを選択すべきか。

AIビジネスの専門企業であるシナモンの代表取締役社長 平野未来氏と、多数の大規模企業を顧客に擁する日本ヒューレッドパッカード(以下HPE)のPointnext営業統括本部 パートナー営業本部 本部長 加藤知子氏が「顧客課題の解決アプローチ」について話し合った。

  • 株式会社シナモン 代表取締役社長 平野未来氏 日本ヒューレット・パッカード株式会社 Pointnext営業統括本部 パートナー営業部 本部長 加藤知子氏

お客様がAIに求めているのは「既存業務の改善や効率化」です(平野氏)

株式会社シナモン 代表取締役社長 平野未来氏

株式会社シナモン 代表取締役社長 平野未来氏

―― 最初にシナモンの事業内容を教えください。

平野氏:我々は「ホワイトカラーの生産性向上」をミッションに掲げています。ホワイトカラーの業務には、単純で手間のかかる作業が多いですよね。そうした業務をAIに任せ、人間が創造性あふれる仕事に集中できる世界の実現をめざしています。

加藤氏:確かに、現在の日本にとって、ホワイトカラーの生産性向上は喫緊の課題です。ニーズはかなりありそうですね。

平野氏:そのために独自開発したコア技術が、「文字認識」「音声認識」「自然言語理解」の3つです。これらを活用し、AI文書読取エンジンの「Flax Scanner(フラックス・スキャナー)」を提供しています。紙に書かれた書類から、AIが必要な情報を抜き出し、データベースに自動で入力するシステムです。

加藤氏:いまだにビジネスシーンでは、圧倒的に紙でのやり取りが多いですよね。

平野氏:Flax Scannerは紙だけではなく、ExcelやPDFといった電子データも認識できます。今、世界にあるデータの約80%は、非構造データだと言われていますが、その処理をAIが担えば、かなりの業務効率化が可能です。

―― お客様がAIで解決したい課題はどのようなことでしょうか。

平野氏:2012年にシナモンを創業した当初は、「AIは新しい技術なので、IT企業系のお客様や新規ビジネス創設を目的としたお客様に興味を持たれるのでは?」と考えていました。しかし実際は真逆で、規模が大きく、社会的責任と影響力が大きい歴史ある企業のお客様がほとんどです。つまり、「AIで既存業務の改善や効率化をしたい」とおっしゃいます。

――どんなお客様が多いのですか。

平野氏:銀行/保険/証券といった金融系や、製造業/エネルギーなどのインフラ系など、社会的責任が大きい企業様が多いですね。

加藤氏:多くのお客様が、シナモンさんのサービスをオンプレミス環境で使っているとお聞きしました。AIのような最先端技術はクラウドで運用するのが定番だと思っていたのですが。

平野氏:社会的責任が大きい企業様が最も気にされるのは、情報の取扱いです。特に金融系のお客様は、堅牢な環境で個人情報を管理しなければなりません。また、製造業のお客様は製品に関する機密情報や、研究データを取扱います。こうした情報は重要な知的財産ですから、セキュリティが第一なのです。

お客様が初期投資を抑制し、本業に投資できるモデルを提供しています(加藤氏)

日本ヒューレット・パッカード株式会社 Pointnext営業統括本部 パートナー営業部 本部長 加藤知子氏

日本ヒューレット・パッカード株式会社 Pointnext営業統括本部 パートナー営業部 本部長 加藤知子氏

―― 一般的な印象だと、AIをオンプレミス環境で運用すると、高コストだったり、スケールに制限があったりするのでは? というイメージもあります。

加藤氏:今は大きく変わっており、「オンプレミス環境は高コスト」という訳ではありません。HPEは「(ハードウェアという)箱を売る」のではなく、「お客様の課題解決を支援するITインフラを提供する」という観点からサービスを提供しています。ですから、「初期費用をかけて購入いただき、5年かけて減価償却してもらう」というビジネスモデルだけではありません。

実は、HPEでは2014年から、お客様のビジネスの変化や使用量に応じ、柔軟にITリソースを利用できる従量課金のモデルを提供しています。それが、コンポーザブルインフラストラクチャ「HPE Synergy」と「HPE GreenLakeフレックスキャパシティ」です。すでに海外では約800社のお客様に利用いただいています。

平野氏:シナモンのサービスもお客様のビジネスの課題や使用量などに応じ、柔軟に提供できるモデルを用意しています。「お客様の利用形態に合わせて課金する」という仕組みは同じですね。

―― 「オンプレミス環境のハードウェア」を「従量課金で提供する」モデルでお客様が得られるメリットは何ですか。

加藤氏:HPE Synergyは、SDI(Software-Defined Infrastructure)を活用し、各種ワークロードに必要なITリソースを迅速に展開できるプラットフォームです。HPE GreenLake Flex Capacityを利用すれば、それらを従量に応じた課金で利用できます。コンピュート、ストレージ、ネットワークが単一ベンダーから提供されるので、運用にかかる手間が大幅に削減できるのに加えて、従来と比較して初期コストも抑えられるでしょう。

実は、日本のお客様は機器を購入する場合、ビジネスが停止するリスクを考えて大きく構成してしまう傾向があります。つまり、使うかどうかわからないリソースを、ビジネスリスクを避けるために購入されている。しかし、これは、お客様側から見れば過剰な投資です。

特に変化の激しい今のビジネス環境では、新規で立ち上げるビジネスや、これから本格化していくビジネスなど、急にリソースが必要になることも多々あります。つまり、「いつ」「どのタイミングで」を事前に予測することが難しい。ですから、「ビジネスの成長に合わせて対応できる従量課金システム」は非常に使いやすいと思います。これは、「コストを抑える」というより、「初期投資を抑えることによって、本業の投資すべきところに投資しましょう」という考え方です。

―― シナモンのお客様がITシステムについて気にするのはどのようなポイントでしょう。

平野氏:判断のポイントは3つあります。それは「アルゴリズム精度」「速度」「セキュリティ」です。「AIがやります」といって10日かかったら意味がありません。

加藤氏:その3つのポイントに関しては、我々には絶対的な競争力があります。例えば、シナモンさんのようなビジネスを展開されている企業が顧客に対して、ハードウェアリソースの利用状況に応じて課金するといったモデルを考案されたとします。そういった場合にHPE Synergy(Flex Capacity)はご支援できると考えています。

「課題解決ソリューション」で世界No.1のAI会社をめざします(平野氏)

―― 両社とも主なお客様は大規模企業とのことですが、中堅・小規模企業に対するアプローチはいかがですか。

平野氏:イノベーションが伝播するフェーズは、4段階あると考えています。それは「アーリーアダプター」「大規模企業」「中小企業」そして「一般のコンシューマ」です。今、AIは第2段階の大規模企業なんですね。そもそも、次のフェーズに行くためには技術やオペレーション上のアセットが蓄積されなければなりません。

一方、今のAIの技術レベルでは、中小企業や一般のコンシューマが精度高く使える汎用的なサービスを提供することはできません。ですから、現時点でAIを活用できるのは大規模企業が中心になっていることが実情です。

現在、シナモンではAIをお客様ごとにカスタマイズして提供しています、なぜなら、ROI(費用対効果)が出るような高いパフォーマンスを求めるのであれば、カスタマイズが必須だからです。これは他のAIサービスを提供するベンダーでも同じだと思います。

加藤氏:中堅・中小企業には、ある種の汎用性がないと使っていただけません。この部分もHPEのビジネスとまったく同じ課題です。

―― 今後の目標を教えてください。

平野氏 シナモンをグローバルでナンバーワンのAI会社にすることです。実は、私たちが提供しているような業務効率化を実現する「ビジネスAI」は、日本がいちばん進んでいる領域です。ですから、私たちのソリューションを海外に輸出できるようになりたいですね。

労働人口減少に起因する課題は山積していますが、裏を返せば日本は課題先進国と捉えることもできます。少子高齢化は、多くの先進国が抱えている課題です。新聞やテレビで「AIが仕事を奪う」と懸念する報道も見かけますが、お客様から「AIに仕事を取られる」という声は一切聞かれません。現場の方々は「人手がまったく足りていない。どうにかして欲しい」といった切実な課題を抱えていらっしゃいます。

日本がこうした課題解決のノウハウを蓄積すれば、「労働人口減少対策ソリューション」として海外に輸出できると考えています。シナモンは海外でも事業展開をしていますが、多くのお客様は銀行系です。抱えている課題は、日本の金融系のお客様と同じなのです。

加藤氏:ITインフラのないビジネスはありません。シナモンさんとHPEは違う角度からお客様にアプローチしています。しかし、お客様に「ビジネスを効率化するソリューションを提供し、お客様を支援する」という目的は同じ。遠くない将来にシナモンさんとお客様を介してお会いできると思います。アプローチの方向性は違っても、目指すところが同じですから、そのような機会があると確信しています。

  • 株式会社シナモン 代表取締役社長 平野未来氏 日本ヒューレット・パッカード株式会社 Pointnext営業統括本部 パートナー営業部 本部長 加藤知子氏

シナモンの平野氏も登壇! AIビジネスとITインフラの最前線がわかるセミナーを7/19に開催! https://news.mynavi.jp/lp/2019/business/enterprise/AI_infra_2019/

HPE Synergyの詳細はこちら!
https://www.hpe.com/jp/ja/integrated-systems/synergy.html

HPE GreenLakeフレックスキャパシティの詳細はこちら!
https://www.hpe.com/jp/ja/services/flexible-capacity.html

[PR]提供:日本ヒューレッドパッカード