大和ハウスグループのメディアテックは、ネットワーク構築、サーバ運用管理といったインフラ周りから、システム開発、情報処理サービスまで、グループのIT関連分野全般を手がけている。その実力は、インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)が3月に発表した「IIJ Partner of the Year 2016」で、Partner of the Yearを受賞したことからもうかがい知ることができるだろう。同社では、これまで大和ハウスグループ向けに提供してきた技術力や高度なソリューションを、グループ外にも積極的に提供していこうと、現在模索しているという。その経緯や今後の展望を、同社の取締役 畑口 起久夫 氏、経営戦略部長 小澄 隆氏に聞いた。

グループ内で培ってきた技術力で「新たな価値」を提供

メディアテックの設立は1992年。当初は映像コンテンツの制作が主な業務だったが、1996年以降は大和ハウス工業の情報システム部出身の社員を中心に、情報システム関連事業を手がける企業として、20年以上にわたってグループ内のIT関連業務を請け負っている。40,000台以上(取材時)に及ぶPC・タブレットの調達・管理をはじめ、インフラの構築・運用、業務改善を目的としたシステム開発・運用など、同社がカバーする範囲は広い。クラウド活用にも積極的で、2013年からは「IIJ GIO」を基盤としたグループ向けのクラウドサービス「メディアテック・クラウド」の提供をスタートした。

メディアテック 取締役 
畑口 起久夫氏

「基盤システムの円滑な連携や、各社が抱えていたオンプレミスサーバーの削減などに貢献しています。まだグループ全社での利用には至っていませんが、将来的にはすべてを当社で引き受けられればと思っています」(畑口氏)

グループ企業向けの事業展開を中心にしてきたメディアテックが、いま、外向きのビジネス拡大を視野に入れるようなったのは、長年培ってきた技術やノウハウを幅広く活用してもらうことで、多くのユーザーに「新たな価値」を提供できるのではないかと考えたからだという。現在、社内にある技術をどう市場に打ち出していくかを検討しているとのことだ。本稿では文書管理サービスとVR(バーチャル・リアリティ)を利用したサービスの2つを紹介する。

膨大なドキュメントの電子化から管理までをワンストップで

メディアテックの文書管理サービスは、大和ハウスグループが携わった建築物の図面・関連書類を確実に保存し、必要な時にはすぐに参照できるようにするためのものだ。

メディアテック 経営戦略部長 
小澄 隆氏

「開発のきっかけは、1995年の阪神・淡路大震災でした。被災地区の支店などで保管されていた図面が被害を受けたり、お客様の情報を引き出せない状態になったりして、被災住宅のアフターフォローに影響が出たことへの反省から、アナログ図面をすべてデータ化することにしたのです」(小澄氏)

サービスの特長は、メディアテックを窓口にすべてがワンストップで提供されることだ。細かい設計変更が頻発する戸建て住宅では、今でも紙による図面管理が多く、打ち合わせ書類も多数発生する。紙のサイズもまちまちだが、設計・施工に携わる各事業所では、それらをまとめてメディアテックへ送るだけでいい。送られてきた書類をメディアテックがスキャンして電子化、カテゴリーの分類やインデックス付けを行う。

電子データとして整理されたドキュメントはオンラインで検索・閲覧ができるため、以前発生していた図面・書類の配送コストは抑制され、建物の保守対応にも迅速に開始できるようになったという。なお原本はグループの物流会社の倉庫に保管し、必要時にはすぐに取り出せるようになっている。また住宅以外の一般建築ではCADでの管理がほとんどだが、同サービスではCADデータを図面としてイメージ化して保存する方法を採り、将来CADソフトにバージョンアップなどの変更が生じても問題なく図面を閲覧できるようにしている。現在、グループ向けサービスで保管している図面は住宅だけで80万戸分、毎年2万数千戸が追加されているという。

書類を送るだけで電子化され、オンラインですぐに必要なデータを呼び出せる文書管理サービスは、建築業界以外にも応用できるだろうと、小澄氏はいう。

マンション販売で実績を上げるメディアテックのVR

一方、同社のVRを活用したサービスについては現在、マンション販売のプレゼンツールとしての活用で実績を積み重ねている。開発のきっかけは、大和ハウス工業のマンション事業推進部が沖縄のマンションの販売実績を分析したことだった。2016年6月、顧客分析をした結果「50代以上の県外の人で、将来は夫婦での沖縄移住を考えている」という顧客のペルソナが分かり、2棟目の販売で同様の見込み客に対して、この物件をアピール出来るコンテンツを検討していた。

そこでメディアテックがVR技術を活用したプレゼンツールを提案した。これはVRゴーグルをかけると、熟年夫婦が那覇空港に降り立つところからコンテンツがスタートする。その後、空港からマンションまで自動車で移動し、到着後は浜辺を歩いたり、レストランで夕焼けを見たりと、沖縄での暮らしが次々映し出され、沖縄の世界にどっぷりと浸ることが出来るもので、導入後は成約率が10ポイントほど改善したという。現在、3棟目を販売中だが、周辺環境の360度動画だけでなく、CGでマンションの共用ホール、居室などを「体験」できるまで進化している。都内にあるサロンを訪れる客にも好評だ。

  • VRを使用することでマンションの空間を疑似的に体験できる

その他にも、メディアテックでは、大和ハウスグループが扱う別の遠隔地物件の販促にもこのツールを投入するほか、中古物件のリフォーム後や、販売するマンションの周辺で行われている大規模工事が完了した後の街並み・部屋からの眺望などをVR化。入居後のイメージをつかみやすくして販促につなげている。同社はVR技術について今後も開発を進めていくという。

今回紹介した文書管理サービスやVRを利用したサービス以外にも、AIを活用したグループ社員の健康促進策や会員組織の退会者予測など、新たなチャレンジを続けているメディアテック。畑口氏は、大和ハウスグループでの仕事で培った技術の延長線上に、新規ビジネスを生み出したい、と展望を語る。近い将来、グループ内で積み重ねてきたメディアテックの実績が、多くの企業の課題解決や新規事業に役立てられるようになることを期待したい。

[PR]提供:インターネットイニシアティブ