6月29日、国内最大規模のブロックチェーンカンファレンス「Block Co+ Tokyo 2018」がヒルトン東京お台場で開催された。「ブロックチェーン×未来」をテーマに行われた漫画家松本零士氏のセッション内容を中心に当日の模様をお伝えする。

Block Co+ Tokyoは、ブロックチェーン技術や最新テクノロジーに関わる約100の企業が一堂に会する総来場数約4500人を数える国内最大級のカンファレンスだ。ブロックチェーンというと、仮想通貨のような投機的な動きが目立つが、このカンファレンスでは、そうした投機的な内容を一切排除していることが1つの特徴という。

主催者であるブロックチェーン技術開発企業のBlock Co+は「ブロックチェーン技術を利用する組織が世界的に急増し注目が集まっているが、社会にもたらす変革や課題についてはこれからまだまだ議論が必要な状況にある」とする。

その一方で、ブロックチェーン技術は、「今後社会の仕組みを覆していくことが予測される革新的な技術」とされており、このカンファレンスでは「その面白さ、凄さを啓蒙し、一般への普及を促進していく」ことを目的にしているという。

当日は、タレントのセインカミュ氏とカタルチアの高橋絵理氏をMCに、「ブロックチェーン×技術」「ブロックチェーン×社会」「ブロックチェーン×事業」「ブロックチェーン×未来」などのテーマごとに、業界の著名人を招いて議論を展開した。

松本零士が語る2018年から見る未来

漫画家の松本零士氏

なかでも多数の観客を集めたのが、漫画財団幹事や漫画家協会理事を務める松本零士氏のセッション「松本零士が語る2018年から見る未来」だ。松本氏は、壇上に用意されたカウンターチェアに借りてきた猫のように座りながら、ユーモアまじりに訥々と自身の体験や夢、これからの取り組みについて語った。

セッションではまず「銀河鉄道999」や「宇宙海賊キャプテンハーロック」といった同氏の代表作をスクリーンに大写しにし、MCとのやりとりを通して、作品が描かれた時代背景や登場人物に対する思いなどを振り返った。

例えば、キャプテンハーロックや「男おいどん」に登場する「トリさん」は、同氏の仕事場の近くで鳴く実在の鳥であり、1972年まで就航していた日本と南米を結ぶ南米航路の汽船の甲板の上で飼われていた鳥だという。「そっくりそのままあの形をしていて、オーイオーイと呼びかけると、バカヤローと話すように声を返してくるんです」

また、銀河鉄道999に登場する機関車は、同氏が福岡から上京したときに乗車したC62蒸気機関車がモデルだという。「行きの切符代と画材だけを持って出発したんです。関門海峡に入ると真っ暗になり、まるで宇宙に入ったようでした。自分にとっての青春の旅立ちで、あのときあの汽車に乗らなかったら自分の運命は変わっていた。人生の始まりなんです」

続いて、MCから「時代に先駆けて未だ実現されていないSFの世界を描く発想の原点はどこから来ているのでしょうか?」との質問が投げかけられた。すると、松本氏は、「5、6歳の頃から未来のことを一生懸命考えていました。自分の夢とか希望を描き続けてきているわけです。そうしたら徐々に自分が夢見ている世界が現実化してきました」とし、こう続けた。

「すばらしいビルや橋、船を見て、その設計者に会ってみると、本人はこう言うんです。『オレは小学校のときに、あんたの漫画を見て作ったんだ』と。私も先輩たちの仕事を見ながら育ったわけで、お互いに支え合って未来を作るわけです。人はみな同じで、やりたいことを果たしていく人が地球上には何人かいて、それで未来がひとつずつ誰かの手によって実現されていく。それが文明の進化、人類の進化です」

宇宙や未来を題材にした作品が有名な同氏だが、人類の未来について「現代、2018年という時代はどう映っていますか?」と問いかけると、松本氏は「中間です」と返し、こう話した。

「若い人がいろいろ未来のことを考えて行動すると、SFがフィクションでなくなります。今はまだその中間地点なんです。だから若い人には頑張ってほしい」