ガートナージャパンは2月24日、東京コンファレンスセンター品川にて「ガートナー カスタマー360 サミット 2016」を開催した。「デジタル・ビジネスを加速し、カスタマー・エクスペリエンスを追求せよ」をテーマに掲げた同イベントでは、コンファレンス・チェアであるガートナージャパン リサーチ部門 主席アナリスト 川辺健介氏が『デジタル・マーケティングの実現方法』と題したセッションに登壇。デジタル・マーケティングがビジネスにもたらすインパクトについて解説するとともに、これをテクノロジー面から支援するITリーダーに必要なアクションについて提言を行った。

デジタル・マーケティングに期待されるもの

「さまざまな企業の方と話していて感じるのは、ひとことに『デジタル・マーケティング』と言っても、マーケティング思考なのか、営業思考なのかで大きな違いがあるということだ」と川辺氏は語る。

ガートナージャパン リサーチ部門 主席アナリスト 川辺健介氏

ガートナー ジャパン リサーチ部門 主席アナリスト 川辺健介氏

日本企業は製造業が多いためか、「作ったモノを売るためにデジタル・マーケティングを取り入れよう」と考える企業が多いのだという。しかし、マーケティングの本来的な意味は、未知の顧客を探したり、自社製品の市場を創出したりするために顧客を理解し、競合との差別化を図ることだ。結果的にモノがたくさん売れる方向に導くという意味では同じだが、営業思考とは実践する行動が異なるだろう。ある程度の規模の企業になると、営業とマーケティングを担当する部門がそれぞれ存在することが多いし、B to Bの企業では、効果的な営業活動を目的に、マーケティングで見つけた潜在顧客を営業に活用するといったケースも少なくない。川辺氏は、「デジタル・マーケティングと言ったとき、まずは自社がどこを目指しているのか、整理してみるのが重要だ」と説明する。

また、ビジネスのグローバル化が進み、顧客の振る舞いやチャネルも多様化している今、それぞれに対応していくには、もはや人手ではカバーしきれないことが多い。モバイル対応や24時間対応といったところから自動化を進めることを考え、テクノロジーを活用しようという話になる。

ではそこで、デジタル・マーケティングには何が期待されるのだろうか。顧客と迅速かつタイムリーなコミュニケーションが可能になることや、テスト・マーケティングが容易なこと、収集した膨大なデータの分析力が競合との差別化要素となることなど、さまざまなメリットが考えられる。川辺氏は、「企業と顧客の距離が一気に縮まる」と強調する。

一方で、簡単にできてしまうからこそのデメリットもある。川辺氏は、「不適切なコミュニケーションがあれば顧客の期待を損ねるし、目的を見失う可能性もあることは心に留めておいてほしい」と警告した。

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