
半導体大手エヌビディアは、経営不振に陥る同業のインテルに50億ドル(約7400億円)を出資し、人工知能(AI)データセンターやパソコン向けの半導体を共同開発する。
両社が強みを持つ技術を融合することで、インテルの業績浮揚につなげる。トランプ政権による半導体の輸出管理などで圧力にさらされるエヌビディアにとっては、インテルへの投資で政権に秋波を送る思惑もある。
トランプ政権は8月、国内生産強化に向けてインテルに89億ドルを出資することで合意。エヌビディアは製造業復活を目指す政権の動きに呼応した。ただ、政権に歩調を合わせ過ぎれば、自社の経営の自由度が低下し、自縄自縛に陥る懸念もくすぶる。
エヌビディア最高経営責任者(CEO)のフアン氏は「歴史的な提携だ」と自画自賛した。老舗企業であるインテルは先端半導体の開発で大きく出遅れ、業績が悪化。半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)の背中は遠のくばかり。
今回の提携では、エヌビディアが大半のシェアを握るGPU(画像処理半導体)と、インテルが強みを持つCPU(中央演算処理装置)を組み合わせ、足腰を強くする。
エヌビディアは現時点で、インテルへの生産委託は考えていない。市場では提携のメリットに疑問の声も上がっており、真の狙いは「トランプ政権の歓心を買うこと」(アナリスト)との見方も浮上している。
トランプ政権は、エヌビディアの中国への半導体輸出を容認する代わりに、同国向けの売上高の15%を徴収する計画。一方、米中対立に終わりが見えない中、中国当局が自国のテクノロジー企業に対し、同社のAI半導体の購入を禁じたとの報道もある。
ビジネスへの悪影響を避けたいとの思惑がにじむが、インテルの経営が今後好転する保証はどこにもなく、政権から追加出資を求められれば、「ノー」とは言えない状況も想定される。
提携が吉と出るか凶と出るか。答えが出るにはもう少し時間がかかる。