
金融庁は8月末に政府に提出した2026年度の機構定員要求で、監督局を2つに分割する組織再編を打ち出した。「資産運用・保険監督局」を設置するのが目玉で、従来の監督局は銀行・証券の両業態を一体的に監督する「銀行・証券監督局」に名称を改める。「ダブル監督局」体制が実現すれば、検査局を廃止した18年度以来8年ぶりの大規模再編となる。
「資産運用・保険監督局」は、現在、資産運用立国や暗号資産(仮想通貨)などのデジタル金融を所管する総合政策局を衣替え。ここに従来の監督局から分離した保険課の機能を組み合わせる形で設ける。
不祥事が相次ぐ保険会社への監督強化は、石破茂政権の金融担当相である加藤勝信氏の肝入りの政策。そこで資産運用と保険会社の監督という一見異質な機能を併せ持った局が構想されたが、違和感は否めない。
問題は総合政策局が担ってきた人事など、官房機能をどうするかだった。思案を重ねた金融庁は、官房機能を引き継ぐ局長級ポストの政策統括官の新設を要望することにした。
ただ、内閣人事局の査定は厳しく、政策統括官新設と引き換えに審議官級など、複数ポストの廃止を迫って来る可能性があるという。ただ、金融庁は近年、守備範囲が膨らみ、日々の業務も複雑化の一途。ポストの削減を強いられれば、組織運営に支障を来たす恐れもある。
ある大手行幹部は「多大な義理や借りのある族議員の地元の金融機関などで不祥事や経営危機が起きた際、果たして厳正な処分ができるのか」と疑念を示す。金融行政を取り巻く環境の変化に合わせて組織体制を見直すのは当然だが、政治頼みの姿勢には危うさも拭えない。