
自民党の都議選敗北にも 株価は反応せず
前回は今後の相場について、弱気シナリオ、悲観シナリオの可能性もあると解説しましたが、今回は楽観シナリオについても触れたいと思います。
今の日経平均は2025年4月7日に二番底を入れて底入れしていますから、いずれは上がってきます。上がるためには株価の方向性を決める買い材料が必要ですが、なかなかそうした情報が見つからない状況が続き、3万5000円から4万円のゾーンで、9月くらいまでボックス相場が続くのではないかと見ていました。
その状態のまま、日本銀行が9月の金融政策決定会合で利上げを決めると円高、株価下落の可能性があるので、ボックス相場が続くようなら要警戒というのが悲観シナリオでした。
では楽観シナリオはどうかというと、7月の参議院議員選挙で日本の政治が変わる期待が出てきたら株価は上昇します。東京都議会議員選挙で自民党は大敗しましたが、普通ならばここで株価は下落するはずですが、ほとんど反応しませんでした。
今の日本の株式市場は石破政権に期待していないということです。仮に、参院選でも自民党が負けるということがあっても、株価はそこまで下げないのではないかと見ています。むしろ、自民党が負けることで連立政権の枠組みが変わることを株価は歓迎するかもしれません。
そうして、新しい首相による新しい政策が打ち出されることによって、株価が上昇する可能性があります。ただ、自民党が大敗して政権交代となった時、立憲民主党が中心の政権ならば株価は上がらないでしょう。
野田佳彦氏が首相になった時には国民は「代わり映えしない」と感じるからです。与党でも野党でも、新しい首相を歓迎して株価が上がるかもしれません。中立シナリオは、参院選を経ても石破政権が続き、株価は上がりも下がりもしないという状態が続く展開です。
もう1つ、日本の株式市場に大きな影響を与えるのが米国株式市場の動きです。米国株はこの後、さらに上がって24年12月、25年1月に付けた4万5000ドルというダブルトップを抜いてくるようなら、これといった買い材料がなくても日本の株も上がると思います。
直近の米国株の動きは強いものがあります。25年1月31日二番天井を付けた後、4月7日に3万6611ドルという安値を付けて、その後戻っているのですが、4万5000ドルから3万6600ドルまでの下げ幅の半値戻しは4万1000ドル台です。
6月末時点、ニューヨークダウは4万3000ドル台に乗せていますから、半値戻しの壁を突破して、強い動きです。7月中にも4万5000ドルを奪回するかもしれません。日本の選挙中に米国株が高値を付けるとなると、選挙結果に関係なく日本の株は上昇します。
ではなぜ、米国株が上がるかというと、第1はトランプ大統領の行動力です。これを株式市場は評価していると思います。いろいろ言われますが、イラン・イスラエルの戦争を収めようとしていますし、ロシア・ウクライナの戦争についても引き続き収束を目指しています。
米国の大統領が、世界の秩序を回復しそうな動きになっているということは、米国株式市場にとってはプラスです。以前のオバマ大統領、バイデン大統領だったら傍観していたはずです。
もう1つは、FRB(米連邦準備制度理事会)との関係はあるものの、近い将来、米国では利下げがあるのではないかと思われています。利下げがあると、ハイテク株を中心に米国株は上昇します。
ですから、この夏に米国株は新高値を取る可能性があります。それに連動して、日本株も上がるという楽観シナリオが、今後有力ではないかと見ています。
イラン・イスラエルの戦争を含め、地政学リスクは引き続き懸念されます。ただ、前述の通り、傍観していたオバマ・バイデン政権時代とは違って、トランプ大統領は、自らが主導して戦争をやめさせようとしている。
もちろん、イランもイスラエルもすぐに矛を収めるのは難しいかもしれませんが、戦争拡大にはならないのではないか。両国とも、戦争を拡大しようとすると米国からのかなり強い牽制が出るからです。
わかりやすく言えば「トランプ大統領には逆らわない方がいい」と両国ともに思っているということです。
例えばEU(欧州連合)はトランプ大統領から、防衛費のGDP(国内総生産)比5%までの拡大を求められ、決議しています。日本も3・5%を求められていますが、EU並みの5%という話も出てきています。
米大統領のリーダーシップが出てきているということです。米国、世界のメディア、マスコミはほぼ全て、トランプ大統領を批判していますが、いずれ彼の行動力、リーダーシップを評価することになるでしょう。
トランプ大統領は、無益な戦争をやめさせるべく行動していますし、ロシア、中国、北朝鮮に対しても対話の機会を持って努力しています。
その一方で、対話に応じない場合には今回のイラン攻撃にように、躊躇せずに実力行使するという姿勢も見せています。これにはロシアも北朝鮮も、特に北朝鮮には緊張が走ったと思います。
米国のリーダーシップ、世界におけるプレゼンスの回復を好感する米国株の上昇が始まっています。おそらく遅くとも7月、8月に、相場の波動から見ても、4万5000ドルに接近、高値を奪回、もしくは突破する可能性があります。
今のメディアの姿勢は、分断を象徴していると言えます。メディアはいわばエスタブリッシュメントで、変革や行動する人に対して批判的です。彼らが望むのは米民主党、バイデンのような現状維持派です。
その意味で米国は今後、変わる可能性があります。トランプ大統領は就任半年で世界を大きく動かしています。今後、米国主導の世界秩序の回復を歓迎する、新たな米国株高が始まる可能性があります。
これこそが、トランプ大統領、ベッセント財務長官の言う、米国の黄金時代の到来です。