
金融庁は日本で無登録営業を続ける海外の5つの暗号資産(仮想通貨)取引所の活動を阻止するため、米アップルとグーグルに対してアプリのダウンロードサービスを停止するよう要請した。これを受けて、アップルは「アップストア」上からアプリを削除、グーグルも「グーグルプレイ」からダウンロードできないようにした。
金融庁は無登録の取引所に対して日本人向けに営業しないように再三警告してきたが、活動を止めなかった。このため「米ビッグテックに頭を下げてでも顧客の被害を防ぐ」(総合政策局筋)という苦肉の策を取った。
今回、金融庁がアプリ停止要請の対象にしたのは、そんな「規制の穴」を突き、日本で顧客を勧誘してきた〝札付き〟の取引所。2024年6月以降、無登録での活動をやめるように再三警告したが、いずれも反応がなく、「放置すれば、顧客に被害が及びかねない」と懸念。スマートフォンのOS(基本ソフト)を支配する2大巨頭に協力を求め、アプリストアから排除するしか手はないと判断した。
ただ、課題も残っている。アプリ停止でこれら無登録の取引所を新規に利用することはできなくなったが、すでにスマホにダウンロード済みの顧客利用までは止めさせられないからだ。
大きな儲けを狙いたい一部の利用者からは「レバレッジ規制がない無登録の取引所の方が投機的な取引も可能で使い勝手がいい」との声もある。「悪貨が良貨を駆逐する」事態を懸念する金融庁内では、裁判所に営業停止を申し立てる法的枠組みづくりなども検討されているが、仮に実現できても、どこまで実効性が上がるかは見通せないのが実情。デジタル時代の金融行政の悩みは深い。