東洋食品・荻久保英男社長 「子どもたちの心と身体の育成につながる『学校給食』で地域社会に貢献していきたい」

約4000校の給食を提供

 1966年に集団給食を提供する会社として創業した当社は、小学校や中学校の学校給食の調理を民間に委託することが始まった直後の86年から学校給食事業に参入しました。それから創業以来58年、北海道から九州に至るまで約4000校の小中学校の給食づくりを手掛け、国内トップシェアになっています。

 学校給食は2つに大別できます。学校内の給食室で調理する「自校調理方式」と複数校の給食を一括調理し、各学校に配送する「給食センター方式」です。当社は両方の方式を受託していますが、特に後者を得意としており、全国301カ所の給食センターを運営しています。

 信頼ー。当社がこれまで生き残ってこれたのは、この一言に尽きます。今では1日当たりの調理食数は約142万食を誇っています。約6人に1人の子どもたちに給食を提供していることになりますが、これまで食中毒は一度も起こしていません。

 安全・安心を徹底するため、調理から2時間以内に提供する工程管理や温度管理を実現し、保健所出身の元食品衛生監視員約30人を集めた「衛生部」を社長直轄の独立した部署とし、食品安全マネジメントシステムの認証であるISO22000を学校給食に特化して業界に先駆けて取得しています。

 これに加えて、当社の強みは大量調理の技術です。ただ、大量に調理すればいいというわけではありません。自治体が決めた食材と献立に沿って衛生管理ルールを守りながら効率的に美味しく仕上げ、給食時間までに確実に届けなければなりません。

給食センターのPFI方式も

 さらに、昨今の少子高齢化や自治体の行財政改革の推進、慢性的な人手不足なども重なって、給食センターの設計・建設・維持管理・運営を含むPFI・DBO方式が増加し、当社が代表企業となった件数は46と大手ゼネコンに次ぐ2位となっています。

 足元では最低賃金の急上昇に伴う人件費の高騰や深刻な人手不足、インフレ基調が起こり、給食業界を取り巻く環境が非常に厳しくなっていることも事実です。しかし、給食センターは地産地消で地元の食材を活用し、子どもたちの食育にも貢献することができますし、地元の方々の雇用の受け皿にもなっています。

 学校給食は子どもたちの心と身体の育成につながり、学校教育の一端を担う「生きた教材」であると認識しています。今後も信頼を揺るがすことなく、子どもたちの成長に寄与していきたいと思っています。

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