
新体制ににじむ銀行ビジネスの構造変化
三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)会長の國部毅氏が2025年6月下旬の株主総会後、特別顧問に退く。FG会長には三井住友銀行(SMBC)会長の髙島誠氏が就き、SMBC会長には三井住友ファイナンス&リース(SMFL)社長の橘正喜氏が回る。
髙島氏は国際畑を歩み、SMBC頭取、会長を務めた。また、橘氏はかつて頭取候補に名前が挙がった「実力者」だが、17年にSMFL社長に転出、銀行本体への復帰はないと見られていた。だが、航空機などリース事業やファンド事業をグループの儲け頭に飛躍させた実績が評価され、異例のカムバックとなった。
企画畑を中心にキャリアを積み、約14年間、経営の第一線に身を置いた國部氏が退き、国際畑の髙島氏、リース事業を担ってきた橘氏が会長に就く新体制は、銀行ビジネスの構造変化を象徴しているようにも見える。
國部氏は01年の旧住友銀行と旧さくら銀行との合併、SMBCの不良債権問題解決に向けて、03年3月期決算で子会社の地銀・わかしお銀行を存続会社とする「逆さ合併」で合併差益を捻出し、保有株式の含み損処理に目処を付けた。
その後も日興コーディアル証券(現SMBC日興証券)の完全子会社化、NTTドコモの保有株式(約34%)を買い戻して三井住友カードを完全子会社化、SMFLを住友商事との共同出資に切り替えて連結子会社から持分法適用会社にすることで、銀行法の制約を外し、自律的な成長を目指せる体制を整えた。
現在のSMFGは、国内では銀行、カード、投資をアプリに一体化したサービス「Olive」のアカウント開設が300万件を突破。老舗ポイントサービスの「Tポイント」を自社の「Vポイント」に統合するなど、デジタル領域に注力。さらにアジアを中心にノンバンクなどへの出資を広げ、海外業務を強化。
グループの収益構造も様変わり。24年3月期の連結業務純益に占めるSMBCの割合は約58%まで低下。国際業務やカード、リースなどの収益をさらに伸ばし、メガバンク首位の三菱UFJFGに肉薄できるか。