【今後の展開を専門家に聞く】アマゾンジャパン、独禁法違反疑いで立入調査 確約手続に移行の可能性も

公正取引委員会は11月26日、独占禁止法(独禁法)違反の疑いで、アマゾンジャパンに立ち入り検査を行った。独禁法が禁じる「優越的地位の濫用」「拘束条件付取引」に該当する可能性があるという。

【<画像>公公取委がアマゾンに関するアンケート実施】

関係者によると、今回の立ち入り検査で問題となっているのは2点だという。

1点目は、アマゾンの「競争力のある価格」についてだという。アマゾンは出品者に対し、「競争力のある価格」を提示するように提案している。価格を下げない場合、カートボックスをはく奪している例があったようだと関係者は話す。

2点目は、FBA(フルフィルメントバイアマゾン)の導入による優遇だという。FBAを導入している企業のカート表示を優遇していることが、違反になる可能性があると公取委では見ているようだ。

アマゾンでは、最安価格を提示した商品に加えて、配送スピードが早い商品が優先表示される傾向があるといわれている。FBAを導入した場合、最も配送スピードが早くなるとみられることから、FBAの導入が、カートボックスの優先表示につながっているようだ。

<弁護士「今回も確約手続きに進む可能性」>

独禁法に詳しい越田雄樹弁護士によると、「アマゾンの行為は、優越的地位の濫用や拘束条件付取引に該当し、独禁法に違反する疑いがあることを踏まえてのものかと思う。今後アマゾンに対しては、関係者へのヒアリングなどが実施され、意見聴取などを経て行政処分となるのが一般的だ。案件にもよるため明言はできないが、半年~1年前後で処分となる可能性がある」と話していた。

越田氏は、「アマゾンジャパンは過去に別件で、独禁法で認められている確約手続を利用したことがある。今回も同様に確約手続に進む可能性がある」とも話していた。

「確約手続き」は、独占禁止法に2018年に導入された制度。違反行為があった事業者が、確約手続きを行うことを選択した場合、違反行為についての改善に向けた計画「確約計画」を策定し、公正取引委員会に提出する。同計画が承認されれば、行政は措置命令を行わないという仕組みだ。

関係者によると、公取委はアマゾンへの実態調査を定期的に行っていたという。アマゾンジャパンは今回の件に関して、「公正取引委員会の調査に、全面的に協力してまいります」とコメントしている。

<公取委、出品者から情報提供を募集>

公取委は11月27日、今回の立ち入り検査に合わせて、情報を求める目的で、アマゾンの出品者を対象としたアンケート調査を実施すると発表した。

公取委のサイトに専用のアンケートを設ける予定だという。開設は、12月上旬を予定している。

アンケートは、現在アマゾンに出品している事業者だけでなく、過去に出品していた事業者も対象にするという。事業者から、アマゾンとの取引について、カートボックス関連のやり取りを中心に、幅広く実態を確認する予定だとしている。公取委に取材したところ、質問の内容などは、未定とのことだった。

今回の件を受け、アマゾンに出品する、家電ECのA社に取材したところ、「圧力をかけられたことはないが、最安価格とFBAの利用が『カートを取る』ために必要であることは、周知されていると思う。アマゾン直販の商品は、利益度外視の価格設定がされており、FBAを利用していることが多い。基本的にカートをとれない」と話していた。

ペット関連のECを行うB社は、「(価格について)具体的に『他社より安くして』と言われることはないが、(その趣旨が)伝わるようには言ってくる。当社はFBAを利用しているが、アマゾン側の、商品の扱い方はあまりよくない。複数個の商品を破損されたこともあった。在庫があったからよかったものの、なかったら欠品になってしまっていた」としていた。