世界初の固体電池ポータブル電源ブランド「YOSHINO」の製品を主にオンラインで販売するヨシノパワージャパンは今年4月、渋谷・宮下公園にある商業施設「RAYARD MIYASHITA PARK」に1週間限定のポップアップストアを出店した。本格的なポップアップストアの運営は初めてだったが、三井不動産とSUPER STUDIOが提供するOMOソリューション「THE [ ] STORE(ザ・ストア)」を活用することで、キャンペーン施策から店舗運営まで効果的に展開し、1週間で約4200人を集客することに成功した。リアル店舗やSNSを通した製品情報の拡散は、主力販路である「Amazon」「楽天市場」といったモール店舗の売り上げを通常時の5倍以上に跳ね上げる反響ももたらしたという。ポップアップストアの出店により、製品の認知向上や、ECでの販売促進において成果を上げた同社の取り組みについて、営業一課 金澤慶課長と齊木陸マネージャーに聞いた。
<世界初の固体電池を搭載したポータブル電源>
――固体電池ポータブル電源ブランド「YOSHINO」はどのような製品を展開していますか?
金澤:当社が販売する「YOSHINO」は世界で初めて固体電池を搭載したポータブル電源ブランドです。
ハイスペックで軽量化されており、急速充電が可能です。固体電池を用いている一番の特徴は、難燃性がもたらす安心です。
サイズやスペックが異なる4製品を展開しています。価格は5万4900円~49万9900円となっています。コンパクトな製品はアウトドアなどで利用されることが多く、一般消費者にご購入いただくケースが多いです。ハイスペックなモデルは災害対策として、官公庁や自治体に購入していただくケースもあります。
――主な販路は?
金澤:2023年12月ごろから販売を開始した若いブランドということもあり、オンラインを中心に販売しています。自社ECサイトもありますが、主な販路は「Amazon」「楽天市場」といったECモールです。
<SNSでキャンペーン展開、1週間で約4200人集客>
――ポップアップストアを展開した経緯は?
齊木:オンラインでの販売が中心ということもあり、購入を検討しているお客さまにどのようにして、製品を触っていただける機会が作れるか、ということを考えていました。
家電量販店での取り扱いに向けて話を進めていましたが、店頭に置いていただくまで時間がかかるということもあり、イベント出店やポップアップストアの展開を検討しました。
1〜2日間の短期的なイベントに出店する機会をいただく中、もっとしっかりと出店したいと考えていました。そんな時に、SUPER STUDIOさんとのつながりがあり、「THE [ ] STORE」を紹介していただきました。
「THE [ ] STORE」は東京・渋谷の「RAYARD MIYASHITA PARK」という好立地にある店舗を丸々活用して、期間限定で店舗を運営できます。イベントでの簡易的な出店とは異なり、しっかりとしたお店で接客できるということで、ぜひやりたいと思いました。
▲齊木陸マネージャー
――出店期間中の集客の状況は?
齊木: 2024年4月19日(金)〜4月25日(木)の1週間、出店しました。期間中、約4200人の方にご来店いただくことができました。
SNSを中心にキャンペーンを展開したことで、多くの方にご来店いただくことができました。キャンペーンのおかげで、SNSのフォロワーの増加にもつながりました。
――どのようなキャンペーンで集客を図ったのですか?
金澤:当社の公式Instagramや公式Xアカウントのフォロー&投稿してくれたお客さまに、店頭で「スマホ充電アダプター20W」をプレゼントするキャンペーンを実施しました。想定よりも反響が大きく、用意したアダプターが初日に3分2がはけてしまい、2日目の午前中にはすべてなくなりました。
プレゼントできるものがなくなってしまいましたので、急遽、「RAYARD MIYASHITA PARK」内の店舗と連携し、ソフトクリームの無料券をプレゼントすることにしました。その後、アダプターを後日配送にてプレゼントする方法に切り替え、キャンペーンを継続しました。
他にも来店者限定で固体電池ポータブル電源の本体をプレゼント、または3カ月無料でお試しできる抽選イベントを実施しました。出店最終日の4月25日の19:00にインスタライブを実施し、当選者を発表しました。インスタライブは多くの方に視聴いただくことができ、手応えがありました。
▲営業一課 金澤慶課長
<プレゼント施策などで”興味がない”顧客も来店>
――通りすがりの人はどのように集客したのですか?
金澤:店頭でプレゼントキャンペーンを案内したり、固体電池ポータブル電源で作るオリジナルコーヒーを1杯差し上げたり、携帯電話の無料充電チャージサービスを提供したりすることで集客を図りました。
私自身もそうですが、何もない状態でポータブル電源のお店にふらっと入ろうとはならないと思います。来店するきっかけを作って、ポータブル電源に興味がなかった方にも立ち寄っていただけるような工夫をしました。
店舗内に人がいないと、ふらっと立ち寄った方も入りづらいと思いますので、なるべくお客さまがいる状況を作って、来店しやすい雰囲気も作りました。
「THE [ ] STORE」では、接客に慣れた店舗スタッフまでご用意いただけるので、店頭での呼び込みや接客についても、アドバイスいただきました。
来店していただいた方には、当社の製品の使い方や利用シーン、機能性などについて紹介させていただきました。災害に備えてご購入いただくメリットなどを重点的に説明しました。
▲アウトドアや防災など製品の利用シーンを紹介
――店頭で購入につなげるための仕掛けは?
齊木:ポップアップストアで使える15%OFFクーポンの配布したり、購入者限定で「スマホ充電アダプター60W」をプレゼントしたりしました。
<モール売上が急増、「楽天市場」のCVRが2倍に>
――ポップアップストアを出店したことでの成果は?
齊木:「THE [ ] STORE」に出店していることや、来店していただいた方に製品情報やレビューなどをSNSで発信していただけたことで、製品の認知や安心感の向上につながり、「Amazon」や「楽天市場」での売り上げが急増しました。
通常、ECモールでの売り上げは週平均で数百万円ほどですが、出店期間中のECモールでの売り上げは通常時の5倍以上に跳ね上がりました。単価の高い製品でもありますので、転換率(CVR)は課題でしたが、期間中の「楽天市場」の転換率が2倍に向上しました。
期間中の購入者は、新規顧客が最も多かったですが、既存顧客からの追加購入も増えました。これも情報拡散のおかげだと思います。
ポップアップストアが終わった後も、問い合わせ件数が通常時の約3倍に増えました。ポップアップストアに来店した方や、SNSの発信を見た方が、もう少し詳しく製品について知りたいと思い、問い合わせしていただいたようです。
キャンペーンにより、SNSのフォロワーも増えました。期間中に公式Instagramのフォロワー数が300人程度増加し、 公式Xは200人ほど増加しました。
――店舗スタッフの手配以外に「THE [ ] STORE」が支援してくれたことは?
齊木:本格的なポップアップストアを運営するのが初めてでしたので、「THE [ ] STORE」の担当者の力を全面的にお借りし、企画から店舗レイアウト、当日の運営まで実施しました。
集客の企画についても、さまざまなブランドのポップアップストアを支援してきた経験から、アドバイスをいただき、当社ならではの企画を練ることができました。
当社の前に「THE [ ] STORE」で出店しているブランドが、来店者にワインを1杯差し上げているのを見学させていただき、当社もコーヒーメーカーを用意してコーヒーを1杯プレゼントすることにしました。
店舗レイアウトもアドバイスをいただき、店頭の入り口でアウトドアシーンでの利用をメインにしたブースを設けて馴染みやすい雰囲気を作り、女性でも入りたくなるような店舗を作ることができました。当社だけではここまでの成果は上げられなかったと思います。
金澤:ポップアップストアを開設できる他の施設では、基本的に店舗スペースを貸していただけるだけで、人の手配やアドバイスまではしてくれません。
「THE [ ] STORE」は一緒に店舗を作り上げていくような感じでサポートしていただくことができ、とても心強かったです。
「THE [ ] STORE」のスタッフは、「1」教えてたら「10」やってくれるような接客に慣れた方ばかりでした。
商品を陳列する台や、備品なども貸していただいて、出店に不慣れな当社でも店舗作りがとてもやりやすかったです。
<「THE [ ] STORE」出店がその後のオフライン施策にも好影響>
――「THE [ ] STORE」出店後もオフラインの展開をしていますか?
齊木:東急プラザ表参道「オモカド」にもポップアップストアを出店しました。
こちらは基本的に自分たちで企画や準備をやらなければいけませんでしたが、「THE [ ] STORE」での経験を生かして、「オモカド」のポップアップストアも運営しました。
「THE [ ] STORE」のポップアップストアに来店してくださった方や、その時は来店できなかったがSNSでの発信を見たという方が、「オモカド」にも来店してくださいました。来店された方の3分の1のお客さまは、「THE [ ] STORE」からの継続で来店していただきました。
金澤:「THE [ ] STORE」の経験を踏まえ、プレゼントで使うアダプターの準備数を2倍に増やしました。「THE [ ] STORE」で成功した集客策を実施したことで、多くの方に来店いただけました。
「THE [ ] STORE」の経験が、当社のポップアップストアの取り組みのベースになっています。機会をいただけるようでしたら、また「THE [ ] STORE」に出店して、勉強させてもらいたいです。
――今年は地震や台風による大きな災害が発生し、警報も発令されるなど、防災への意識が高まったと思いますが、販売への影響はありましたか?
金澤:やはり台風や地震が発生した後や、災害警報などで危機感を感じる方が増えた際に、当社の製品への注文数も伸びます。ただ、当社としては災害が起きる前にこそ、備えていただきたいと考えておりますので、ポップアップストアなどをきっかけに当社の製品だけではなく、ポータブル電源という災害に備える製品があることを多くの方に知っていただきたいと考えています。
ポップアップストアやSNSの投稿で当社の製品を知った方が、災害発生時に当社の製品を思い出していただくケースもあります。災害時に検索して、SNSでの当社の製品に関する投稿を見つけて、そこから購入に至るケースもあります。
ポップアップストアなどで防災や当社の製品についての情報を種まきさせていただくことで、後から芽が出ることもあると考えています。
――今後、「YOSHINO」として強化することは?
金澤:今後、よりスペックの高い製品を提供していきたいと考えています。本体だけではなく、防水・防塵機能を持ったガジェットなども販売したいと思います。家庭で使える蓄電器も手がけていきたいです。「YOSHINO」製品の進化にぜひご期待ください。
■固体電池ポータブル電源ブランド「YOSHINO」
https://www.yoshinopower.co.jp/
■OMOリアル店舗ソリューション「THE [ ] STORE」
https://ec-force.com/product/omo