「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングは11月7日、究極の普段着「LifeWear」の事業モデルの進捗を公開した。「LifeWear = 新しい産業」だとし、事業成長とサスティナビリティを両立する事業モデルだという。ECサイトのレビューや実店舗などで得た3000万件以上の顧客の声を分析し、生産や物流体制、商品開発などに生かしている。
2024年8月期のユニクロ事業の売上規模は、”情報製造小売業”の実現に向けた全社改革「有明プロジェクト」を開始した2017年8月期と比べて、約70%伸長し、営業利益率は5.5ポイント上昇している。
<「必要な分だけ」を実現>
同社は「有明プロジェクト」の中で、温室効果ガスの削減、ダイバーシティの推進、年間100億円規模の社会貢献活動といった、サスティナビリティに関する取り組みに注力している。
「事業成長とサスティナビリティを両輪で実現する。国内外で商品やブランドの背景を踏まえた上で買い物をする人が増えている。サスティナビリティの取り組みは、顧客からの信頼や安心感につながると思う」(取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏)と話した。
▲取締役 グループ上席執行役員 柳井康治氏
同社は生産・物流・倉庫・販売を自社でコントロールできることを強みとしている。それぞれの機能を向上し、作業の効率化や欠品の改善といった成果につなげている。近年の夏の長期化や暖冬傾向については、通年販売する定番商品の拡大など、商品構成を工夫しているという。
「アルゴリズムを活用した需要予測や、取引先とのコミュニケーションに注力しているが、目指す基準にはまだ達していない。個店、SKU単位でレベルを上げて、『必要な分だけ作り・運び・販売する』を実現する」(同)と話した。
<顧客の声をリアルタイムに可視化>
事業成長の要因の1つとして、ECサイトのレビューやチャットボットなどで得た顧客の声をグローバルでリアルタイムに可視化し、素早く商売に反映していることを挙げた。
「国内、海外を問わず、顧客が本質的に求めていることはあまり変わらない。例えば、世界的にヒットしたブラトップは、北米の顧客の『1枚で着たい』といった利便性に関する声を反映したものだ」(グループ執行役員 田中大氏)と説明した。
▲グループ執行役員 田中大氏
<リペアを強化、リユースは挑戦続ける>
サスティナブルの取り組みとして、今年10月までにリペアサービス「RE.UNIQLO STUDIO」を22の国と地域の51店舗に拡大している。12月末までにグローバルで60店舗に拡大する予定だ。
国内でトライアルを実施している古着販売については、「ビジネスとして正式にローンチするにはまだ知見が足りないと思う。例えば、ボトムスは裾上げされた状態で持ち込まれることもあるので、サイズに関する課題がある。ECサイトの販売はまだ難しいので、実店舗で接客しながら売るなどの仕組み作りをしていく」(柳井氏)と説明した。