楽天グループ(楽天)の2024年1‐9月期(第3四半期)における、国内EC流通総額は、前年同期比5.5%減の4兆1964億円となった。SPU(スーパーポイントアッププログラム)の変更や全国旅行支援の終了、ふるさと納税の制度変更などの影響を受け、期初の想定通りマイナスになった。三木谷浩史社長は、契約回線数が800万を超えた「楽天モバイル」の成長が「『楽天市場』の若年層の取り込みに貢献している」と話した。
【<画像14点>楽天が決算で発表したEC、モバイル、AIのデータ】
2024年7‐9月期(純第3四半期)の国内EC流通総額は同6.9%減の1兆4635億円だった。
昨年7月に一部終了した「楽天トラベル」の全国旅行支援による高い前年比ハードルや、昨年10月のふるさと納税ルール変更直前の同9月に「楽天市場」での駆け込み需要があったことなどが影響し、減少した。ただ、これらの影響を除けば、同約5%増とプラス成長を維持しているという。
三木谷社長は、「前年度はふるさと納税の駆け込み需要などがあったものの、(純第3四半期の)売上収益については前年同期比4.4%増とプラスになった。特に『楽天トラベル』はコロナ前(2019年)と比べて流通総額が43.1%増となった。広告事業の売上収益も前年同期比4.3%増、インターナショナル部門の売上収益も同9.4%増となった」と話す。
<「楽天モバイル」がエコシステムの成長エンジンに>
「楽天モバイル」の契約者数増加が楽天エコシステムの成長にも貢献しているという。
三木谷社長は、「『楽天モバイル』に入っていただくと他のサービスの利用数や使用金額が増える。『楽天モバイル』は今後の大きな収益ビジネスになるだけではなく、エコシステムの成長のドライビングエンジンになりつつある」と強調する。
「楽天市場」においても「楽天モバイル」の影響は大きく、「楽天モバイル」新規契約者の1年後の「楽天市場」利用割合は15.7%上昇するという。
三木谷社長は「『楽天モバイル』ユーザーは非ユーザーと比較して、平均流通総額で47.9%高く、平均利用回数で40.1%多い」と説明する。
「楽天モバイル」の契約数は812万回線(11月10日時点)と拡大している。収益の改善も進んでおり、MNOへの設備投資本格化後、初めて四半期営業利益で黒字化を達成したという。
<AI活用で顧客対応コストを80%超削減>
AI活用にも注力している。AIを活用し、オペレーション効率、マーケティング効率、クライアント効率をそれぞれ20%向上させるプロジェクト「トリプル20」に取り組んでおり、成果も出始めている。
三木谷社長は、「楽天モバイルのカスタマーサポートは当初、お客さま1人当たり195円のコストがかかっていた。これをよりネット上のサービスに変更していき、今年9月以降はAI活用を活性化したことで1人当たりのコストは37円に削減できている」と話す。
今後、AIを活用したパーソナルコンシェルジュ機能を「楽天市場」や「楽天トラベル」などに追加する予定だ。