次世代光通信基盤「IOWN」普及へ、NTTが日本・台湾で初の通信網開通

通信の遅延がほとんどなく、日本と台湾でズレずに合唱

 

「今回の実績により、さまざまな国でIOWN(アイオン)の展開を進めていきたい」――。

 NTT社長の島田明氏は、次世代光通信基盤であるIOWNの普及に意欲を示す。

 NTTと台湾の通信大手の中華電信が、日本と台湾の間でIOWNを使った通信網を開通した。IOWNを構成する主要技術の一つで、ネットワークから端末までを光で結ぶ「APN(オールフォトニクス・ネットワーク)」を国際間で開通したのは初めてとしている。

 APNにより、東京都武蔵野市のNTT武蔵野研究開発センタと台湾の桃園市にある中華電信のデータセンターの間、約3千㌔㍍のデータ通信を約17㍉秒(㍉秒は1千分の1秒)の遅延で行えることを確認した。例えば、通信の遅延がほとんどないため、日本と台湾でズレることなく合唱ができる。同じ区間を一般のインターネット回線で接続した場合、200-500㍉秒の遅延が生じるという。

 従来のネットワークでは、光回線を活用していても通信機器内で光信号から電気信号に変換する必要があり、遅延が発生したり消費電力が増大したりする要因になっていた。NTTは今後も半導体チップの信号処理を電気ではなく光で行う「光電融合」技術の開発を推進するなどし、30年度以降に通信の電力効率を従来比100倍に引き上げる計画だ。

 IOWNの普及にはこうした省電力性を訴求するとともに、低遅延性を生かせるユースケース(活用例)の開拓が課題になる。モバイル通信の領域で言えば、5G(第5世代通信)は4Gに比べて低遅延で、高速大容量の通信ができると喧伝されてきた。だが「5Gを必須とするアプリケーションは多くなく、法人での活用は必ずしも進んでいない」(業界関係者)。既存の通信技術で十分、と判断されてしまうことで収益化が遅れる懸念はIOWNにもつきまとう。

 日台間でのAPN開通も、まだ接続に成功した段階にすぎない。NTTはデータの遠隔バックアップなどでの活用を模索していく方針だが、どれだけ顧客の潜在ニーズを発掘できるかが問われる。

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