アマゾンジャパンは8月27日、最新の調査により、アマゾンウェブ サービス(AWS)上で最適化されたワークロードは、オンプレミス(自社所有)と比較して、温室効果ガスの排出量を最大99%削減可能と推定できると発表した。日本企業のAI利用に伴うワークロードの温室効果ガス排出量削減に貢献する。
アマゾン ウェブ サービス(AWS)は、2006年のサービス開始以来、世界で幅広く採用されているクラウドコンピューティングサービス。コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワーク、分析、機械学習および人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、モバイル、セキュリティ、ハイブリッド、メディア、ならびにアプリケーション開発、展開、および管理に関する240種類以上のフル機能のサービスを提供している。
このほど、AWSがアクセンチュアに委託し実施した最新の調査によると、ITワークロードにおけるオンプレミスのインフラストラクチャからAWSクラウドデータセンターへの移行が、AIの活用による環境フットプリントを最小限に抑える効果的な方法であることが明らかになったと発表した。
アクセンチュアの推定によると、AWSのグローバルのインフラはオンプレミスと比べて、エネルギー効率を最大4.1倍向上させることができる。日本の企業組織にとって、AWS上で最適化されたAIワークロードは、オンプレミスのデータセンターと比較して、最大99%の温室効果ガスの削減が見込まれるとした。
本調査では、日本国内において、AIを含め計算負荷の高いワークロードにAWSのデータセンターを利用するだけで、オンプレミスのデータセンターに比べて温室効果ガスの排出量を98%削減できるとしており、その要因に「稼働率向上によるハードウェアの効率化」(33%)、「電力や冷却の効率化」(34%)に加えて、「AWSのカーボンフリーエネルギーの調達(31%)」を挙げた。
さらにカスタムシリコンチップを活用してAWS上にワークロードを移行し、最適化した日本の企業組織は、AIワークロードの温室効果ガスの排出量を合計で最大99%まで抑えられる可能性がある。
本調査結果を受けて、アマゾン ウェブ サービスジャパン 常務執行役員 サービス&テクノロジー統括本部 統括本部長 安田俊彦氏は、「今なお、世界中の組織におけるIT支出の85%を、オンプレミスが占めているという現状があります。これを考慮すると、日本においてAIワークロードをAWS上で最適化することで温室効果ガス排出量を最大99%削減することは、日本の組織にとって持続可能性のための有意義な機会といえます。電力系統(グリッド)における再生可能エネルギーを増やす取り組みも、AI ワークロードの温室効果ガス削減をさらに後押ししていくことになるでしょう。AWSは、データセンターの設計から最適化、チップへの投資に至るまで、データセンターインフラストラクチャー全体で持続可能性のためのイノベーションを常に行い、お客様のニーズに対応するため継続的にエネルギー効率の改善に努めています」と述べた。
アクセンチュアのテクノロジー・サステナビリティ・イノベーション担当グローバル・リードであるサンジェイ・ポダー(Sanjay Podder)氏は、「本調査は、AWSがハードウェアや冷却の効率化をはじめ、カーボンフリーエネルギー、カスタムシリコン、最適化されたストレージなどに注力することで、組織によるAIと機械学習のワークロードの温室効果ガス削減に貢献できることを示しています。AIの需要が拡大し続ける中、テクノロジーによる持続可能性は、企業がイノベーションを推進しながら環境目標を達成する上で重要な役割を果たすことができます」とコメントした。
電力効率向上のためにAWSが進めている代表的な取り組みの1つに、AWSのカスタムシリコンチップへの投資がある。2018年に発表された「Graviton」は、AWSの独自設計による汎用プロセッサで、この種のチップとしては初めて大手クラウドプロバイダーによって大規模に展開されたものとなる。
最新の「Graviton4」は、初代の「Graviton1」の4倍のパフォーマンスを提供し、「Graviton3」は同等のEC2インスタンス(データセンターで計算が行われる)より、最大60%少ない消費電力で同じパフォーマンスを実現できるのに対して、「Graviton4」はさらにエネルギー効率が向上した。
生成AI アプリケーションをより持続可能な方法で実行するためには、エネルギー効率の高いハードウェアによるシリコンチップレベルでのイノベーションが求められるとし、AWSは、パフォーマンスやエネルギー消費量を最適化するため、AWS Trainium(機械学習トレーニング用)や、AWS Inferentia(推論用)などのカスタムシリコンアクセラレーターを開発、同等の他の高速コンピュートインスタンスより大幅に高いスループットを実現している。
AWS Trainiumは、生成AIモデルのトレーニングにかかる時間を数カ月から数時間へと短縮する。Trainium2は、第1世代のTrainiumと比べて最大4倍高速なトレーニング性能と、3倍多いメモリ容量を提供すると同時に、エネルギー効率(1ワットあたりの性能)を最大で2倍向上させる設計となっている。
AWS Inferentiaは、AWSの機械学習推論チップのなかで電力効率が最も高く、Inferentia2は類例のものと比べて最大50%高いワットあたりの性能を提供。最大40%のコスト削減を可能にする。AWSは、こうしたカスタムシリコンのアクセラレーターにより、大規模なAIモデルのインフラストラクチャの温室効果ガスを削減し、消費電力1ワット当たりのパフォーマンスを強化して、効率的に実行可能にする。
AWSのインフラストラクチャは、エンジニアリングにおけるイノベーションを通じて、できるだけピークに近いエネルギー効率で配電から冷却技術までの運用が可能。AWSはリソースの使用を最適化することで、アイドリング容量を最小限に抑え、インフラストラクチャの効率を改善し続けている。
例えば、AWSではデータセンターの設計の際、中央に大型の無停電電源装置(UPS)を配置する代わりに、小型のバッテリーパックを利用してラックごとにカスタム電源を設置することで、電力効率を改善するだけでなく、可用性も向上させた。電力は、電圧の変化や変換の度に、その過程でいくらかの電力が失われるが、UPSを排除することにより、AWSはこうした変換を減らすことができる。さらにラックの電源供給を最適化したことで、ここでの最終的な変換による電力のロスも低減しており、こうした変更を合わせると電力変換時のロスはおよそ35%削減されるとした。
サーバー機器に電力を供給した後、AWSのデータセンターにおいてもっともエネルギーを使用するリソースの1つとなるのが冷却だ。AWSは効率性を高めるため、場所や時期に応じ、自由空冷をはじめとするさまざまな冷却技術に加えて、リアルタイムデータを用いて気象状況に適応している。
こうした革新的な冷却に関する取り組みは、運用規模の小さな一般的なオンプレミスのデータセンターではより困難となる。AWSの最新のデータセンター設計は、最適化された空冷ソリューションが液冷機能と併せてシームレスに統合されており、NVIDIAのGrace Blackwell Superchipのようなもっとも強力なAIチップセットに対応できる。こうした柔軟なマルチモーダル冷却設計により、従来のワークロードとAIモデルのいずれを実行する場合でも、最大限のパフォーマンスと効率性を引き出すことができる。
今回の調査結果から、日本におけるAWSのカーボンフリーエネルギーの追加調達が、計算負荷の高いワークロードの温室効果ガスの排出の31%削減に貢献していることがわかる。AWSは、2040年までに事業全体で温室効果ガスの排出量実質ゼロを達成するというAmazonのコミットメントに足並みを揃える形で、グローバルインフラストラクチャに必要な電力の100%カーボンフリーエネルギーへの移行を迅速に進めている。
Amazonは世界中で 500件を超える太陽光発電と風力発電プロジェクトに数十億ドルを投資。Amazon全体において事業活動で使用する電力量と同等の電力を2030年までに100%再生可能エネルギーで確保するという目標を、2023年に7年前倒した。
Bloomberg New Energy Finance(NEF)によると、Amazonは4年連続で世界最大の再生可能エネルギー購入企業であることが確認できている。現時点において、日本国内で太陽光・風力発電合計20件のAmazonの再生可能エネルギープロジェクトが始動可能な状態となっている。これらが稼働を始めれば、年間20万メガワット時(MWh)以上の再生可能エネルギーが生成されると見込まれ、毎年日本の4万8000世帯に電力を供給するのに十分な量となる。2024年7月には、日本で初めてとなる陸上風力発電所(青森県)への投資をを発表 している。
2021年に日本初となるコーポレートPPA(Power Purchase Agreement)を活用したオフサイト型の太陽光発電プロジェクト(分散型)を立ち上げて以来、Amazonは日本全国での再生可能エネルギーの普及を急速に拡大してきた。大規模な再生可能エネルギープロジェクトに適した土地が限られる日本において、Amazon は集約型および分散型の大規模太陽光発電所、陸上風力発電所、そして14 件の屋根設置太陽光発プロジェクトを進めるなど、さまざまな革新的な方法で再生可能エネルギーの調達を進めている。
Amazonは、引き続き日本社会の再生可能エネルギーへの移行を支援するため、さまざまな企業と連携して変革を進めていく考えを示した。バーチャルPPAなどの仕組みを通して、企業による再生可能エネルギー調達の選択肢を広げるため、数年にわたり政策関係者や日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)をはじめとした業界団体と協力しており、これらの取り組みは、新たな再生可能エネルギープロジェクトを電力網に追加し、他の企業が再生可能エネルギーへの移行目標を達成するための新たな機会を創出することにも貢献する。
AWSの最新調査レポート「AWSクラウドへの移行による温室効果ガス削減に向けた取り組み」は、専用サイトよりダウンロードできる。