【財務省】遠のく財政健全化 法人税引き上げに企業は反発

今後の岸田文雄首相の政権運営を左右しそうな2024年度税制改正大綱の議論。首相が表明した計4万円の所得税と住民税の定額減税措置に関し「国民の皆さんに伝わっていない。従って、これが今度は心に響かない」(鈴木俊一財務相)と政権支持率が低迷する理由を〝解説〟したものの、財政規律が遠のく現状への危機感は乏しい。唯一、目を引くのが自民党税制調査会で浮上した法人税率の引き上げ論だが、決着までには曲折が予想される。

 12月1日の会見で、鈴木氏は「大企業を中心に内部留保が増加している」と指摘。賃上げや投資を促すという観点で「法人税改革は意図した成果を上げてこなかったとの指摘は承知している」とした上で「内部留保を過度に保有するのではなく、賃上げや人への投資、設備投資などの形で活用することが重要だ」と述べ、自民税調の議論へ期待をにじませた。

 ただ、政権支持率が過去最低を更新し、求心力が急落している上、自民派閥の政治資金パーティーを巡り、党最大派閥の安倍派で裏金疑惑が浮上。政治とカネの問題が直撃した今の首相や官邸には増税批判に耐え得る体力はない。加えて経済界からの反発も根強い。少なくとも、24年税制改正大綱や24年度予算案を取りまとめる12月中は政治とカネの問題で〝逆風〟続きになるのは必至で、法人税引き上げ論は自民税調の宮沢洋一会長の「暴走」(与党幹部)で終わるかもしれない。

 首相は児童手当拡充だけでなく、低所得世帯の子供1人当たり5万円の追加給付など「次元の異なる少子化対策」に躍起だが、財務省内では「何をやっても支持率は上向かない」(主計局)と怨嗟の声が出ている。ある幹部は、放漫財政に歯止めもかからない状況に「財務省の力は落ちた」と話す。

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