今夏の記録的な猛暑がコメの品質にも影響を及ぼしている。
農林水産省が公表した8月末時点の農産物検査結果によると、23年産米(水稲うるち玄米)の1等比率は68.
9%となり、22年産米の同時期(68%)とほぼ同水準だった。ただ、9月入り後は、米粒が白濁化する異常が発生しており、今後は1等米比率が低下する公算が大きい。農家収入には打撃となり、コメの産地に懸念が広がっている。
農産物検査法に基づく規格では、各地の農業協同組合(JA)など民間による検査で、形や色、水分含有量などに基づき、玄米を1~3等級と規格外に分類している。米粒が白濁化すると等級の低下要因となる。
炊いた後の見た目や食味に大きな影響がないという意見もあるが、等級が低いと精米後に残るコメの割合が下がり、取引価格にも影響が出る。
検査数量は24万6300トンとなった。猛暑で水稲の生育が早まり、前年から1割、前々年から2割増えた。例年は刈り取りが本格化する秋以降に1等米比率が高まり、最終的に8割前後に達する。ただ、23年産米については、10月末に公表される9月末時点の検査結果には高温障害の影響が本格的に現われてくる可能性があり、1等米比率の上昇は見込めないという。
宮下一郎農水相は記者会見で、東北、北陸、関東で高温障害が発生しているとした上で「1等米の比率が低くなっているという報告が検査機関から上がってきている」と明らかにした。野菜や果樹にも影響が出ているという。
農家の収入減に対しては、農業共済や収入保険による補償が基本的な対応方針としているが、与党や業界から農水省に支援を求める声も高まっている。宮下氏は「高温耐性品種への転換や対策技術の導入をしっかり支援していく」と語った。