8月31日、経済産業省から「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」が公開された。2022年の物販系BtoC‐EC市場規模は13兆9997億円、前年比5.37%増、EC化率は9.13%である。ちなみに金額ベースでは7132億円の増加だ。
2021年は前年比8.61%増であったため、成長の鈍化が始まったと見るのが正しいだろう。その点は一旦脇に置き、長年同調査を担当してきた筆者ならではの視点ということで、報告書では言及されていない重要な4つの点に関し述べさせていただきたい。
<EC化率10%は2024年に達成か>
1点目はEC化率10%突破時期について。筆者の数年前までの予想は2023年であったがEC市場の成長鈍化もあって到達は厳しい。
普段チェックしている複数のデータに基づけば、2023年の伸長率は5%を割り込む可能性がある。
具体的な市場規模は14兆7000億円程度、EC化率は9.5%辺りとみる。とすれば2024年にギリギリ10%に到達するかどうかといったところだろう。参考までにスーパーマーケットの市場規模は15兆円。これを超えるタイミングも個人的には気になる。
2点目は商品カテゴリー別の市場規模について。主要カテゴリーの中で食品の伸長率が9.15%と最も高い。巣ごもり消費を契機とした勢いを今も継続中だ。ネットスーパーがじわり拡大していることが一因と思う。換言すれば食品購入のネット化が定着しつつあるということだろう。それでもEC化率は4.16%と低く伸び代は大きい。一方、アパレルの伸長率は5.02%。消費者のリアル回帰が進む中で健闘と見るが2023年はさらにリアル回帰が進み伸長率はやや落ちると予想する。
3点目はスマホ経由のEC市場規模について。7兆8375億円と前年比で8954億円増えている。全体の増加額が7132億円なのでそれを上回る増加額だ。つまり相当数のトランザクションがPCからスマホに流れているということ。
市場規模全体に占めるスマホ経由比率は56%である。この勢いだと60%台に突入するのは時間の問題だろう。伸びている理由は明らかにSNSの影響に間違いない。スマホファーストなデザインはもとよりSNS戦略の巧拙が雌雄を決しそうだ。
<自社ECのGMVは5000億円減少>
4点目はプラットフォーム比率について。報告書に記載はないが重要な点なのでしっかり説明したい。Amazon、楽天市場、ヤフーショッピング、au PAYマーケット、Qoo10、ZOZOTOWN合計のGMV(流通総額)は、筆者の推定で前年から1兆2000億円増加し、10兆5000億円。全体の75%を占める規模だと推定する。
伸びた要因はAmazon、楽天市場の伸びによるもの。消費者のリアル回帰によってそれまでの追い風の反動が大きいEC業界だが、Amazon、楽天市場に限っては消費者の購買行動が定着化していると見る。
ここで冷静に計算してみたい。全体の増加額は7132億円。プラットフォームの増加分は1兆2000億円なので非プラットフォームは差し引き、約5000億円のマイナスとなる。非プラットフォーム、つまり自社ECのGMVは前年比で5000億円減少という計算だ。
自社ECでも売上増の企業は一定数存在する。したがってこの事象は自社ECにおいて売上の二極化が進んでいると推察する。自社ECを推進する企業はこのタイミングで戦略の再考が重要と考える。巻き返しを期待したい。