【株価はどう動く?】日本株は新たな上昇波動に、米金利、ウクライナ戦争には警戒を

大企業業績が想定より好調

 以前から指摘してきましたが、2023年1―3月期は日本の株価は底値圏にあり、4月以降に上昇する可能性があると予想していました。その株高材料が、4月以降に多くの企業で実施された賃上げ、昨年32年ぶりの150円台という安値を付けた円安だということは、前回も説明した通りです。

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 円安はデフレ脱却、インバウンド(訪日外国人観光客)の拡大につながるなど、日本経済にとってプラスです。そして大企業業績は当初見込まれていたよりも好調で、それらが出揃う5月中旬頃に高値を付ける可能性があるとも予想していました。

 実際、その通りの展開となり、ついに株価は21年9月14日の高値である3万795円を超えてきました。21年9月から1年以上の長期下落局面がありましたが、これが終わり、新しい上昇相場が始まったと見ています。21年2月、9月の二番天井を超えており、相当強い波動が来ていると言えます。

 今回の株価上昇の出発点はコロナショックの安値、20年3月19日の1万6358円です。そこから12ないし13カ月というのが上昇波動の日柄ですが、その日柄通りに21年2月16日に3万714円で一番天井、9月14日に3万795円で二番天井を付けました。

 さて、「大回り3年、小回り3カ月」という相場の格言がありますが、20年3月から3年というのが、23年3月です。相場が山から谷、谷から谷へ向かう時の短期の期間は2から3カ月、長期サイクルでは2ないし3年というのが、経験法則から見た有力な日柄です。

 コロナショックの安値から、ちょうど3年目に底入れをしたのです。ですから今年の1月以降、日柄、時間のサイクルから見て、いつでも次の上昇トレンドに入ってもおかしくない状況でした。

 株価が上昇するには、この波動とマッチングする材料が出てこなければなりません。その有力な手がかりは、21年9月14日の3万795円から、22年3月9日の2万4681円までの下げ幅の半値戻しが2万7700円です。おおよそ2万8000円に半値戻しの壁がありました。

 この壁を、23年4月27日に2万8241円を付けた後、陽線が出て、小さな窓を開けて、その後数日で突破しました。なので、4月27日を起点に上昇第2波が始まったと見ています。

 この上昇波動では、米国の株価が下がっても、日本の株価は下がらないという「デカップリング」がついに始まる可能性が出てきています。

 短期的には、この後、株価は上がったり下がったりを繰り返して、3万円台を固めてから、上に向かうという展開が予想されます。当面の高値は3万2000円から3万3000円というのが値頃感です。

 中長期的には、下は3万円割れが買い、上は3万5000円が壁というボックス相場となりそうです。私は年末までに3万5000円に接近、あるいはそこに近い水準の株価を付けるのではないかと予想しています。

 3万円を付けるまでの材料は、前述の賃上げ、円安、そして「G7広島サミット」でした。この後、株価を左右する材料の1つが「政治の季節」です。いつ解散総選挙が行われるかというのは1つのポイントになります。

 秋口、あるいは来年の予算編成時にも総選挙が行われるのではないかという、様々な見方がされています。総選挙は株価にはプラスです。解散がなくても、年内に内閣改造は行われるでしょうから、人心一新は株価にプラスです。

 選挙以外に日本の株価を押し上げる材料としては、日本政府による積極財政が挙げられます。今後、景気対策を打って、タイミングのいい時期に解散というのは1つの見方です。

 年末までに、米国の金利、インフレがどうなるかも大きな材料です。年末にかけて金利がピークアウトして、ハイテク企業を中心に再び米国株が上昇すれば、日本の株もカップリングして上昇することになるでしょう。

 この逆で金利、インフレともに高止まりするということもあり得ますが、その場合は、米国株は波乱の展開になります。

 そして年末までにロシア・ウクライナ戦争が激化するのかどうか。あるいはどこかで停戦の動きが出てくるのか。いずれにせよ、株式市場に影響を及ぼします。ただ、激化の場合には日本の株価にとってはプラスに作用します。なぜなら、戦争拡大で世界的なインフレが加速して、日本の脱デフレを促します。さらに、第一次世界大戦時のような特需もあり得るからです。

 停戦となれば、特需で買われていた日本の海運や鉄鋼株は売られるかもしれませんが、ウクライナの復興需要が出てきます。米国の金利動向とロシア・ウクライナ戦争は不確定要因ですが、日本株の基調が強いことは間違いありません。

 今後の日本株は脱デフレ、資産インフレ相場ですから、基本的にバリュー株もグロース株も株価が底上げされます。中でも、過去30年のデフレ不況の中で業績が冴えず、株価が上がらなかった銘柄が見直されます。

 例えば不動産、銀行、運輸・物流、流通、食品関連の株価はすでに上がり始めています。ただ、こうしたバリュー株の底上げは5月いっぱいまでで、その後は再び、グロース株、ハイテク株などに資金が戻っていくことになるでしょう。

 ただし、ハイテクの中でも新興が買われるのは最後で、まずはNTTやソニーグループといった大型株が買われることになります。この間、新興銘柄は売られたり、安値圏にとどまり、上昇してくるのは秋口くらいからだと予想しています。

 安全に投資したい方は、高配当の大型株を買うのが1つです。腕に自信のある方は安値圏になるハイテク株に狙いを付けて買うのも一案です。ニューIPO銘柄にも注目です。3月28日に上場したArent(5254 東証GRT)は公募価格1400円台で、およそ2~3週間後には6400円の高値を付けました。他にもこうした人気銘柄が出てくる可能性はありますが、ボラティリティが激しいですから注意が必要です。