【国土交通省】コロナ禍でパスポート保有率低下に危機感

コロナ禍の影響で日本人のパスポート保有率低下に歯止めがかからず、旅行業界が危機感を募らせている。出国する日本人数がこのまま低迷を続ければ、国際航空便数の回復が進まずインバウンド(訪日客)拡大の足かせとなる事態も懸念され、海外旅行機運の醸成に乗り出している。

 外務省旅券統計などによると、コロナ前の19年に24.4%だった日本人のパスポート保有率は3年連続で低下。22年に17.8%まで落ち込んだ。

 コロナの水際対策は昨年秋に大幅緩和されたが、今年4月の出国日本人数は約56万人と19年比で3割強の水準にとどまる。すでに6割半ば水準に回復した訪日外国人数と比べ、戻りは鈍い。円安による割高感のほか、感染への不安や根強い様子見姿勢が要因と見られ、他の先進諸国と比べても「完全に周回遅れ」(業界関係者)に陥っている。

 日本旅行業協会(JATA)の髙橋広行会長(JTB会長)は「様々な課題が顕在化してきている」と警鐘を鳴らす。特に出国と訪日需要のバランスが崩れたままでは、航空各社による本格的な増便は難しくなる。

 供給制約が生じることで、経済効果期待が高いインバウンド消費が頭打ちになる恐れがあり、高橋氏は「早急に是正する必要がある」と訴える。

 事態打開に向け、観光庁とJATAは今月、世界24カ国・地域の政府観光局などと共に海外旅行のプロモーションを開始。特にJATAは今夏の海外旅行予約者を対象にパスポート取得費用の半額に当たる8千円分の電子ギフトを抽選でプレゼントするキャンペーンも始めた。

 ただ、原資は各国・地域の政府観光局や空港会社の協賛金で、当選者は3210人のみ。JATAは「3~5万人の応募」を想定するが、パスポート増加効果は未知数だ。業界には海外旅行需要喚起への財政措置を期待する声もあるが、国は「消費が海外なのでハードルは高い」(和田浩一観光庁長官)と及び腰なのが現状だ。

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