【連載】ステマ規制を徹底解説!ステマを避ける7つのステップとは?リーガルエックス 関山翔太氏に聞く(その③)

本連載では、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(以下、ステマ)」の運用基準について解説しています。

前回は、「ステマ」を避ける7つのステップについて、「表示主体が『販売促進が必要とされる地位による者』であるか」まで、解説しました。

【前回連載リンク: https://netkeizai.com/articles/detail/8685】

今回は、7つのステップについて、「事業者が第三者に対してある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示しているか」から解説します。

<ステマを割けるフローチャート>

<ステップ⑥:【第三者発信型】事業者がある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示をしているか?>

ステップ⑥「事業者が明示的に依頼・指示をしているか?」とは、事業者が第三者に行わせる表示について、明示的に依頼・指示をしているかを問うものです。

事業者が第三者に対して明示的に依頼・指示をしている場合、すわなち、当該表示が事業者の表示であり、それが外見上、第三者の表示のように見えるにも関わらず、事業者の表示であることが明瞭となっていない場合は、ステマに該当することになります。自社発信型でも、例示されていた自社製品と競合する他社製品を誹謗中傷するような表示については、第三者発信型の場合でも想定されています。

ガイドラインでは、「事業者が他の事業者に依頼して、プラットフォーム上の口コミ投稿を通じて、自らの競合商品又は役務について、自らの商品又は役務と比較した、低い評価を表示させる場合」として示されており、ステマに該当します。

以下は、ガイドラインが示す、ステマに該当する表示の例です。

ア:事業者が第三者に対して当該第三者のSNSの上や口コミサイト上等に自らの商品又は役務に係る表示をさせる場合

イ:ECサイトに出店する事業者が、いわゆるブローカー(レビュー等をSNS等において募集する者)や自らの商品購入者に依頼して、購入した商品について、当該ECサイトのレビューを通じて表示させる場合

ウ:事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際に、アフィリエイターに委託して、自らの商品又は役務について表示させる場合

エ:事業者が他の事業者に依頼して、プラットフォーム上の口コミ投稿を通じて、自らの競合商品又は役務について、自らの商品又は役務と比較した、低い評価を表示させる場合

一方で、「事業者が第三者に対して明示的に依頼・指示をしていなければ、全ての場合で規制の対象外になるか」というと、そういうわけではありません。それが次のステップ⑦です。 

<ステップ⑦:【第三者発信型】客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示であるか?>

ステップ⑦「客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示であるか?」とは、事業者が第三者に対して明示的に依頼・指示をしていなかったとして、当該表示が客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示であるかを問うものです。

当該表示が事業者の表示であり、それが外見上、第三者の表示のように見えるにも関わらず、事業者の表示であることが明瞭となっていない場合でも、事業者が特に明示的な指示・依頼をしておらず、第三者が自らの嗜好などにより、特定の商品又は役務について行う表示は、ステマの対象とはなりません。

すわなち、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合は、事業者による表示とはならないのです。

具体的には、事業者と第三者との間に事業者が第三者の表示内容を決定できる程度の関係性があるか否かによって判断されます。

例えば、以下の判断基準が示されています。

・第三者と事業者との間で表示内容について情報のやり取りが直接または間接的に一切おこなわれていないか

・事業者から第三者に対し、表示内容に関する依頼や指示があるか

・第三者の表示の前後において、事業者が第三者の表示内容に対して対価を既に提供しているか

・過去に対価を提供した関係性がどの程度続いていたのか、あるいは今後提供することが決まっているか、今後提供する関係性がどの程度続くのか

このような事情を踏まえ、「客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示である場合」は、事業者の表示とはなりません。

以下の例はステマ規制の対象とはならない例です。

例えば、事業者が第三者に対して自らの商品または役務を無償で提供し、SNSなどを通じた表示を行うことは依頼するものの、表示の内容について具体的なやり取りがなく、当該第三者が自主的な意思に基づいて表示を行う場合は、ステマ規制の対象とはなりません。いわゆるギフティング施策がステマになるか否かの分かれ目になります。

その他にも、レビューに対する謝礼として次回割引クーポンを配布したり、プレゼントキャンペーンを実施したりした結果、第三者が自由に感想を投稿する場合については、事業者の表示とはならず、ステマ規制の対象とはなりません。

以下はそうした、ステマ規制の対象外として示されている例です。

ア:第三者が事業者の商品または役務について、SNS等に当該第三者の自主的な意思に基づく内容として表示(複数回の表示も含む)を行う場合

イ:事業者が第三者に対して自らの商品または役務を無償で提供し、SNS等を通じた表示を行うことを依頼するものの、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合

ウ:アフィリエイターの表示であっても、事業者と当該アフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが直接または間接的に一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態ある表示を行う場合

エ:ECサイトに出店する事業者の商品を購入する第三者が、自主的な意思に基づく内容として当該ECサイトのレビュー機能を通じて、当該事業者の商品等の表示を行う場合

オ:ECサイトに出店する事業者が自らの商品の購入者に対して、当該ECサイトのレビュー機能による投稿に対する謝礼として、次回割引クーポン等を配布する場合であっても、当該事業者(当該事業者から委託を受けた仲介事業者を含む。)と当該購入者との間で、当該購入者の投稿(表示)内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われておらず、客観的な状況に基づき、当該購入者が自主的な意思により投稿(表示)内容を決定したと認められる投稿(表示)を行う場合。

カ:第三者が、事業者がSNS上で行うキャンペーンや懸賞に応募するために、当該第三者の自主的な意思に基づく内容として当該SNS等に表示を行う場合。

キ:事業者が自社のウェブサイトの一部において、第三者が行う表示を利用する場合であっても、当該第三者の表示を恣意的に抽出すること(例えば、第三者のSNSの投稿から事業者の評判を向上させる意見のみを抽出しているにもかかわらず、そのことが一般消費者に判別困難な方法で表示すること。)なく、また、当該第三者の表示内容に変更を加えること(例えば、第三者のSNSの投稿には事業者の商品等の良い点、悪い点の両方が記載してあるにもかかわらず、その一方のみの意見を取り上げ、もう一方の意見がないかのように表示すること。)なく、そのまま引用する場合。

ク:事業者が不特定の第三者に対して試供品等の配布を行った結果、当該不特定の第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合。

ケ:事業者が特定の第三者(例えば、事業者が供給する商品又は役務について会員制(一定の登録者に対して一定の便益を付与する制度等)を設けている場合における会員)に対して試供品等の配布を行った結果、当該特定の第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合。

コ:事業者が表示内容を決定できる程度の関係性にない第三者に対して表示を行わせることを目的としていない商品又は役務の提供(例えば、単なるプレゼント)をした結果、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合。

一方で、事業者が特に明示的な指示・依頼をしていない場合であっても、客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない場合は、事業者の表示となり、ステマに該当します。

これは、事業者と第三者との間の具体的なやり取りの態様や内容(例えば、メール、口頭、送付状などの内容)、事業者が第三者の表示に対して提供する対価の内容、その主な提供理由(例えば、宣伝する目的であるかどうか)などの実態を踏まえて、総合的に判断します。事業者と第三者の関係性の状況(例えば、過去に事業者が第三者の表示に対して対価を提供していた関係性がある場合に、その関係性がどの程度続いていたのか、今後、第三者の表示に対して対価を提供する関係性がどの程度続くのか)も勘案されると考えられます。

事業者が第三者に対してある内容の表示を行うよう明示的に依頼・指示していない場合であっても、事業者の表示とされる場合としては、例えば、以下のようなケースが考えられます。アの場合について、前出のステマに該当しない場合との違いは、「当該第三者が当該事業者の方針や内容に沿った表示を行っている」という点です。

ア:事業者が第三者に対してSNSを通じた表示を行うことを依頼しつつ、自らの商品又は役務について表示してもらうことを目的に、当該商品又は役務を無償で提供し、その提供を受けた当該第三者が当該事業者の方針や内容に沿った表示を行うなど、客観的な状況に基づき、当該表示内容が当該第三者の自主的な意思によるものとは認められない場合

イ:事業者が第三者に対して自らの商品又は役務について表示することが、当該第三者に経済上の利益をもたらすことを言外から感じさせたり(例えば、事業者が第三者との取引には明示的に言及はしないものの、当該第三者以外との取引の内容に言及することによって、遠回しに当該第三者に自らとの今後の取引の実現可能性を早期させること)、言動から推認させたりする(例えば、事業者が第三者に対してSNSへの投稿を明示的に依頼しないものの、当該第三者が投稿すれば自らとの今後の取引の実現可能性に言及すること)などの結果として、当該第三者が当該事業者の商品又は役務についての表示を行うなど、客観的な状況に基づき、当該表示内容が当該第三者の自主的な意思によるものとは認められない場合

(つづく)