三菱電機は5月26日、米Coherentとパワーエレクトロニクス市場向け8インチSiCウェハを共同で開発していくに関する基本合意書を締結したことを発表した。

SiCパワー半導体は従来のシリコンベースのパワー半導体と比べ耐圧性能や温度特性などが優れているため、それを用いたSiCパワーモジュールを活用することで、従来以上の省エネ化が期待されている。

すでに三菱電機でもSiCパワー半導体市場の拡大への対応として、8インチ対応工場の建設を進め、2026年より稼働させることを2023年3月に発表。今回の共同開発は、この新工場で生産するSiCパワーデバイスに適用する高品質なSiCウェハを実現することを目指すものだという。

8インチSiCウェハの実用化を進めるメーカーは複数あるが、今回、三菱電機がCoherentと組んだ背景には、すでに6インチSiCウェハを長年にわたって三菱電機に供給してきた実績がありパートナーシップを強固にしやすい環境がすでにあること、ならびに同社が長年にわたってSiC材料の開発を続けており、2015年には他社に先駆けて8インチの導電性SiCウェハの実証を行っていたほか、2019年には欧州委員会が設立したHorizon 2020のもとで8インチSiCウェハの供給を開始したことなどが挙げられている。

一方の三菱電機も2010年にSiCパワーモジュールを搭載したエアコンを製品化したほか、2015年には新幹線に搭載するSiCパワーモジュールを供給するなど、家電や産業機器、鉄道車両といったさまざまな分野にSiCパワーモジュールを供給することで、スクリーニング技術などの高性能・高信頼性の作り込み技術を蓄積してきたとしており、今後、2社の協力により、拡大するSiCパワーモジュール市場に向けて、高性能かつ高信頼性な製品の安定供給を目指すとしている。