現代のリーダーに必要な「悪党」力とは? 『悪党たちの大英帝国』

悪党たちの大英帝国……現代のリーダーに必要な「悪党」力とは?

 欧州の辺境の島国だった英国がなぜ世界的な大帝国となったのか。その過程で重要な役割を果たした7人の「悪党」を取り上げた歴史エッセイである。

 16世紀までの英国はブリテン島の小国に過ぎない。それにもかかわらず、自らの離婚問題のために圧倒的な権威だったローマ教皇に反旗を翻したヘンリ8世から始まり、大劣勢だった第二次世界大戦において英国を守り切ったチャーチル首相まで、実に個性的で、アクが強く、同時代においても後世からも、評価も好き嫌いも分かれる7人のリーダーたち。

 マキアベリは名著『君主論』において、善良なる人物がリーダーとして邪悪な結果を招くと述べているが、ここに登場する人物たちは、到底善人とは思えない。しかし、共通しているのは、目的達成のために強靭な意志を持ち手段も選ばないプラグマティストであり、それぞれに何らかの成果を残している点だ。

 小国が世界の帝国になる過程は、まさに危機の歴史であり、内憂外患史である。本書から、英国はそれを乗り越えているうちに、結果として大帝国になっていった印象を持った。私は企業再生の専門家として経営の修羅は何度も経験してきたが、かかる状況でリーダーに必要な資質は、やはり強靭な意志と徹底的プラグマティズムである。

 この手の人物は、敵対する側、違う目的を持っている側、あるいはプラグマティズムの犠牲になる側からすれば「悪党」に他ならない。そして当然ながら「悪党」たちは実に人間臭い、生々しい人々でもある。生々しくない、すなわち人間音痴な人は権力闘争を生き抜けない。途上で失脚するか暗殺されてしまうのがオチだ。

 もし『ヘンリ八世』を書いたシェークスピアが20世紀まで生きていたら、きっと残りの6人も題材にしたに違いない悪党たちと大英帝国の盛衰史は、危機と破壊の時代を生きる現代の経営リーダーにも多くの示唆を与えてくれる。

【著者に聞く】 日本テレビ「news every.」 前統括プロデューサー・大野 伸