賃上げ、リスキリング、能力重視の「ジョブ型」移行…  人への投資で日本再生を!

個人の能力に応じて賃上げ

「今は物価上昇への対応として、賃金引き上げが社会的に求められている」─―。

 こう語るのは、日本経済団体連合会会長の十倉雅和氏。

 コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻の影響で、現在はあらゆる原材料やエネルギーコストが高騰。企業はコスト上昇分を製品価格に転嫁しようと、足元で〝コストプッシュ型〟のインフレが続く。

 失われた30年と言われる中で、日本はコスト上昇分をなかなか製品価格に転嫁できず(値上げできず)、結果的に賃金も上がらないまま、デフレにどっぷり浸かってきた。

 しかし、昨今は物価上昇率を上回る水準の賃上げを求める岸田文雄政権の呼びかけもあって、産業界では価格転嫁や従業員の賃上げが徐々に浸透。

 現在は2023年春闘(春季労使交渉)の真っ只中だが、トヨタ自動車とホンダは、賃上げと一時金の労働組合の要求に満額回答。組合員1人平均の要求額が過去20年で最高水準だったトヨタは、職位や職種などに応じて月3570~9370円の賃上げに満額回答。ホンダも過去30年で最高となる、ベースアップ(ベア)を含めて月1万2500円の要求に応じた。

 ファーストリテイリングは3月から、従業員一人あたり、年収で数%~約40%の賃上げに踏み切った。キヤノンは1月から毎月の基本給を一律7千円引き上げ、管理職を除く組合員ベースで一人あたり3.8%の昇給。この他、サントリーホールディングスは月収ベースで6%の賃上げを検討、日本生命保険も7%の賃上げを検討している。

 今回の特徴は、その人の仕事や能力の評価に応じて賃上げする企業が多いこと。個人を評価する、もっといえば、個人の差がつく厳しい賃金体系になったということである。

 問題は大企業を中心に広がりつつある賃上げの波が、日本の99%を占める中小企業へ波及するか否か。製品値上げから賃上げ、そして、真のデフレ脱却という好循環を生み出すことができるか。日本のデフレ脱却はこれからが正念場だ。

『ユニクロ』のファーストリテイリングが最大4割の賃上げ実施へ

「人を育てる、人は自ら育つ」の両方が必要

 混乱・混迷の時代にあって、先行き不透明な世の中を生き抜くには、人を育てるということと、人は自ら育つという両方が必要─―。

「人への投資」を最重要課題の一つに掲げる岸田政権。

 その中の一つが、リスキリング(学び直し)。DX(デジタルトランスフォーメーション)などの専門的な知識や英会話などの語学などを学ぶことで、個人の能力を底上げし、組織全体を高めようという試みだ。

 また、生産性向上という観点で経団連や岸田首相が推進しているのが、職務内容に合わせて給与を設定し、人材を採用する「ジョブ型」雇用への移行。

 日本では長く終身雇用・年功序列を基本とする「メンバーシップ型」雇用が中心だった。しかし、新卒一括採用で万能型の人材を育成するメンバーシップ型では専門的なスキルを持った人材が育ちにくい。

 このため、近年は日本でもジョブ型を導入する企業が増加。三菱ケミカルホールディングスや日立製作所、KDDI、富士通、NECといった企業がすでにジョブ型を導入、もしくは全面導入しようとしている。

 AGC会長の島村琢哉氏は「人を育てていく」という日本的風土を維持しながらも、「ポジションによって待遇、報酬を変える『日本型ジョブ型制度』も一つの道」と話している。

 リクルートの研究機関・就職みらい研究所所長の栗田貴祥氏は「ジョブ型など、採用手法を多様な形で行っていくことで、少しでも優秀な人材を獲得しようという企業が増えつつある」と指摘。ただ、「どちらがいいという話ではなく、会社自体が多様な選択肢を用意し、多様な価値観を持つ個人が働きやすいルールづくりが必要だ」と語る。

 コロナ禍で人々の生き方や働き方がガラリと変わった。企業各社に共通しているのは、賃金体系にしろ、働き方にしろ、旧来の日本型雇用システムでは時代の変化に対応できないという危機感だ。

 今は人への投資で差がつく時代と言っていい。

なぜ、日立は国内でも『ジョブ型』雇用を導入するのか?