【ECソリューションマップ2023「モール&プラットフォーム編」】
コロナ禍に加えて、円安が進行したことで、越境ECへの注目度が高まっている。グローバルなマーケットプレイス「eBay」における国内事業者の越境EC取扱高は拡大傾向にあるという。イーベイ・ジャパンが出品者(セラー)の支援体制を強化したことで、セラーの登録数も右肩上がりだ。「eBay」を通した越境ECの状況や販売支援の取り組みについて、イーベイ・ジャパンの岡田雅之社長に聞いた。
――円安の影響はあるか?
出品から1~2年以内の新規セラーの売上高が、前年比約40%増と大きく伸びている。2022年4月以降、セラーの新規登録数も20%近く伸びている。新しく入る方も増え、入った方の売り上げも伸びている。
昨年、円安が加速した1弾目は4月ごろだったが、本当に加速したのは7月以降だった。新しいセラーに取り組んでいただこうと、さまざまなキャンペーンを展開したり、情報発信を強化したりしてきた。「円安」をキーワードにしたプロモーションが一巡した後は、「外貨を稼ごう」というキーワードを活用するなど、工夫している。
海外輸出ビジネスへの注目度も高く、2022年だけでテレビの取材は10回以上入っている。
――日本のセラーの販売商品では、どのようなカテゴリーがよく売れているのか?
ポケモンカードやカメラなど以前から海外で人気の高いコレクター向けアイテムは、売れ続けている。その一方で国際情勢の変化や円安の進行により、売れる商品の潮目も少し変わった。
国際情勢が不安定になると、腕時計が売れやすくなる。実際に腕時計のブランド品などがよく動いている。円安や「eBay」が提供している真贋保証サービスも腕時計の取引拡大に拍車を掛けた。
国際情勢の変化は、サプライチェーンを不安定にする。その影響で自動車パーツなども動いている。修理部品だけではなく、高額なスポーツカー用のパーツなども売れている。
シンセサイザーやアンプ、レコードプレーヤーなど重くて高額な商品も売れやすくなった。2021年に独自ペイメントに移行し、100万円以上の高単価商品が販売できるようになった影響もある。重い商品でも国際輸送サービスにより、スピーディーに海外へ配送できることも浸透してきたと思う。クリスマス商戦の時期などは多少遅れるが、通常は米国なら発送から2日以内に届く。
――出品の支援体制はどのように強化しているのか?
イーベイ・ジャパン公認コンサルタントが増えており、セラーの出品を支援できる体制が整ってきている。大手企業も公認コンサルタントを活用し、アカウントのセットアップから出品まで行った事例がある。
2022年12月には、「eBayアカデミー for Japan」を開講した。これまで書籍やブログなど、「eBay」のノウハウは、さまざまな媒体に分散していた。ノウハウを教材としてまとめて手軽に学ぶことができる機会を提供している。
他にも出品しやすくするために、購入者向けの「eBay」アプリから出品できることを広く知ってもらう取り組みを強化している。トレーディングカード(トレカ)の画像認識機能が搭載されており、トレカをスキャンすると画像を取り込めるのはもちろん、英語の商品タイトルや商品詳細を自動的に作成できる。
――出品者の獲得のために注力したことは?
出品者向けのコンテンツ拡充を進めている。Youtubeで動画を配信したり、ツイッターでマーケットの情報を投稿したりもしている。
2022年には、TikTokの活用も開始した。スニーカーに詳しいインフルエンサーを起用した動画を作成するなどして、配信したところ大きな反響を得ることができた。フリマに慣れているミレニアル世代やZ世代が、「eBay」に反応してくれたようだ。
――今後、さらに出品を促進するために取り組むことは?
梱包や発送などフルフィルメントへの支援ももっと強化したいと考えている。マーケティングツールもかなり強化している。
「eBay」以外のチャンネルに露出する広告プログラムのトライアルも実施しているが、驚くべきROI(投資利益率)が出ている。今年、さらにトライアルに参加できるセラーを追加し、効果検証を進める。