「オンラインモールに関する相談は匿名でも可、気軽に利用を」 「デジタルプラットフォーム取引相談窓口(DPCD、オンライン事業者向け)」の初年度運用結果から

「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(透明化法)」の実効的な運用を図るための手段の一つして令和3年4月1日、「デジタルプラットフォーム取引相談窓口(DPCD)」が設置された。公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)は経済産業省からの委託事業として、オンラインモール利用事業者からの相談窓口を担っている。初年度(令和3年4月1日~令和4年3月31日)における相談件数や相談概要の結果をもとに、その特徴をJADMAの万場徹専務理事に聞いた。

<最多の情報提供件数は「検索順位・ランキング等に関する事項」>

DPCD(オンラインモール利用事業者向け、以下同)に寄せられた、初年度の情報提供件数は1294件だった。このうち、利用者から窓口に電話やwebフォーム等を利用して寄せられた相談・情報提供が282件、利用窓口が行ったヒアリング等により収集した情報が1012件だった。

最も多かったのは「検索順位・ランキング等に関する事項」で131件、次が「取引条件の変更に関する事項」で130件、それに続くのが「取引の全部拒絶(アカウント削除等)に関する事項」で125件となっている。

 「『検索順位・ランキング等に関する事項』でよくある相談は、オンラインモールで消費者が商品を検索した結果表示される商品の表示順位等に関するものだ。上位表示だったものが、ある日突然下位に下がったとか、オンラインモール運営事業者の販売商品がずらりと並んでいるという感が否めず不公平に感じるといった相談が寄せられている。検索順位・ランキングについては、オンラインモール運営事業者が、透明化法に基づき、主要な要素を開示しているが、詳細なアルゴリズムまでは開示されていない。具体的にどのようなことが影響して検索ランキングが決定されているのかは、経済産業省のデジタルプラットフォームの透明性・公正性に関するモニタリング会合(以下「モニタリング会合」)でも今後の課題と指摘する意見が出ている」(万場専務理事)。

「透明化法では、取引条件を変更する際には、当該変更によって利用事業者に作業や調整が必要となる場合、当該作業・調整に要する合理的な期間(作業等が生じない場合は15日)より前に利用事業者に通知しなければならないと規定されている。セキュリティ確保のために緊急の対応を要する場合などの一定の例外事由が定められているが、仮に何らの理由もなく突然変更があったとすれば、透明化法違反ということになり得る。一方、出店者側の誤解や誤認の可能性も考えられる」。(同)

<返品要件はオンラインモールごとに異なることも>

「一般利用者からの返品等に関する事項」も87件と多くの情報提供が寄せられた。この類型でよくある相談としては、出店者が設定している返品交換の条件とは別に、オンラインモール運営事業者が購入者からの返品ルールや返品受入れを決定している、というものがある。

「出店者はそれぞれ返品規定を定めていると思うが、それと異なるルールや判断でオンラインモール運営事業者が返品を受けていることについての相談がある。オンラインモールによって返品ルールは異なっていることもある。同じオンラインモールでも、利用するサービスによって条件が異なることもある。これについては双方のいい分があるだろうが、出店者とオンラインモール運営事業者が契約を交わす際の規約がある。出店者もビジネスで取引する以上、その規約を読んで、しっかり理解することが重要である。窓口では相談者が規約をより理解できるようご説明・アドバイスすることもある」。(同)

実際利用事業者から、アカウント停止関係において、「規約をよく理解しておらず違反が累積してアカウント停止となってしまった」との相談も寄せられている。

DPCDに寄せられた相談内容は、相談者の利益を害さないよう細心の注意を払いながら取り扱っている。

「相談はしたいがオンラインモール運営事業者に相談内容を伝えないでほしいという相談者もいらっしゃる。窓口では、相談者の承諾を得ない限り、相談内容や相談者に係る情報をオンラインモール運営事業者に伝えることはない。相談内容に応じて、オンラインモール運営事業者への照会を行うこともあるが、相談の解決や事実関係の把握のために特に必要な場合に限って行っており、また、照会に当たっては相談者の了解を事前に得た上で行うなど、相談者の方々に配慮した運用としており、情報管理も徹底している」(同)。

令和4年4月からDPCDは2年目に入っている。今後の課題や抱負を万場氏に聞いたところ「匿名の相談が多いので、声なき声を拾うという意味で実態をつかむためのヒアリングは引き続き実施していきたいと考えている。相談者に本音を伺うのは重要だし、対面が難しい利用事業者については、オンラインミーティングやお電話でもお話を伺っている。そして、そのヒアリング内容は、モニタリング・レビューという透明化法に基づく運営サイクルに反映され、デジタルプラットフォームの自主的な改善を促すことに繋がる。相談内容については、相談者の利益を害さぬよう細心の注意を払いながら取り扱っている。是非安心して気軽に相談してほしい」(同)。