【金融庁】新興・中小の成長後押しへ 融資慣行にメス

岸田文雄政権の「新しい資本主義」の柱である新興・中小企業の成長を後押しする施策を、金融庁が相次いで打ち出している。金融庁は11月1日公表の監督指針改正案で、2023年4月から中小企業向けなどの融資で経営者個人による保証を実質的に制限する方針を打ち出した。経営者保証は経営規律の保持や返済の確実性を高める信用補完の観点で長らく中小企業向け融資の慣行となってきた。

 だが、企業が倒産し、会社の資金で融資が完済できない場合には経営者の私有財産も押さえられ、個人破産に追い込まれる例もある。破産すると、再度起業しようとしても新規融資が受けにくくなるため、「日本のベンチャー業界が活性化しない一因」(監督局筋)とされる。

 さらに、金融庁は法務省と連携し、中小・新興企業に成長資金を注ぐための新法づくりも準備。知的財産権など無形資産も含めた企業の事業価値全体を対象とする「事業成長担保権」を創設し、不動産保有が少ない企業にもマネーが円滑に供給される新たな流れを作るのが目的。

 メガバンクなどの融資では「プロジェクトファイナンス」が活用されているが、担保はそのプロジェクトの資産に限られる。無形資産や将来のキャッシュフローまで全てを対象とする「事業成長担保権」のような仕組みは日本では初となる。

 最大の課題は金融機関がどこまで対応できるか。監督局幹部は「企業の事業成長に深くコミットし、リスクやコストが大きくなる分、不動産など有形資産を担保に取る場合よりも、融資の金利を高く設定できる利点がある」とするが、無形資産を含めた事業価値を評価するには「目利き力」が必要で、銀行側の人材育成の取り組みがカギ。

 一方、企業側には「経営不振に陥った場合、担保権を行使されて事業売却や他社への身売りを強要されるのではないか」と懸念する声もある。新たな成長マネーの流れを生み出すには、金融庁の金融界に対する指導力も問われそうだ。

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